住友ファーマ・木村社長 24年度予想を上方修正、3期ぶり最終黒字へ 「気を緩めることなく再建促進」
公開日時 2025/02/03 04:50
住友ファーマの木村徹代表取締役社長は1月31日、2025年3月期(24年度)通期連結業績予想を上方修正し、3期ぶりに営業利益及び最終利益が黒字化する見通しとなったことについて、「再建はまだ途上。気を緩めることなく、さらに再建を促進していきたい」と強調した。北米基幹3製品のうち特に進行性前立腺がん治療薬・オルゴビクスが好調に推移。日米での人員適正化・組織再編、研究開発プログラムの絞り込みといったコストマネジメントの強化なども寄与し、24年度の必達目標であるコア営業利益の黒字化だけでなく、25年度の達成目標だった最終利益の黒字化も1年前倒しで達成できる見通しになった。
◎コア営業利益を300億円に上方修正 期初予想は10億円
修正後の売上収益は3810億円で前回予想(=期初予想)から430億円引き上げた。コア営業利益は、前回予想の10億円から今回300億円に上方修正した。営業利益は、前回予想の0円から今回210億円に修正。親会社帰属当期利益は、前回予想の160億円の赤字から一転して今回160億円の黒字になると予想した。
上方修正の主な理由は、北米基幹3製品の売上拡大とコストマネジメントの効果発現となる。前回予想時より円安であることも売上収益にはプラスに働いた。
基幹3製品のひとつのオルゴビクスは、患者負担の軽減に加えてプロモーション戦略の奏効により想定以上に数量が増加し、24年度売上予想を5億1600万ドル(前回予想4億ドル)に大きく引き上げた。過活動膀胱治療薬・ジェムテサは4億1300万ドル(同3億8000万ドル)に引き上げた。
一方、子宮筋腫・子宮内膜症治療薬のマイフェンブリーは8000万ドル(同1億2400万ドル)に下方修正した。ただ、マイフェンブリーは米ファイザーとの共同開発・共同販売が終結し、1月から住友ファーマの米国子会社の単独展開となったことで利益折半がなくなり粗利は改善するとしている。
◎販管費は前年度比約3割減 研究開発費は約5割減
コスト面は、日本で約700人の人員削減を実施したことなどにより、販管費は前年度実績比で約3割減となる見通し。研究開発費は、“選択と集中”により同約5割減の計画を立てたほか、住友化学との再生・細胞医薬事業の一体運営を今年2月から始まることで更なる減少が見込まれる。同事業は住友化学が66.6%、住友ファーマが33.4%を出資する合弁会社で運営する。住友ファーマから見ると非連結化となり、持分割合に応じて研究開発費を負担することになる。
◎木村社長 「予想以上に早く結果が出てきた」も「再建はまだ途上」と引き締め
木村社長はこの日に開いた2025年3月期(24年度)第3四半期決算説明会で、24年度業績予想の上方修正について、「様々な取り組みを進めてきた中で、予想以上に早く結果が出てきたことは非常にうれしく思っている」と率直な感想を述べた。ただ、「再建はまだ途上」、「為替に助けられたところも一部ある」と気持ちを引き締めつつ、「25年度もこの勢いを失うことなく、さらに継続して拡大を進めたい」と話した。
25年度は、5月に北米で抗てんかん剤・アプティオムの特許切れ、6月に日本で2型糖尿病用配合剤・エクメットの後発品参入が見込まれている。アプティオムの23年度北米売上は340億円。木村社長は、「こういうものを乗り越えて伸ばしていく。一層しっかり取り組んでいきたい」と語った。
同社は、23年2月の北米での“ラツーダクリフ”により未曾有の危機に陥り、23年度に1330億円のコア営業損失、3150億円の純損失を計上した。北米及び日本での人員適正化・組織再編、研究開発プログラムの絞り込みといったコストマネジメントの強化や事業譲渡とともに、北米基幹3製品の早期最大化により収益改善・再成長させる計画を立て、実行している。