働き方改革により勤務時間が短くなった医師は、勤務後に院内に残り、“自己研磨”として医薬情報を収集することが増えた――。製薬デジタルマーケティング支援会社MCI DIGITALが運営する「DM白書ラボ」が調査結果をまとめた。医師の働き方改革の施行当初、医師は帰宅後にネットなどで情報収集する時間が増えるとみられていた。しかし調査では、帰宅後に自宅で情報収集する時間はむしろ若干減り、勤務後に院内で情報収集する時間がやや増えていた。DM白書ラボは「勤務後院内における時間を活用していると考えられる」と分析しており、製薬企業に対し、各施設のルールを把握した上でこの時間帯のアポイント取得を心掛ける必要があると提案している。

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調査では、2024年４月施行の医師の働き方改革により、医師の医薬情報の収集時間やタイミングがどのように変化したのか分析した。勤務先で労働時間短縮計画が「推進中」の医師のうち、「勤務時間が減少した医師」は約20％にとどまった。時間外労働規制の成果が十分出ていない可能性があることに留意が必要だが、「勤務時間が減少した医師」と「勤務時間に変化が起きていない医師」を比較する形で、働き方改革に伴う情報収集活動の変化を調べた。

◎「勤務後院内」で医薬情報を収集　週平均で約176分費やす

医薬情報の収集時間は、「勤務時間が減少した医師」が「勤務時間に変化がない医師」と比べ、１週間に0.41時間（＝約25分）ほど収集時間が長くなったことがわかった。

医薬情報の収集タイミング別に１週間の平均情報収集時間を見てみると、「勤務時間が減少した医師」では「勤務開始前」が0.67時間／週（約40分）、「勤務中」が2.87時間／週（約172分）、「勤務後院内」が2.93時間／週（約176分）、「勤務後自宅」が2.08／週（約125分）――だった。

これに対し、「勤務時間に変化がない医師」では「勤務開始前」が0.55時間／週（約33分）、「勤務中」が2.72時間／週（約163分）、「勤務後院内」が2.58時間／週（約155分）、「勤務後自宅」が2.29／週（約137分）――だった。「勤務時間が減少した医師」では、「勤務開始前」や「勤務中」のほか、特に「勤務後院内」で情報収集する時間がやや増加し、「勤務後自宅」はやや減少した。

◎「勤務後院内」でＭＲ（面談、電話）から情報収集すること増加

「勤務時間が減少した医師」について、「勤務後院内」のタイミングに医薬情報をどのようなチャネルから取得しているかを見てみる。最も活用されているのがインターネットサイトの0.94時間／週（約56分）で、次いでＭＲ（面談、電話）の0.44時間／週（約26分）、Web講演会の0.35時間／週（約21分）――となった。「勤務時間に変化がない医師」と比べてみると、「勤務後院内」でＭＲ（面談、電話）から情報収集する時間は６分以上伸びており、この伸び幅はチャネル別でみて最も長かった。

コロナ禍以降、完全アポイント制をとる医療機関が多く、勤務時間短縮を求められている医師では、“自己研鑽”として、勤務後に院内でＭＲと接点を持つ機会が増えている様子がうかがえる。

◎「勤務後自宅」での情報収集　ネット、Web講演会とも利用時間やや減少

医師の働き方改革により「勤務後自宅」で情報収集することが増え、チャネルとしてはネットやWeb講演会が多く利用される傾向も指摘されてきた。今回の調査でも、「勤務時間が減少した医師」が「勤務後自宅」で利用するチャネルの１位はネット、２位はWeb講演会であることは確認できた。ただ、「勤務時間に変化がない医師」と比べると、ネット、Web講演会ともに利用時間はやや減少し、Web講演会では10分近く減っていた。

DM白書ラボはこれらの調査結果から、「医師は、勤務時間が短くなったとしても帰宅後に情報収集する時間が増えているわけではない」と指摘。そして、「タイミングとしては勤務後に院内で情報収集している時間が最も増加しており、業務が早く終わるからこそ、院内に残って自己研鑽として情報収集する時間を作り、帰宅後はプライベートの時間として切り分けている医師が多いのではないかと考えられる」とコメントしている。

なお、DM白書ラボは、MCI DIGITALが四半期に１回まとめている医師5000人調査「医師版マルチメディア白書」から導き出したチャネル活用上の課題を軸に、独自の深掘り調査や医師インタビューなどを行い、課題解決策や業界事例などを発信している。