ATTR-CM治療薬・ビヨントラなど新薬4製品が承認へ 初のHCMやALGSの治療薬も 薬事審第一部会が了承
公開日時 2025/03/07 04:50
厚生労働省の薬事審議会・医薬品第一部会は3月6日、アレクシオンファーマのトランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)治療薬・ビヨントラ錠(一般名:アコラミジス塩酸塩)など新薬4製品の承認の可否を審議し、承認を了承した。
この中には、ブリストル・マイヤーズ スクイブの閉塞性肥大型心筋症(HCM)治療薬・カムザイオスカプセル(マバカムテン)や、武田薬品のアラジール症候群(ALGS)等の治療薬・リブマーリ内用液(マラリキシバット塩化物)が含まれる。HCM、ALGSの治療薬はそれぞれ国内初となる。
報告品目は、東和薬品の週2回の貼付で済むアルツハイマー病治療薬・リバルエンLAパッチ(リバスチグミン)など5製品で、いずれも承認が了承された。
部会を通過した全製品が3月中の承認、新有効成分含有医薬品については5月の薬価収載が見込まれる。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽ビヨントラ錠400mg(アコラミジス塩酸塩、アレクシオンファーマ):「トランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型及び変異型)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
トランスサイレチン(TTR)安定化薬。効能・効果の「トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)」は、TTR由来のアミロイドの組織沈着を病因とするアミロイドーシスの一種であり、主に心筋にアミロイドが沈着して機能障害を生じる疾患。予後は総じて不良であり、多くの患者は心突然死、うっ血性心不全、心筋梗塞等により死亡に至る。
用法・用量は「通常、成人には1回800mgを1日2回経口投与する」。
国内で承認を取得しているATTR-CM治療薬には、ビンダケルカプセル/ビンマックカプセル(タファミジス)があり、用法・用量は1日1回経口投与となっている。
海外でビヨントラは、米国で24年11月に「Attruby」、欧州で25年2月に「Beyonttra」の商品名で承認されている。
▽カムザイオスカプセル5mg、同カプセル2.5mg、同カプセル1mg(マバカムテン、ブリストル・マイヤーズスクイブ):「閉塞性肥大型心筋症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
心筋ミオシン阻害剤。肥大型心筋症(HCM)は、高血圧等の心疾患や全身性疾患などの原因がないにもかかわらず、心室(左室)肥大をきたす慢性の進行性疾患であり、左室流出路の閉塞有無により閉塞性HCMと非閉塞性HCMに大別される。カムザイオスの効能・効果は「閉塞性HCM」。
用法・用量は「通常、成人には2.5mgを1日1回経口投与から開始し、患者の状態に応じて適宜増減する。ただし、最大投与量は1回15mgとする」。
国内では、現在、HCMの適応を持つ治療薬はない。海外でカムザイオスは、24年11月現在、閉塞性HCMに係る効能・効果で欧米を含む51の国又は地域で承認されている。米国では22年4月、欧州では23年6月に承認された。
▽①トレムフィア点滴静注200mg、②同皮下注200mgシリンジ、③同皮下注200mgペン、④同皮下注100mgシリンジ(グセルクマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):「①中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)、②③④中等症から重症の潰瘍性大腸炎の維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能・効果とする①新投与経路医薬品、②③新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品、④新効能・新用量医薬品――。再審査期間は6年。
抗IL-23p19抗体。既存のトレムフィア皮下注100mgシリンジは、18年3月に「尋常性乾癬、乾癬性関節炎、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症」、同年11月に「掌蹠膿疱症」の適応で承認されている。今回、潰瘍性大腸炎(UC)の適応が追加される。点滴静注200mgは新投与経路、皮下注200mgシリンジおよび200mgペンは新剤形となる。
点滴静注(寛解導入療法)の用法・用量は「通常、成人には、1回200mgを初回、4週後、8週後に点滴静注する」。
一方、皮下注(維持療法)の用法・用量は「通常、成人には、点滴静注製剤による導入療法終了8週後から、1回100mgを8週間隔で皮下投与する。なお、患者の状態に応じて、点滴静注製剤による導入療法終了4週後以降に、1回200mgを4週間隔で皮下投与することもできる」。
UCは、活動期には下痢、血便、腹痛や発熱等を伴い、寛解と再燃を繰り返す炎症性腸疾患。重症度等に応じた治療法(薬物療法、外科的治療等)が選択されている。国内では、トレムフィアと同様の抗IL-23p19抗体のオンボーが23年3月、同スキリージが24年6月にUCの承認を取得している。
海外でトレムフィアは、24年12月現在、尋常性乾癬等に係る効能・効果で欧米を含む90以上の国又は地域で承認されており、UCに係る効能・効果では、米国で24年9月に承認されている。
▽リブマーリ内用液10mg/mL(マラリキシバット塩化物、武田薬品):「アラジール症候群及び進行性家族性肝内胆汁うっ滞症における胆汁うっ滞に伴うそう痒」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
胆汁酸の再吸収を抑制する回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)阻害薬。武田薬品は21年9月に米Mirum社から導入した。
アラジール症候群(ALGS)は、小葉間胆管減少症を伴うまれな遺伝性疾患であり、胆汁うっ滞により、最終的には進行性の肝機能障害を引き起こす。国内患者数は200~300人程度と推測されている。
一方、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)は、肝細胞の胆汁を分泌する能力が低下し、肝細胞内に胆汁の蓄積が起こることにより、進行性の肝疾患に至るまれな遺伝性疾患。国内では、小児慢性特定疾病の対象疾患となっているが、小児慢性特定疾患治療研究事業への新規登録症例数は年間2~8例程度のみとなっている。
ALGSの用法・用量は「通常、200μg/kgを1日1回食前に経口投与する。1週間後、400μg/kg1日1回に増量する」。一方、PFICの用法・用量は「通常、300μg/kgを1日1回食前に経口投与する。1週間後、1回300μg/kg1日2回に増量する。さらに、1週間後、1回600μg/kg1日2回に増量する」。
国内でALGSに関連する効能・効果を有する治療薬はない。海外でリブマーリは、24年11月現在、ALGSに係る効能・効果で欧米を含む41の国又は地域で承認されており、PFICに係る効能・効果では欧米を含む31の国又は地域で承認されている。
【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽カーボスター透析剤2号・L、同透析剤2号・P(医療用配合剤のため該当しない、陽進堂):「慢性腎不全における透析型人工腎臓の灌流液として、以下の要因を持つものに用いる。・無糖の透析液では、血糖値管理の困難な場合。・カルシウム濃度の高い透析液では、高カルシウム血症を起こすおそれのある場合」を効能・効果とする類似処方医療用配合剤。
▽ベピオウォッシュゲル5%(過酸化ベンゾイル、マルホ):「尋常性ざ瘡」を効能・効果とする新用量・剤形追加に係る医薬品。
現在、ベピオゲル2.5%/ベピオローション2.5%があり、今回5%が追加となる。効能・効果は既存の2.5%と同じ。用法・用量は既存製剤が「1日1回、洗顔後、患部に適量を塗布する」なのに対し、ウォッシュゲル5%は「1日1回、洗顔後、患部に適量を塗布し、5~10分後に洗い流す」となっている。
▽リツキサン点滴静注100mg、同点滴静注500mg(リツキシマブ(遺伝子組換え)、全薬工業):「ネフローゼ症候群(頻回再発型あるいはステロイド依存性)」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
効能・効果のネフローゼ症候群(NS)は、糸球体毛細血管障害に起因する高度蛋白尿及び低アルブミン血症の結果、血管内の水分が間質に移り、全身性浮腫や高コレステロール血症等をきたす病態の総称。
リツキサンは、2014年8月に小児期発症の「難治性のネフローゼ症候群(頻回再発型あるいはステロイド依存性を示す場合)」の効能・効果を取得。24年9月には難治性ステロイド抵抗性NSが追加され、現在のNSに係る効能・効果は「難治性のネフローゼ症候群(頻回再発型、ステロイド依存性あるいはステロイド抵抗性を示す場合)」となっている。
今回、難治性ではない「頻回再発型あるいはステロイド依存性のネフローゼ症候群」の効能・効果が追加される。
海外でリツキサンは、24年12月現在、さまざまな効能・効果で米国及び欧州を含む約140の国又は地域で承認されているが、NSに係る効能・効果で承認されている国又は地域はない。
▽リバルエンLAパッチ25.92mg、同LAパッチ51.84mg(リバスチグミン、東和薬品):「軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」を効能・効果とする新剤形医薬品。
持続放出性リバスチグミン経皮吸収型製剤。東和薬品は20年12月にスイスのLuyePharma社から導入した。
既存のリバスチグミン製剤は1日1回の貼付が必要であり、今回、週2回の貼付とすることで、患者・家族、介護者の精神的・身体的負担軽減が期待されている。
用法・用量は「通常、成人には1回25.92mgから開始し、原則として4週後に維持量である1回51.84mgに増量する。背部、上腕部、胸部のいずれかの正常で健康な皮膚に貼付する。原則として開始時は4日間貼付し、1枚を3~4日ごとに1回(週2回)貼り替える」。
海外では、24年11月現在、10カ国で承認されている。
▽①オンボー点滴静注300mg、②同皮下注100mgオートインジェクター、③同皮下注100mgシリンジ、④同皮下注200mgオートインジェクター、⑤同皮下注200mgシリンジ(ミリキズマブ(遺伝子組換え)、日本イーライリリー):「中等症から重症の活動期クローン病の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能・効果とする①新効能・新用量医薬品、②③新効能・新用量・その他の医薬品、④⑤新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品――。再審査期間は残余(2033年3月26日まで)。
抗IL-23p19抗体。既存のオンボー点滴静注300mgと同皮下注100mgオートインジェクター/同皮下注100mgシリンジは、潰瘍性大腸炎(UC)の適応で承認されている。今回、クローン病(CD)の適応が追加される。皮下注200mgオートインジェクターと皮下注200mgシリンジは新剤形となる。
クローン病(CD)は原因不明の肉芽腫性炎症性疾患であり、主に小腸や大腸の消化管粘膜に潰瘍等が生じる。腹痛、下痢等の消化器症状とともに、体重減少、発熱等の全身症状を呈し、再燃と寛解を繰り返すが、高度な狭窄や瘻孔、膿瘍等の合併症が生じると、高率に外科的治療が必要となる。
CDに対する点滴静注の用法・用量は「通常、成人には1回900mgを4週間隔で3回(初回、4週、8週)点滴静注する。また、ミリキズマブ(遺伝子組換え)皮下投与用製剤による治療中に効果が減弱した場合には、1回900mgを4週間隔で3回点滴静注することができる」。
一方、CDに対する皮下注の用法・用量は「ミリキズマブ(遺伝子組換え)点滴静注製剤による治療終了4週後から、通常、成人には1回300mgを4週間隔で皮下投与する」。
国内では、オンボーと同様の抗IL-23p19抗体のスキリージが22年9月にCDの承認を取得している。同トレムフィアはCDの効能追加を申請中。
海外でオンボーは、25年1月現在、44以上の国又は地域でUCに係る効能・効果で承認されており、CDに係る効能・効果については、米国で25年1月に承認されている。