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くすり未来塾 抗菌薬の安定供給へ「特例」求める 中長期的には「生産余力」反映した薬価実現を

公開日時 2024/10/02 04:51
薬価流通政策研究会・くすり未来塾は10月1日、抗菌薬の安定供給に向けて、「一般原則に当てはまらない特例が必要」と訴えた。短期的には政府による一定量の買い取りと備蓄、中期的には実勢価に基づく薬価改定の対象品目からの除外や、平時における生産余力の維持コストも反映した薬価の実現を求めた。長期的には国産化に対する財政支援の充実を求め、これにより競争力を有することで海外輸出する姿も描いた。また、解熱鎮痛剤や鎮咳・去痰薬をめぐっては、増産対応を行った企業に対し、「生産余力確保の評価や財政的支援を検討すべき」としている。くすり未来塾が同日、ホームページ上に提言を掲載した。

◎改正感染症法施行も「製薬企業側の増産リスク払拭できず」

感染症領域で使用される抗菌薬や解熱鎮痛剤、鎮咳・去痰薬の供給不足は、ジェネリック医薬品を中心とした多品目少量生産に紐づいた品質問題に端を発した供給不足とは「一線を画するもの」と説明。厚労省は供給不足解消に向けた対策を進めるが、「抜本的対応策は示されていない」と指摘した。

改正感染症法が施行され、感染症領域の医薬品が供給不足に陥った場合には政府が製薬企業に増産対応を要請することも可能になる。しかし、製薬企業側は赤字品目の増産は株主の了解を得ることが難しいことや、緊急時に備えた設備投資は経営上のリスクが高いなどの理由で、「増産リスクを払拭できていない」と指摘した。

◎製造リードタイム長い抗菌薬 急な増産要請の対応難しく 平時から余力ある製造設備を

抗菌薬は、世界的な供給不足が続いている。抗菌薬は製造リードタイムが長く、中間体の発注から医療機関への納品までは2年弱かかるなど、急激な需要増による増産要請がされても対応が困難な状況にある。このため、1つの製造拠点でトラブルが発生した場合には、他の製造拠点でも補いきれない恐れがあるとした。こうした状況を克服するために、平時から余力のある製造設備を準備するなど“備え”が重要と指摘した。

◎短期的には政府備蓄や買い取り、中期的には薬価、長期的には財政支援を 競争力獲得で海外輸出も可能

このため、抗菌薬の特性に応じた“特例”を求めた。具体的には、短期的には、「製造には専用の設備が必要であり、新設には3年近くの年月が必要となるため、既存設備において有事に備えた十分量を製造し、政府による一定量の買い取りと備蓄を実施すべき」と強調。中期的には、「抗菌薬は、我が国の公衆衛生の維持・向上のために必要不可欠な薬剤であるため、抗菌薬を実勢価に基づく薬価改定の対象品目から除外し(改定除外)、抗菌薬メーカーの事業の持続可能性が担保できる薬価の評価方法を取り入れるべき」、「抗菌薬専用の製造設備を維持し、将来にわたって抗菌薬の安定供給にコミットする供給業者に対しては、政府より設備更新に必要な資金面での支援、もしくは将来必要となる設備投資費用を見込んだ薬価の設定や、平時における生産余力の維持コストも反映した薬価(現状薬価を超える特例薬価)を講ずるべき」と主張した。コストを反映するために、現行の薬価算定ルールでは、「現行の薬価を超えない」という但し書きがあるが、これを適用しない特例の必要性も指摘した。

長期的には、「特定重要物資である抗菌性物質製剤をはじめとする必須医薬品の国産化に対する財政支援を充実」することで、設備投資と後継者育成のための人材育成費用を賄う姿を描いた。これにより、「対外競争力を持たせ、海外への輸出を促進する」とした。

◎不採算品再算定 物価、人件費踏まえた随時運用を 増産対応コミット企業を優先的に

解熱鎮痛剤、鎮咳・去痰薬についても言及した。基礎的医薬品や安定確保医薬品に該当しないことから、薬価は10円未満の超低薬価市場となっている。薬価を下支えするルールである、不採算品再算定だが、現行ルールでは足下の人件費や原材料費、エネルギーコストの高騰を十分に反映できていないと指摘。「不採算品再算定ルールは薬価改定時に限定するのではなく、物価、人件費の動向を勘案して随時行う運用とし、同一成分を販売している全企業の手上げではなく、増産対応をコミットする企業の製品の薬価を優先的に引き上げるべき」と主張した。増産対応をコミットする企業に対しては、「有事に備えた生産余力の確保を要請するとともに生産余力確保の評価や財政的支援を検討するべき」とした。

◎感染症法の報告聴取対象品目「別途最低薬価を設定すべき」 例えば局法品の10.1円

また、感染症法に基づく報告徴収対象品目(感染症対策物資)は「別途最低薬価を設定すべき」と主張。局法品に適用される最低薬価10.1円を参照することを提案した。また、「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン(流通改善ガイドライン)」では、医療上必要性の高い品目については別枠で単品単価交渉を行うことを求めているが、これらの品目も別枠に位置付けることを求めた。

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