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ヤンセンのEGFR陽性NSCLC治療薬・ラズクルーズ錠など新薬10製品を審議へ 2月27日の第二部会で

公開日時 2025/02/14 04:49
厚生労働省は2月27日に薬事審議会・医薬品第二部会を開き、ヤンセンファーマのEGFR陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する経口第3世代EGFR-TKI・ラズクルーズ錠(一般名:ラゼルチニブメシル酸塩水和物)など新薬10製品の承認の可否を審議する。ラズクルーズは同社の二重特異性抗体・ライブリバント点滴静注(アミバンタマブ)と併用してEGFR陽性NSCLCの1次治療に用いるもの。ライブリバントについても、この日の部会で、ラズクルーズとの併用に係る新効能・新用量を承認する方針が報告される。このほか審議予定品目には、サノフィのデュピクセント皮下注(デュピルマブ)に慢性閉塞性肺疾患(COPD)の効能を追加することが含まれる。

報告予定品目は3製品。ライブリバントの効能追加のほか、第一三共の新型コロナワクチン・ダイチロナ筋注に5~11歳の小児用量を追加することがある。

【審議予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
テビムブラ点滴静注100mg(チスレリズマブ(遺伝子組換え)、BeiGene Japan):「根治切除不能な進行・再発の食道がん」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。

抗PD-1抗体。厚労省によると、BeiGene Japanはテビムブラを食道がんの1次治療及び2次治療で承認申請しており、1次治療は化学療法との併用、2次治療は単剤療法との試験デザインになっている。米国では24年3月、欧州では11月に食道がんに係る効能で承認されている。

ラズクルーズ錠80mg、同錠240mg(ラゼルチニブメシル酸塩水和物、ヤンセンファーマ):「EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。

経口第3世代チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)。変異がない野生型のEGFRは標的とせず、T790M変異と活性化EGFR変異の両方を標的とする。ラズクルーズは、ヤンセンの既承認のEGFRおよびMETを標的とする完全ヒト型二重特異性抗体・ライブリバント点滴静注と併用して、EGFR陽性NSCLCの1次治療に対し承認申請している。

テブダック点滴静注用40mg(チソツマブ ベドチン(遺伝子組換え)、ジェンマブ):「がん化学療法後に増悪した進行又は再発の子宮頸がん」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。

ジェンマブの組織因子(TF)を標的とするヒトモノクローナル抗体に、プロテアーゼ切断可能なリンカーを用いて微小管阻害薬・モノメチルアウリスタチンE(MMAE)を共有結合させるというファイザーの技術を応用して開発された抗体薬物複合体(ADC)。両社で共同開発している。

今回の申請は、2次又は3次治療の再発又は転移性子宮頸がん患者を対象に、チソツマブ べドチンと治験担当医師が選択した化学療法単独独(トポテカン、ビノレルビン、ゲムシタビン、イリノテカンまたはペメトレキセド)との比較による有効性および安全性の評価を目的とした無作為化非盲検の国際共同第3相臨床試験(innovaTV 301/ SGNTV-003 試験)などの成績に基づいて行われた。

ティブソボ錠250mg(イボシデニブ、日本セルヴィエ):「IDH1遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。

IDH1阻害薬。強力な化学療法の適応とならない未治療の急性骨髄性白血病(AML)患者に対しては、IDH1遺伝子変異の有無にかかわらず、ベネトクラクスとアザシチジン又は低用量シタラビンとの併用投与が推奨されているが、長期生存率は低く、依然として予後は不良であること等から、新たな治療薬の開発が望まれている。

ティブソボとアザシチジンとの併用投与の有効性及び安全性をプラセボとアザシチヂンとの併用投与と比較した国際共同第3相試験では、主要評価項目の治験責任医師判定による無イベント生存期間について統計学的に有意な延長が認められた。IDH1遺伝子変異陽性AMLの患者数は約1045人と推定されている。

ベネクレクスタ錠10mg、同錠50mg、同錠100mg(ベネトクラクス、アッヴィ):「再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。

経口BCL-2阻害薬。いくつかの血液がんでは、BCL-2がアポトーシスと呼ばれるがん細胞の自然死や自己破壊の過程を阻止する。同剤はBCL-2タンパク質を標的とし、がん細胞により失われたアポトーシスの過程を回復させる作用がある。マントル細胞リンパ腫(MCL)は、リンパ節のマントル帯に由来する異常なBリンパ球が増える血液がん。

ベネクレクスタは現在、▽再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)、▽急性骨髄性白血病――の効能で承認されている。

イミフィンジ点滴静注120mg、同点滴静注500mg(デュルバルマブ(遺伝子組換え)、アストラゼネカ):「限局型小細胞肺がんにおける根治的化学放射線療法後の維持療法」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。

抗PD-L1抗体。第3相ADRIATIC試験の結果に基づき、根治的化学放射線療法後に疾患進行が認められない限局型小細胞肺がん(LS-SCLC)に対する単剤療法として申請を行った。

小細胞肺がん(SCLC)は肺がんの中でも悪性度が高い病態であり、LS-SCLC患者においては、標準治療である化学放射線療法(CRT)を行い治療初期に奏効しても、約60%の患者が2年以内に再発すると報告されている。LS-SCLCの予後は不良で、診断後の5年生存率は15~30%。LS-SCLCに対する標準治療はこの数十年変わっておらず、新たな治療選択肢が望まれている。

デュピクセント皮下注300mgシリンジ、同皮下注300mgペン(デュピルマブ(遺伝子組換え)、サノフィ):「慢性閉塞性肺疾患(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。

抗IL-4/13受容体抗体。慢性閉塞性肺疾患(COPD)の適応追加申請の根拠とした国際共同第3相試験(BOREAS)では、2型炎症を伴う中等症から重症のCOPDを対象に、主要評価項目である試験開始後52週間の中等症または重症のCOPD急性増悪の発現率をプラセボ群と比較して有意に30%低下させた(p<0.001)。

COPDの薬物療法はクラスとして直近約10年間、大きな変化がなかった。デュピクセントが承認されれば、COPDに対する初の抗体製剤かつIL-4とIL-13のシグナル伝達を阻害するという新たなアプローチを提供することになる。

オテズラ錠10mg、同錠20mg、同錠30mg(アプレミラスト、アムジェン):「局所療法で効果不十分な掌蹠膿疱症」を対象疾患とする新効能医薬品。

経口PDE4阻害薬。PDE4を阻害することで細胞内cAMP濃度を上昇させ、間接的に炎症性メディエーターの産生を調節すると考えられている。

掌蹠膿疱症(PPP)に対する薬物治療は現時点では対処療法にとどまる。基本的な治療法は外用療法だが、手掌および足蹠の厚い角質層が妨げになるため、有効性は限定的。また、外用療法で十分な効果が得られない場合、光線療法や内服療法が用いられるが、その有効性は限定的と報告されている。さらに現在、既存治療で効果不十分なPPPを効能・効果として承認されている生物学的製剤は注射剤で、原則的に自己注射は認められていない。日本皮膚科学会によって承認された991の医療機関(24年1月22日現在)においてのみ投与が可能なため、利便性の面で課題がある。

オテズラは現在、▽局所療法で効果不十分な尋常性乾癬、▽乾癬性関節炎、▽局所療法で効果不十分なベーチェット病による口腔潰瘍――の3つの適応で承認されている。

イラリス皮下注射液(カナキヌマブ(遺伝子組換え)、ノバルティスファーマ):「既存治療で効果不十分な成人発症スチル病」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。

ヒト型抗ヒトIL-1βモノクローナル抗体。成人スチル病は国の指定難病で、国内患者数は約4800人。副腎皮質ステロイドを用いた炎症の抑制が標準治療となっているが、ステロイド抵抗性やステロイド減量中に再燃することも少なくなく、その際には生物製剤のアクテムラが追加されている。なお、イラリスは現在、成人スチル病の類似疾患である全身型若年性突発性関節炎(sJIA)で承認されている。

▽①プレバイミス錠240mg、②同点滴静注240mg、③同顆粒分包20mg、④同顆粒分包120mg(レテルモビル、MSD):「同種造血幹細胞移植におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制」及び臓器移植におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制」を対象疾患に小児用量を追加する、①②は新用量医薬品、③④は新用量・剤形追加に係る医薬品。同種造血幹細胞移植におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制(小児用量)は希少疾病用医薬品に指定されている。

ヒトには存在しないサイトメガロウイルス(CMV)のDNAターミナーゼを阻害することでウイルスの増殖を抑制するCMVターミナーゼ阻害薬。同種造血幹細胞移植や臓器移植におけるCMV感染症の発症抑制は現在、成人を対象に承認されている。小児用量の追加に合わせて今回、顆粒剤も承認申請している。

【報告予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。

ダイチロナ筋注(コロナウイルス(SARS-CoV-2)RNAワクチン、第一三共):「SARS-CoV-2による感染症の予防」を対象疾患に小児用量を追加する新用量医薬品。

新型コロナウイルス感染症に対する国産mRNAワクチン。現在、接種対象者は「12歳以上の者」となっているが、今回5~11歳の小児の追加免疫に係る用量を追加する。

ウステキヌマブBS皮下注45mgシリンジ「CT」(ウステキヌマブ(遺伝子組換え)[ウステキヌマブ後続3]、セルトリオン・ヘルスケア・ジャパン):「既存治療で効果不十分な下記疾患:尋常性乾癬、乾癬性関節炎」を対象疾患とするバイオ後続品。

ステラーラ皮下注のバイオシミラー(BS)。富士製薬、陽進堂に続く3剤目となる。先発品のステラーラ皮下注の効能・効果は、▽尋常性乾癬・乾癬性関節炎、▽クローン病、▽潰瘍性大腸炎―となっているが、BSは「尋常性乾癬・乾癬性関節炎」のみ。

ライブリバント点滴静注350mg(アミバンタマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):「EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。

EGFRおよびMETを標的とする完全ヒト型二重特異性抗体。免疫担当細胞を介して抗腫瘍作用を発揮し、活性化及び抵抗性のEGFR変異、MET変異及び増幅を有する腫瘍を標的とする。今回は、この日の部会の審議予定品目である経口第3世代EGFR-TKI・ラズクルーズ錠(ラゼルチニブメシル酸塩水和物)と併用して、EGFR陽性NSCLCの1次治療に使えるようにするための効能及び用量の追加となる。

ライブリバントは24年9月にEGFRエクソン20挿入変異(EGFR Ex20ins)陽性NSCLCを対象疾患に承認されたが、限られた患者が対象となっている。今回の適応追加が承認されれば、EGFR Ex20insの患者数と比べて圧倒的に多いCommon EGFR(=EGFRの一般的な変異)の患者に対する治療選択肢となる。
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