ミクス編集部が行った医師調査2025年版で、「優れているMR」が所属する企業ランキングの診療科別の得票数1位企業は一般内科、循環器科、整形外科の3診療科はいずれも第一三共、消化器科は武田薬品、呼吸器科はアストラゼネカ(AZ)、精神神経科は大塚製薬、泌尿器科はアステラス製薬、皮膚科はマルホ、腫瘍内科は中外製薬――となった。このうち大塚製薬は精神神経科医の51%から支持を獲得。過半数には届かなかったが、AZは呼吸器科医の47%、アステラスは泌尿器科医の47%、マルホは皮膚科医の46%という高い支持を得た。強みを持つ診療科で専門性と存在感を発揮し、リアル回帰によるFace to Faceのコミュニケーション効果もあって医師の記憶に残るMRも多く、全体的に得票数が伸びる傾向がみられた。
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調査は、ミクス編集部がエムスリーの協力を得て行った「医師が求めるMR調査2025年版」。調査対象はm3.com登録医師で、一般内科、循環器科、消化器科、呼吸器科、精神神経科(心療内科含む)、整形外科、皮膚科、泌尿器科、腫瘍内科――の9診療科の医師。回答医師数は腫瘍内科を除く8診療科が各100人(開業医/勤務医各50人)、腫瘍内科は勤務医50人で、計850人の医師から回答を得た。調査期間は24年12月10日~20日。方法はインターネット調査。
今回、それぞれの診療科内で前年調査から10票以上の大幅増を記録した企業は、呼吸器科1位のAZが13票増、呼吸器科2位のグラクソ・スミスクライン(GSK)が15票増、整形外科1位の第一三共の15票増、精神神経科1位の大塚製薬が14票増――の4社あった。
◎一般内科 第一三共が首位 第一想起した医師多く
診療科別にみると、一般内科では第一三共(得票数17票)が4票伸ばし、前年2位から今回首位にたった。第一想起(最大3社挙げてもらった時の1番目の社名)が6票増の12票となり、存在感が際立つ結果となった。リクシアナの情報活動やフットワークの良さなどで評価を伸ばした。前年1位の武田薬品(15票)は1票増としたが、第一三共の勢いにより2位に後退した。前年8位のファイザー(12票)が6票伸ばして今回4位となり、新型コロナ関連製品で好感を得た。なお、一般内科ではランキング上位であっても票数は寂しい状況で、スペシャリティシフトの影響もみられる。
◎循環器科 第一三共が15年連続1位 ファイザーや日本ベーリンガーが急伸
循環器科では、第一三共(30票)が15年連続1位を記録した。得票数のうち16票を第一想起で獲得した。リクシアナの情報提供を評価したとの声が13件あり、「適切な訪問の下、様々な事例で処方に役立つ情報を提供」といったコメントが複数みられた。中には「毎週病院前で挨拶し、何か希望の情報はないか聞いてくれた」と、コロナ禍には難しかった活動を再開し、医師の印象に強く残ったMRもいた。
一方で、第一三共の得票数を前年と比較すると、全体では2票減、第一想起でも4票減った。これはファイザーや日本ベーリンガーインゲルハイムなど複数企業の躍進による影響だ。2位のファイザー(19票)はエリキュースの活動を中心に8票増、4位タイの日本ベーリンガー(14票)は特にジャディアンスの活動に好感が持たれ7票伸ばした。また、7位のバイエル薬品(12票)は5票増、8位タイの小野薬品(8票)も5票増とした。
◎消化器科 武田薬品が11年連続1位 第一三共、持田製薬、大鵬薬品で伸び大きく
消化器科では、武田薬品(25票)が11年連続1位となり、第一想起で15票獲得した。ただ前年からは全体で3票減った。評価コメントはタケキャブに集中。「消化器領域に非常に詳しい」と強みとする消化器科で存在感を見せたMRも確認できた。2位は前年4位の第一三共(17票)で7票伸ばした。ミネブロやリクシアナなどの情報活動が評価された。3位タイは11票獲得したAZとMSDで、両社とも消化器がんの適応も持つ免疫療法薬の活動などが印象に残ったようだ。
5位の持田製薬(9票)は5票伸ばし、前年10位圏外からジャンプアップした。リアルダやオンボーの活動が評価され、「説明が上手」とのコメントもあった。重点領域の消化器科で強さを示した格好だ。7位タイの大鵬薬品(7票)も今回5票増とし、胃がん治療のキードラッグのティーエスワンの情報活動を評価する声が寄せられた。
◎呼吸器科 AZが5年連続1位 タグリッソ、イミフィンジなど多くの新薬群で存在感
呼吸器科では、AZが5年連続1位となった。前年から13票増の47票を獲得し、呼吸器科医の約半数がAZを推した。第一想起で24票を得た。タグリッソを中心にイミフィンジ、テゼスパイア、ビレーズトリなど多岐にわたる新薬群とエビデンスで医師を満足させた。「頻度と内容が充実している」、「頻回の訪問」など情報提供の量と質を評価するコメントが散見され、多岐にわたる製品群とエビデンスの多さが定期的なMR活動を支えているともいえそうだ。
2位のGSK(34票)は15票の大幅増を記録したが、AZも大きく伸びたため、順位は前年3位から1つアップにとどまった。テリルジー、レルベア、ヌーカラなどの情報活動で多くの医師から好感を得た。3位は前年2位の中外製薬(22票)で、「ニーズを意識した情報提供」、「日常会話と製品説明との時間配分が上手」など常に医師のニーズ把握に努めている姿が垣間見えるコメントが複数あった。このほか4位のMSD(18票)は5票伸ばし、キイトルーダで存在感を見せた。
◎精神神経科 大塚製薬が9年連続1位 ヴィアトリス製薬が大きく伸長
精神神経科では、大塚製薬が9年連続1位となった。今回14票の大幅増を記録して51票を獲得し、同診療科の医師の過半数が大塚MRを思い浮かべる状況になった。第一想起で10票増の32票を得た。国内初のアルツハイマー型認知症に伴うアジテーションの適応を追加したレキサルティの情報活動で評価をより高め、「本当コミュニケーション能力も高く、こちらが言わんとしていることを汲み取ってくれるので助かる」との誉め言葉も確認。情報提供の内容や頻度に満足している医師が多くみられた。
今回は2位と3位の順位が入れ替わった。前年3位だった武田薬品は4票増の31票を獲得して2位に、前年2位の住友ファーマは5票減の26票となり3位となった。武田薬品はトリンテリックスに評価コメントが集中。「使うだけの理由を説明してくれる」など説得力のある情報提供で医師の印象に残ったようだ。住友ファーマは早期退職者募集など事業構造改革を進めている中でもラツーダやロナセンで存在感をみせており、5票減でとどまったともいえそうだ。
得票数の大幅増という点では、5位のヴィアトリス製薬(14票)が今回8票伸ばした。イフェクサーやアミティーザの活動で票数を伸ばし、「説明のわかりやすさ」が評価ポイントのひとつとなった。
◎整形外科 第一三共が15票増で首位 前年まで3年連続1位の旭化成ファーマは2位に
整形外科では、前年2位の第一三共が40票を獲得して首位に立った。今回15票伸ばした。第一想起で9票増の21票を得た。タリージェに評価コメントが多く集まり、MRの定期訪問や講演会も好評で多くの医師を満足させた。前年まで3年連続1位の旭化成ファーマ(23票)は2位に後退。票数は4票減、第一想起では9票減の8票にとどまった。「頻繁に勉強会を提案」など得意領域での強みも垣間見えるが、第一三共の好調もあり、1位に返り咲くことに時間を要す可能性がありそうだ。
得票数上位10社のうち票数を5票以上伸ばした企業は5社あった。第一三共のほかに、前年と同じく3位のアステラス製薬(20票)は5票増、今回4位の久光製薬(17票)は6票増、5位のエーザイ(12票)は7票増、10位(6票)のツムラは5票増とした。ツムラは初めてトップ10に入った。
◎皮膚科 マルホが調査開始以来の1位継続 2位にサノフィ
皮膚科では、マルホが22年の調査開始以来、4年連続1位となった。得票数は4票減の46票だったが、2位以下に大差をつけ、皮膚科での圧倒的な強さを示した。第一想起で35票を獲得した。定期的な情報提供やレスポンスの速さに加え、「患者目線で使いやすくなった点を教えてくれる」など医師のニーズを的確にとらえた情報活動に好感が持たれた。2位は前年4位のサノフィ(17票)で今回6票伸ばした。デュピクセントに係る情報活動やレスポンスの良さで評価を上げた。
3位タイの日本イーライリリー(15票)も6票伸ばした。特に第一想起で8票増の9票を獲得し、存在感をみせた。トルツ、オルミエント、イブグリースなどに評価コメントが寄せられた。前年2位で今回3位タイのアッヴィ(15票)は1票減。前年と同様、リンヴォックやスキリージに評価コメントが多くみられた。
なお、皮膚科領域では近年、新薬の登場や適応追加が相次いでおり、今回トップ10入りした企業は大塚製薬(4票増)、ブリストル・マイヤーズ スクイブ(3票増)、ヤンセンファーマ(1票増)の3社あった。
◎泌尿器科 アステラス製薬が2位以下を圧倒 がん領域製品の情報活動に評価高く
泌尿器科では、アステラス製薬が23年の調査開始以来3年連続1位となり、2位以下を圧倒した。得票数は7票減ったが47票獲得、第一想起で33票を得た。評価コメントはイクスタンジやパドセブといったがん領域製品に集中。「情報提供を速やかにしてもらえた。内容も満足いくもので、その後のフォローも適切」との声のほか、「薬剤費に関する詳細なデータの準備」と実臨床を念頭に置いた準備にも好感が持たれた。
トップ3社は前年と変わらなかった。2位はキッセイ薬品で前年と同様16票を獲得。3位は杏林製薬で3票増の14票を獲得した。両社で共同販売しているベオーバに評価コメントが集まり、積極的な説明会・勉強会の企画立案や訪問頻度に満足した医師が多かった。
◎腫瘍内科 1位は中外製薬 2位は武田薬品、前年5位からジャンプアップ
勤務医50人のランキングとなる腫瘍内科では、中外製薬が2年連続で1位となった。得票数は1票減の13票で、第一想起で7票獲得した。テセントリク、フェスゴ、ポライビー、アバスチンにコメントが寄せられ、ポライビーでは「DLBCLの標準治療の歴史を塗り替えた」、テセントリクには「時代を変えた」とパラダイムシフトを起こしたとの声が散見され、製品特性でも同社の評価を高めた格好だ。
2位は前年5位の武田薬品(10票)で、今回5票伸ばした。第一想起で4票増の5票を獲得し、腫瘍内科医での存在感を高めた。24年11月発売の結腸・直腸がんに対する新薬フリュザクラやベクティビックスにコメントが寄せられた。3位はオプジーボやヤーボイを手掛けるBMSで1票減の9票を獲得。前年は2位だった。今回トップ10入りした企業はアステラス製薬(2票増)、ヤンセンファーマ(2票増)、第一三共(3票増)、ノバルティス ファーマ(2票増)――の4社あった。