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福岡厚労相 中間年改定なければ最低薬価や不採算品再算定など「随時行えない」バランスの重要性を強調

公開日時 2025/04/10 06:30
福岡資麿厚労相は4月9日の衆院厚労委員会で、「今後の診療報酬改定がない年の薬価改定は、創薬イノベーションの推進や医薬品の安定供給の確保、国民の負担軽減といった要請にバランスよく対応する中で、あり方について検討していく必要がある」との見解を示した。2025年度薬価改定では、最低薬価の引上げや不採算品再算定の臨時・特例的な適用がなされた。福岡厚労相は、「仮に診療報酬改定がない年の改定を実施しない場合は、こうした対応も随時行えなくなる」と指摘した。この日は政府提案の薬機法等改正法案と野党が議員立法として提案した中間年改定廃止法案をめぐり、野党各党の議員が質疑に立った。両法案の採決は9日にも行われると見込まれたが、維新の会が中間年改定廃止法案への賛否を保留したため、採決は見送られた。

この日の質疑では、立憲民主党と国民民主党が共同提出した「健康保険法及び高齢者の医療の確保に関する法律の一部を改正する法律案健康保険法及び高齢者の医療の確保に関する法律の一部を改正する法律案(医薬品不足を解消するための中間年改定廃止法案)」をめぐる質疑があった。法案では、厚生労働大臣の裁量に委ねられている診療報酬改定の改定時期を法律に位置付け、診療報酬の基準は2年ごとに必要な改定を行うことを原則とすることを法律上明確化するとしている。

福岡厚労相は薬価改定のあり方について、「医療費が増加している中で、国民皆保険の持続性を考慮し、市場実勢価格を適時適切に反映して、国民負担を抑制することが重要である一方で、革新的な新薬の開発力を強化していく要請や、暮らしに欠かせない薬の安定供給確保の要請など、この双方に応えていく必要があると考えている」と指摘した。

福岡厚労相はまた、“バランス”の重要性を強調。25年度薬価改定では、新薬創出等加算の対象範囲を平均乖離率の1.0倍超と「配慮した」ほか、不採算品再算定の臨時・特例的な適用、最低薬価の引上げを行ったと説明。「厳しい財政状況の中で、保険制度を持続させ、薬の現場に支障が生じさせないために、様々な工夫をさせていただきながら持続可能性を担保していきたい」と理解を求めた。

イノベーション推進の観点では、「これまでも革新的な新薬については、画期性や有効性を適切に評価するとともに、新薬創出等加算により、特許期間中の薬価を維持するといった取り組みを行ってきた」と説明。25年度薬価改定では、小児適応の効能追加などの改定時加算の臨時的な実施などを行ったことも説明。「バランスよく対応する観点をしっかり踏まえて対応を進めてまいりたい」と答弁した。

医療費全体のなかでバランスを考える必要性にも言及した。福岡厚労相は、「医療提供体制を考えていく中で医療従事者等の方々が足りない、病院経営も赤字だという中で、そういった部分も考えないといけない。ただ、薬価の部分もしっかり配慮していかなければならない。そういったトータルのバランスの中で、ギリギリのバランスを考えながら、制度を進めさせていただいている」とも述べた。

◎再生医療等製品の評価 費用対効果含めて26年度診療報酬改定で議論へ

このほか、再生医療等製品を含む新規モダリティについては、「費用対効果評価制度のあり方も含め、26年度診療報酬改定に向け、これまでの算定事例を集積するとともに、国内の新薬の開発状況なども踏まえ、中医協においてしっかり検討してまいりたい」と意欲をみせた。

◎内資系企業の創薬力強化へ「研究開発から薬事承認のプロセスや薬価の評価まで、各段階で総合的に見直してきた」

田辺三菱製薬の売却を引き合いに内資系企業の創薬力強化を問われた福岡厚労相は、「内資系製薬企業の製薬事業からの撤退や事業売却が続くと、我が国の製薬産業の空洞化を招き、中長期的には医薬品の安定供給や、経済安全保障に支障を来す恐れがある」との認識を示した。そのうえで、「こういったことを防ぐためにも、内資系企業が日本で持続的に創薬や製造に取り組めるよう、産業としての魅力と持続可能性を確保することが肝要。このため、研究開発から薬事承認のプロセスや薬価の評価まで、各段階で総合的な見直しを行っていく必要があり、様々な施策を講じてきた」と述べた。

また、「より活発に創薬が行われる環境整備のため、創薬エコシステムの構築を官民挙げて進めている」として、薬機法等改正法案に革新的医薬品等実用化支援基金の設置を盛り込んだことにも言及した。福岡厚労相は、「我が国の医薬品産業は基幹産業、そして成長産業であり、これらの施策を通じまして、世界有数の創薬の地となることを目指していきたい」と意気込んだ。

◎中間年改定廃止法案「医薬品等の安定供給、活発な創薬が行われる環境整備の実現に資する」

中間年改定廃止法案を提出した立憲民主党の岡本充功氏は、薬機法等改正法案と同時審議を求めた理由について、「議員立法では、薬価を含めた診療報酬の基準は、2年ごとの改定が原則であることを法律に位置づけることとしている。これにより、製薬企業の経営の予見可能性が担保され、医薬品等の安定供給、活発な創薬が行われる環境整備の実現に資するものとなる。これは薬機法等改正案と目的が重なるもので、今回同時に審議入りを求めた」と法案提出の趣旨を説明した。

法案では、薬価を含めた診療報酬改定について2年を基準とすることが原則とするとしているが、立憲民主党の井坂信彦氏は、「法案が施行された後でも緊急的な対応を必要とするケースでの例外的な中間年改定はあり得る。その場合には政府は例外的に改定を行うべき必要性について、説明責任を果たさなければならない」と説明。「本法案により中間年改定があくまで例外であるということを法律上担保することで、薬価の引き下げが毎年安易に行われないよう、歯止めをかける意義があると考えている」と法案の意義を強調した。

過去にオイルショックによる急激な物価上昇に対応する目的で、1年間に2度診療報酬の引上げがなされたことがある。井坂氏は、「大幅な物価上昇、あるいはパンデミック、こうした場合には薬価を変更する必要が生じ、そのような場合はまさに例外に該当し得る。その場合は随時の改定により適切に対応するべきと考えている」と説明した。

◎福岡厚労相 2年に1度の診療報酬改定「医療技術の進捗には対応できる間隔」

福岡厚労相は、「診療報酬改定については、新たな医療技術への対応の必要性も踏まえた対応が必要で、法律で定められたものではないが、原則として2年に一度の改定を行っているものだ。引き続き、医療技術の進捗には対応できる間隔で改定を行っていく、このことが必要だと考えている」と述べた。

◎後発医薬品製造基盤整備基金 26年度中に適切なKPIを設定、検討へ

このほか、後発医薬品製造基盤整備基金について福岡厚労相は、「業界再編の取り組みを加速させるために、具体的なKPIを設定し、進捗を適宜適切に管理することが重要」との考えを表明。「後発品の業界再編に向けて、モデル事業の成果も踏まえ、5年間の集中改革期間の1年目、つまり26年度中に適切なKPIを検討、設定することを検討してまいりたい」と述べた。具体的には、「後発医薬品製造基盤整備基金は、現在の少量多品目生産を解消することで、産業全体としての生産性の向上を図る趣旨のもの。そのため、企業間の連携、協力によって品目数が適正化されていくことが重要だと考えている。こうした観点からKPIの設定を検討してまいりたい」と述べた。

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