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薬機法改正法案 責任役員の変更命令「不正発見時に適切な対応」で適用せず 公平性・公正性保ち運用

公開日時 2025/04/07 06:00
薬機法等改正法案で焦点となっていた責任役員の変更命令について、厚生労働省の城克文医薬局長は4月4日の衆院厚生労働委員会で、「会社のガバナンスの状況を踏まえて、慎重な検討の上で適用すべきものと考えている」と答弁した。許可等業者による法令違反に役員が直接関与した場合など、責任役員を変更しなければ、業務改善が見込まれないケースでの適用を想定する。一方で、「責任役員が不正を発見した際に、隠すことなく適切な対応を行なっている場合」などでは適用しない考えを示した。この日の衆院厚労委では、与党議員が質疑に立ち、政府側が法案の趣旨を説明した。

2019年の前回改正では、製造販売業者のガバナンス強化が盛り込まれたが、改正後も「製造販売業者による製造業者に対する管理、監督が不十分であったと考えられる事例が、複数発生した」(城局長)ことから、今回の法改正ではガバナンス強化が柱の一つになっている。

◎業務改善命令や行政指導で改善見込まれる場合も責任役員の変更命令適用せず

責任役員の変更命令は、許可等業者による法令違反に役員が直接関与した場合など、その責任役員を変更しなければ、「保健衛生上の危害の発生や拡大を防止するために必要な業務の改善が見込まれないと認められる場合に限って行われる」とされている。

一方で、「責任役員が不正を発見した場合に隠すことなく適切な対応を行なっている場合」や、「許可等業者において法令を遵守した業務が行われるよう、業務改善命令等の処分や行政指導による対応を行うことにで、当該役員の変更を命じなくても、業務改善が見込まれる場合」については、責任役員の変更命令が適用されないと説明した。

◎事実関係調査後に意見陳述の機会も 役員変更命令の適用の考え方も公表へ

実際に役員変更の命令に至るまでに、「立ち入り検査、報告命令等を含む事実関係の調査を行った後に、行政手続き法に則って意見陳述のための機会を付与したようで、行政処分を実施する」ことを想定しているとも説明した。また、施行に際しては、「役員変更命令の適用の考え方を公表することに加え、過去の事例も踏まえながら実施の要否を判断する」など、「公平性、公正性を十分に担保しつつ運用していく」姿勢も示した。

ガバナンス強化に向けて今回の改正では、責任役員の変更命令だけでなく、医薬品の製造販売業者における品質保証責任者(品責)の設置根拠や設置義務の根拠を省令から法令に引き上げる。それとともに、必要に応じて総括製造販売責任者(総責)に対して文書で意見を述べなければならないこと、総責はその意見を尊重しなければならないこと等を規定し、品責の役割と責任を法律上明確化する考えだ。品責についても変更命令の対象とすることも盛り込んだ。また、医薬品の製造販売業者の製造所等に対する製造管理、および品質管理の実施状況の監督、監査の法定化等を行う。

◎試行導入の中等度変更迅速審査 相談申し込みは「12件」 製造所の追加や確認試験の一部削除など

承認書と実際の製造実態との間に齟齬が生まれる背景に、現行制度では一部変更承認申請による審査期間の長さも指摘されている。このため、今回の法改正では、製造方法等の変更が生じた場合で、変更に伴う品質への影響が中程度の場合には、申請から一定の短い日数以内で迅速に承認をする仕組みが導入される。

昨年9月から、既承認の医療用医薬品の一部変更申請等のうち、中等度のリスク変更を迅速に審査する「中等度変更迅速審査」を試行的に導入されている。城局長は、「この仕組みの対象となるかどうかということについて、PMDAへの医薬品手続き相談の申し込み件数は、本年3月末の時点で12件いただいている」と報告した。中リスクの変更申請の対象となる事項としては、「製造所の追加や確認試験の一部削除、海外薬局法の改正に伴う変更、実測値に基づく有効期間の延長などが該当し得るものと考えている」と説明。「今後、試行的取り組みの結果や関係業界等からの意見をいただきつつ、そのさらなる活用を推進してまいりたい」と述べた。

◎重要供給確保医薬品 協力要請の対応を法制化で「さらに実効性ある取組みに」

医薬品の安定供給に向け、特定医薬品の一部を供給確保医薬品として医療法上に位置付け、その中でも特に安定的な供給確保を図ることが特に重要なものを「重要供給確保医薬品」と明確化。供給不足が国民の生命、健康に重大な影響を与える恐れがある場合には増産、原薬の調達先の確保等の安定供給確保などの協力要請を行うことが可能になる。指示に従わない場合は、企業名の公表なども行われる。

厚生労働省の内山博之大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官は、「協力要請等の規定は、現在の厚生労働省が供給不安の事案を確認した際に行っている一連の対応を、法律の根拠をもって行うことができるようにするもの」と説明。「企業に対する増産の働きかけを、法律の根拠をもって行うことにより、さらに実効性のある取り組みにできるものと考えている」と述べた。医薬品の安定供給に向けてはこのほか、ジェネリック業界での少量多品目生産の解消に向けた「後発医薬品製造基盤整備基金」の造成や供給体制管理責任者の設置などの施策を行っているとした。

◎後発医薬品製造基盤整備基金 モデル事業の実施状況踏まえ予算要求へ 連携・協力・再編を後押し

後発医薬品製造基盤整備基金は、少量多品目生産構造の解消に向け、企業間の連携・協力・再編を後押しするために、5年間の期限をもって設置される。内山審議官は、「すでに後発医薬品業界においては、各社が独自に、例えば複数企業でコンソーシアムを形成して生産拠点の整備等を実施するモデル、ファンド傘下にある企業間が連携し品目を集約するモデル、自社の生産能力を生かし他社から依頼のあった自社品を増産するモデル等、品目統合や事業再編に向けた取り組み方針が公表されている」と説明した。

24年度補正予算で確保したモデル事業を通じ、「まずはこうした後発医薬品業界の品目統合、事業再編の動きを後押ししてまいりたい」と表明。「本法案が成立した場合には、モデル事業の実施状況等も勘案しつつ、今後の予算編成過程で必要な基金のための予算を要求する方針」も示した。内山審議官は、「基金の活用により、さらにこうした業界の動きを後押しし、後発医薬品産業全体の生産性の向上、そして安定供給の確保を図ってまいりたい」と述べた。

◎条件付き承認 「患者数の大小によらず」医療上の必要性が高い場合に適用へと拡大

19年の法改正で盛り込まれた条件付き承認制度も見直す。城局長は、「承認後の取消規定がないこと、また要件としては、対象患者が少なく、臨床試験が実施困難である場合に限られていたことから、これまで実績がないという状況」と説明した。

今回の法改正で、「対象疾患における患者数の大小にはよらず、重篤かつ適切な治療法がないなど医療上の必要性が高い場合にも適用できる仕組みに拡大したいと考えている。安全性が確認されて、臨床的有用性が合理的に予測可能であれば、承認を与えることができるという、米国等と同様の仕組みに見直す」とした。

具体的には、条件付き承認時に医薬品等を早期に使用するベネフィットが、有効性の確認されていないリスクを上回るかどうかについて、「個別の承認審査の段階で提出されるデータ等から判断をすることになる」と説明。「その後、条件として求めた臨床試験等に基づいて有効性を確認し、引き続きその使用を認めてよいかどうか判断する」と述べた。城局長は、「ドラッグ・ラグ/ロスの課題に対応し、国民に最新の医薬品を迅速に届けられるよう、条件付き承認制度を含む薬事制度を適切に運用して参りたい」と強調した。

古賀篤氏(自民)と塩崎彰久氏(自民)への答弁。
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