厚労省の薬食審医薬品第二部会は8月29日、新薬4製品の承認の可否を審議し、全て承認することを了承した。この中には、アステラス製薬が承認申請し、先駆け審査指定制度の対象となった初のFLT3遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病の治療薬ゾスパタ錠(一般名:ギルテリチニブフマル酸塩)や、ファイザーが承認申請し、初の条件付き早期承認制度が適用された医薬品で、ALKチロシンキナーゼ阻害剤に十分な効果を示さない非小細胞肺がん患者向けの治療薬ローブレナ錠(一般名:ロルラチニブ)がある。これら4製品は9月下旬にも正式承認となる見通し。
承認が了承された製品は次のとおり。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽ゾスパタ錠40mg(ギルテリチニブフマル酸塩、アステラス製薬):「再発または難治性のFLT3遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。先駆け審査指定医薬品。再審査期間10年。
同省によると、これまでも再発または難治性の急性骨髄性白血病に対する化学療法はあるが、標準的治療法は確立していない。FLT3遺伝子変異陽性患者に対する治療薬は初めて。同患者は約2100人だが、そのうち再発または難治性はさらに限定される。同剤は、腫瘍の増殖に関与するFLT3を介したシグナル伝達を阻害することで、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。1日1回120mgを経口投与。海外ではまだ承認されていない。
▽ローブレナ錠25mg、同錠100mg(ロルラチニブ、ファイザー):「ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性または不耐性のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。条件付き早期承認制度が適用された第一号で優先審査。再審査期間8年。
非小細胞肺がん患者のうちALK陽性は3~5%で、それら患者に対する治療薬は3製品ある。ローブレナは、それらALK阻害剤が効かなくなった患者の腫瘍に生じた変異(耐性変異)を解明することにより創製された薬剤。1日1回100mgを経口投与。
重篤で有効な治療方法が乏しいこの疾患に対し、日本も参加した国際共同第1/2試験で一定程度の有効性と安全性が確認されたことから、早期に実用化を後押しする「条件付き早期承認制度」の適用となった。製造販売後に全例調査や市販後直後調査など、有効性・安全性の再確認等のために必要な調査等を実施することなどが承認条件となる。海外ではまだ承認されていない。
▽フィラジル皮下注30mgシリンジ(イカチバント酢酸塩、シャイアー・ジャパン):「遺伝性血管性浮腫の急性発作」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。
急性発作では死亡することもある。これまでの治療薬は静注製剤だったが、これは皮下注製剤であるため、医療機関の受診が難しいケースにおいて自己注射により早期治療を可能にするよう設計された薬剤。これまでの薬剤作用が異なり、急性発作に関与するブラジキニンの作用を、この薬剤のブラジキニン受容体拮抗作用で症状を緩和する。プレフィルドシリンジ製剤で、1回30mg。2017年1月現在、欧米など44か国で承認済。
この疾患は、C1インアクチベーターの量的または質的な欠損で、身体の様々な部位に浮腫が発生する遺伝性疾患。患者数は数百人とみられる。現時点での標準的治療法は血漿由来人C1インアクチベーター製剤(製品名:ベリナートP静注用)の補充療法。
▽ジビイ静注用250、同静注用500、同静注用1000、同静注用2000、同静注用3000(ダモクトコグ アルファ ペゴル(遺伝子組換え)、バイエル薬品):「血液凝固第8因子欠乏患者における出血傾向の抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
血友病Aに対する治療薬で、半減期延長型の遺伝子組換え第8因子製剤。定期補充療法では、通常、12歳以上の患者で週2回。状態に応じて申請のもとに5日ごと、または週1回の用法・用量が定められている。
中外の乳がん治療薬パージェタに術後補助療法、承認へ
【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽パージェタ点滴静注420 mg/14 mL(ペルツマブ(遺伝子組換え)、中外製薬):既存適応の乳がんに術後補助療法を追加する新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余(2021年6月27日まで)。
現行の適応症は「HER2陽性の手術不能または再発乳がん」で「手術の補助化学療法としての有効性及び安全性は確立していない」となっている。
▽アドセトリス点滴静注用50 mg(ブレンツキシマブベドチン(遺伝子組換え)、武田薬品):既存適応のCD30陽性ホジキンリンパ腫においてファーストラインで使用できるようにする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は残余(2024年1月16日まで)
▽エルプラット点滴静注液50mg、同100mg、同200mg(オキサリプラチン、ヤクルト本社)/オキサリプラチン点滴静注液50mg、同100mg、同200mg「サワイ」(同、沢井製薬)/オキサリプラチン点滴静注液50mg、同100mg、同200mg「NK」(同、日本化薬)/オキサリプラチン点滴静注液50mg、同100mg、同200mg「ニプロ」(同、ニプロ)/オキサリプラチン点滴静注液50mg、同100mg、同200mg「DESP」(同、第一三共エスファ)
▽5-FU注250mg、同1000mg(フルオロウラシル、協和発酵キリン)
▽アイソボリン点滴静注用25mg、同100mg(レボホリナートカルシウム、ファイザー)/レボホリナートカルシウム点滴静注用25mg、同100mg「オーハラ」(同、大原薬品)/レボホリナートカルシウム点滴静注用25mg、同100mg「ヤクルト」(同、ヤクルト本社)/レボホリナートカルシウム点滴静注用25mg、同100mg「NK」(同、高田製薬)/レボホリナートカルシウム点滴静注用25mg、同100mg「NP」(同、ニプロ)
:小腸がんを対象とする3剤併用療法を追加する新効能・新用量医薬品。厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で公知申請が妥当と判断され、部会の事前評価を経て公知申請されたもの。そのため既に保険適用されている。再審査期間なし。
▽ブスルフェクス点滴静注用60mg(ブスルファン、大塚製薬):既存適応である「同種造血幹細胞移植の前治療」「ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、神経芽細胞腫における自家幹細胞移植の前治療」において1日1回の用法・用量を追加(現在は1日4回)する新用量医薬品。再審査期間なし。
▽オラビ錠口腔用50 mg(ミコナゾール、そーせい):「カンジダ属による口腔咽頭カンジダ症」を効能・効果とする新剤形医薬品。再審査期間なし、
同剤は、1日1回の上顎歯肉に付着させて使用するタイプの抗真菌薬。局所療法に用いる薬剤としては同成分では経口用ゲル、クロトリマゾールではトローチ剤がある。
▽トラスツズマブBS点滴静注用60 mg、同150 mg「ファイザー」(トラスツズマブ(遺伝子組換え)[トラスツズマブ後続3]、ファイザー):「HER2過剰発現が確認された乳がん」「HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃がん」を効能・効果とするバイオ後続品。再審査期間なし。
先行品はハーセプチン(中外製薬)。乳がんの用法・用量において、先行品にある2回目以降3週間間隔とする「B法」はなく、1週間間隔の「A法」だけで、8月3日の医薬品第二部会に報告された第一三共の製品と同様。ハーセプチンのバイオ後続品は8月20日に発売された日本化薬の製品に続くものになるが、日本化薬の製品は胃がん適応のみ。