国内心不全治療薬市場 30年に1000億円台に 23年比2.5倍に SGLT2阻害薬など軸に 富士経済調べ
公開日時 2025/01/23 04:52
国内心不全治療薬の市場規模が2030年に1000億円台にのる――。このような市場予測を富士経済がまとめた。23年の市場規模は403億円で、30年には23年比で2.5倍になると分析した。心不全患者の増加や、比較的軽度なHFpEF患者やHFmrEF患者への投薬が大幅に増加していること、また重度のHFrEF患者向けに処方可能な薬剤が増えていることなどを市場拡大の理由に挙げた。
調査対象薬剤はSGLT2阻害薬のフォシーガとジャディアンス、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)・エンレスト、sGC刺激薬・ベリキューボ、HCNチャネル遮断薬・コララン――の5剤。このほかジェネリックや後期開発品も分析に加えた。
◎25年に725億円、30年に1020億円
富士経済によると、国内心不全治療薬の市場規模は22年が229億円、23年が403億円――。24年以降は24年に579億円、25年に725億円、予測最終年の30年に1020億円になる見込みと分析した。
近年、重症度の高い左室駆出率(LVEF)の低下したHFrEF患者に対し、標準治療薬として4剤(▽β遮断薬、▽MRA、▽ACE阻害薬 or ARBもしくはARNIへ切替、▽SGLT2阻害薬)の早期投与が推奨されるようになった。比較的軽度なLVEFの保持された患者(HFpEF、HFmrEF)への治療は、利尿薬による症状の負荷軽減と入院の予防を目的としたものが中心となっていたが、22年4月にジャディアンス、23年1月にフォシーガがそれぞれLVEFを問わない全ての心不全患者に投与可能になった。
富士経済は、SGLT2阻害薬が心不全患者のうち過半数以上を占めると考えられているHFpEF、HFmrEF患者への投与が可能となったことで、「SGLT2阻害薬を使用した治療患者数は2~3倍程度まで増加したと考えられる」と指摘。さらに、「LVEFに関わらず投与可能な薬剤が増加することが見込まれるため、HFpEF、HFmrEF患者を中心に投薬率が大幅に増加する」と分析している。
この調査は、富士経済専門調査員による参入企業や関連企業・団体などへのヒアリング、及び関連文献調査、社内データベースを併用して行った。調査期間は24年9~10月。