明治ホールディングス（ＨＤ）は４月８日、傘下のMeiji Seika ファルマの代表取締役社長にKMバイオロジクスの永里敏秋・代表取締役社長が就任するトップ人事を発表した。Meiji Seika ファルマの代表取締役社長を2014年６月から約11年にわたり務めた小林大吉郎氏は代表取締役会長となる。就任予定日は６月26日付。KMバイオの経営体制は決まり次第公表する。永里氏はこの日の会見で、日本国民のワクチンリテラシーの向上やアジア地域での小児用ワクチンのアクセス向上に取り組む意向を示したほか、長期的な持続成長に向けて創薬シーズや新規モダリティを「いち早くグローバルに探索していく」ことが重要だと強調した。

◎永里氏　「また新興感染症は必ずくる」　国民のワクチンリテラシーの向上に意欲

KMバイオロジクスは、2018年７月にワクチンや血漿分画製剤などを手掛ける化学及血清療法研究所（化血研）の主要事業を承継し、明治グループの一員となった。永里氏はKMバイオの初代代表取締役社長で、社長を約７年間務めた。

永里氏は会見で、明治グループの医薬品セグメント（Meiji Seika及びKMバイオ）として解決していくべき社会課題として、国民のワクチンリテラシーの向上を挙げた。新型コロナワクチンの24年度の接種率が「非常に悪かった」とした上で、「日本人においてはひとたび感染症の流行が去ると、コロナだけでなくインフルエンザのワクチンも、接種率がどんどん下がる」と述べ、国とともにワクチンの有効性や安全性の啓蒙活動に注力する意向を示した。「また新興感染症は必ずくる。その時に今のままだと非常に危ういと考えている」とも危機感を示した。

このほかの課題としてアジア地域の小児用ワクチンのアクセス状況を挙げ、「小児用ワクチンをしっかり（アジアの）市場に展開していくことも重要。KMバイオとMeiji Seikaが一体となって進めていく必要がある」と話した。

◎シーズや新規モダリティをグローバルに探索　「一番、将来成長する上で重要」

ワクチン以外の医療用医薬品事業については「パイプラインはそれなりに充実している」との認識で、「着実に臨床試験を行い、上市することがまず一番大事」と強調した。長期的な持続成長に向けて、「リサーチ段階のシーズの探索が重要」だと指摘。新型コロナワクチンとして実用化したモダリティであるmRNAを例示しながら、「劇的に医薬品業界のテクノロジーは変わっていく。（シーズや新規モダリティを）いち早くグローバルに探索していくことが一番、将来成長する上で重要だと考えている」と述べた。

小林氏は今後、代表取締役会長として、これまでも取り組んできたMeiji SeikaとKMバイオの研究開発機能などの一体運営に引き続き尽力する。

◎明治ＨＤ次期社長の松田氏　食品、医薬品とも「より高いクオリティの商品を安定的に届ける」

明治ＨＤはこの日、ＨＤや、傘下で食品事業を展開する明治と医療用医薬品事業を展開するMeiji Seika ファルマの３社のトップ人事を発表した。独立社外取締役指名委員会の松村眞理子委員長は会見で、「明治は今、変革期を迎えており、これから新たな経営ステージに挑む上で、多様な視点を統合してグループのパフォーマンスを最大化していくことが重要になる。このような展望を念頭に、このタイミングで３社の社長交代が最善だと確信し、指名委員会の議論内容を取締役会に答申し、このたび承認された」と述べた。

６月27日付で明治ＨＤの代表取締役社長CEOに就任予定の松田克也・取締役執行役員COO（食品セグメント）は、「食品のみならず、医薬品も含めたより高いクオリティの商品を安定的にお届けすることを約束する」と表明。「明治グループにしかできないより価値のある商品やサービスを作り続け、お客様の日々の生活の充実に貢献していく」と意気込みを語った。また、「食品と医薬品の部分最適を行っているグループ経営についても、より俯瞰的に一体で見ていきたい。明治やMeiji Seikaの社長とこれまで以上に連携していく」とも話した。

松田氏は、明治グループの100年以上の歴史の中で社員が“大企業病”に陥っていないかと警鐘を鳴らした。そして、「明治グループがこれから大きく飛躍していくためには将来に向かってチャンレンジしていかないといけない」と強調し、失敗を恐れずにチャレンジしていく社員を育て、そのような企業文化に変革していくことにも意欲をみせた。