25年度薬価改定 最低薬価、不採算品再算定でプラス改定企業も 累積額控除と長収品直撃の田辺三菱は「10%台前半」マイナス影響
公開日時 2025/03/10 06:30
ミクス編集部が2025年度薬価改定の影響率を各社別に調査したところ、日新製薬が「プラス3%」と回答するなど、プラス改定企業が出現することがわかった。プラス改定企業が出現するのは、23年度、24年度に続き、3年連続。「0%」、「0%台」など改定影響がほとんどなかった企業も8社に及び、新薬創出等加算をポートフォリオに揃える企業のほか、不採算品再算定と最低薬価の引上げ、外国平均価格調整など25年度改定で実施されたルールにより、改定のマイナスを相殺するケースが多くあった。一方で、中間年改定として初めて実施された新薬創出等加算の累積額控除に加え、ポートフォリオを支える長期収載品の改定対象範囲拡大の影響が直撃した田辺三菱製薬が「10%代前半」と回答。導入されたルールによる影響が各社の明暗を分けた。
文末のダウンロードファイルから、「2025年度薬価改定製薬会社の影響率」、「2025年度薬価改定各社主力品(汎用規格)の改定率」がダウンロードできます(会員限定)
ミクス編集部が製薬83社(回答:62社)に改定の影響率を尋ねたところ、プラスと回答したのは、日新製薬のほか、「プラス0.5%(通常改定分)」と回答した扶桑薬品、「プラス0.2%」と回答したツムラの3社だった。
◎日新製薬「プラス3.0%」 123成分中61成分が引上げ 最低薬価、不採算品再算定で
日新製薬は、主力品のうち、最低薬価品である生食液NS(20mL1管)がプラス61.3%、アムロジピンOD錠5mg「NS」、レバミピド錠100mg「NS」がプラス3.0%となるなど、78成分144品目ある最低薬価の引上げが大きく影響。不採算品再算定の適用を受けたワルファリンK細粒0.2%「NS」はプラス100%引上げられたことも影響した。後発品123成分262品目中、薬価の引上げを受けたのは61成分108品目と半数にのぼった。また、薬価が維持された品目が47成分64品目あった。
◎沢井製薬「約3.1%」、東和薬品「2.7%」、日医工「1%」 不採算は24年度より影響縮小
エッセンシャルドラッグをポートフォリオに幅広く揃えるジェネリックメーカーは、最低薬価品目や不採算品再算定を抱えるケースも多く、改定影響は小幅にとどまった。沢井製薬は「約3.1%」。後発品327成分738品目中、薬価引上げを受けたのは119成分217品目、薬価が維持されたのは90成分168品目だった。なお、最低薬価は118成分219品目、不採算品再算定は8成分12品目。東和薬品は「2.7%」、日医工は「1%」、ニプロは「2.5%」、富士製薬は「1.1%」と回答した。
25年度薬価制度改革も臨時・特例的に不採算品再算定が実施されたが、企業から希望のあった品目すべてを対象に実施された24年度改定と比べ、対象範囲を限定。基礎的医薬品、安定確保医薬品(カテゴリA・B)、感染症対症療法薬等の安定供給に向けて行われた大臣要請の品目に絞った。品目数でみると、1943品目から443品目へと減り、不採算品再算定はポートフォリオによる影響が強まったといえそうだ。
◎武田薬品「概ね0%」 累積額控除受けるも血漿分画製剤など不採算品再算定適用で相殺
最低薬価や不採算品再算定のプラス影響は、新薬メーカーにも及んだ。新薬創出等加算の累積額控除など改定影響を吸収する企業もあった。「概ね0%」と回答した武田薬品は、「不採算品再算定の引き上げ品目が引き下げ品目の影響を相殺し、全体として若干のプラスの改定影響となった」とコメント。新薬創出等加算品で改定対象となった品目はなかったが、キャブピリン配合錠が新薬創出等加算の累積額控除が適用され、8.4%の引き下げを受けた。しかし、4成分10品目が適用を受けた不採算品再算定がプラスに働いた。献血グロベニン-I 静注用 5000mgがプラス100%、金額ベースで3万3459円と大幅な引き上げを受けた。ガンマグロブリン筋注1500mg/10ml「タケダ」がプラス100%、破傷風グロブリン筋注用250単位「タケダ」が83.4%などの大幅な引き上げを受けた。外国平均価格調整の影響で、フリュザクラカプセル1mg・5mgがプラス20.0%引き上げられた一方、アジンマ静注用1500は1.8%の引下げを受けた。
◎「ほぼ影響なし」の塩野義製薬 ラピアクタ累積額控除もシナール最低薬価などで
「ほぼ影響なし」と回答した塩野義製薬は、ラピアクタ点滴静注液が新薬創出等加算の累積額控除を受けた。しかし、売上上位品目であるシナール配合錠が最低薬価品で、改定の影響を受けず、メジコン錠15㎎、フルマリンキット静注用1g、水溶性プレドニン20㎎など7成分12品目に不採算品再算定が適用されている。
◎「0%台」の第一三共 エンハーツのプラス20%引上げ 外国平均価格調整の影響も
「0%台」と回答した第一三共も外国平均価格調整の影響を受けたとみられる。新薬創出等加算品のランマーク皮下注120mgが3.2%、イナビル吸入粉末剤20mgが3.7%引き下げられるなどしたが、エンハーツ点滴静注用100mgがプラス20.0%引き上げられた。外国平均価格調整による引上げの影響とみられる。このほか、最低薬価品のロキソニン錠60mgがプラス3.0%、トランサミンカプセル250mgがプラス3.0%引き上げられたことなども影響した。
このほか、アムジェンとバイオジェンが「0%」、あすか製薬が「0.6%」、中外製薬とアッヴィが「0%代後半」などと回答している。
◎「10%代前半」の田辺三菱製薬 ステラーラが40.8%引下げ 長収品「20%代後半」の引下げ響く
一方、新薬創出等加算の累積額控除の影響が直撃した企業も出た。田辺三菱製薬は回答企業中最も影響の大きい「10%台前半」と回答。ステラーラ皮下注45mgが新薬創出等加算の累積額控除の適用により、40.8%の引き下げを受けたことが響いた。
また、直近の国内売上高に占める長期収載品の売上比率が「40%代前半(24年10月時点)」と高い同社だけに、25年度薬価改定ではカテゴリー別の考え方が導入され、長期収載品の改定対象が平均乖離率の0.5倍超まで拡大された影響を強く受けた。ポートフォリオの長期収載品63品目すべてが改定対象となり、24年4月からの改定率は「20%台後半」と響いた。
最低薬価はウルソ錠100mgがプラス3.0%、デパス錠0.5mgがプラス3.3%引き上げられるなど20成分47品目に適用。不採算品再算定もノックビン原末・1gがプラス51.9%となるなど3成分6品目に適用されたが、改定影響を吸収できなかった。
◎「6%代前半」エーザイ デエビゴ13.8%、ハラヴェン23.0%引下げ ワーファリン100%引上げも
エーザイは「6%代前半」と回答。デエビゴ錠5mgが20年度薬価制度改革で導入された類似薬効比較方式(Ⅰ)等で算定された新薬に対して、新薬創出等加算対象品目等を比較薬にして算定された品目に該当し、新創加算累積額相当額を控除され、13.8%の引下げを受けた。さらに、ハラヴェン点滴静注1mgが新薬創出等加算の累積額控除が適用され、23.0%の引下げを受けた。一方で、売上上位品目のメチコバール錠500μgは最低薬価品目で、プラス3.0%の引上げを受けたほか、不採算品再算定に該当したチョコラA滴0.1万単位/滴、ワーファリン顆粒0.5%がいずれも100.0%の引上げを受け、改定影響を緩和した。
(望月英梨、神尾裕、梅澤平、早瀬悠里)