ファイザー・五十嵐新社長 「成果創出力に徹底的にこだわる人材組織」構築へ意欲 価値提供体制も進化
公開日時 2025/01/30 04:52
ファイザーの五十嵐啓朗新社長は1月29日、東京都内で就任会見に臨み、「成果創出力に徹底的にこだわる強いファイザーをつくりたい」と強調した。コロナ・パンデミック以降に社会浸透したAI、DX、アドバンスト・アナリティクスなどのツールを使いこなし、差別化できる人材育成を加速すると表明。社内組織についても、「時代にあった価値提供体制の進化」として、MR、オンライン顧客窓口、キーアカウントマネージャー、メディカルなどが“チーム”としてファイザーの製品価値を医療関係者や患者に訴求できる連携体制づくりに邁進するとした。一方、日本国内には合計42の開発パイプライン(申請中含む・24年11月時点)があるとし、更なる開発期間の短縮やグローバル同時申請・承認に注力する考えを明らかにした。
◎「価値を提供できるのは最後はヒトだ。だからこそファイザーはヒトに注力したい」
「コロナ禍以降、様々なテクノロジーが進化し、また、そういったものが混在する時代になった。しかしながら、これらツールを使いこなして差別化し、価値を提供できるのは最後はヒトだ。だからこそファイザーはヒトに注力したい」-。五十嵐社長は、こう強調する。続けて、「ファイザーの強みの一つは、この規模の組織でありながら、個人と組織が変化に柔軟に対応できること。また、よりダイナミックに物事を考えて行動し、実行していく。そういう力が(社内に)あると思っている」と述べ、日本法人の全従業員2800人の可能性に期待感を滲ませた。
五十嵐新社長はまた、人材や組織づくりは前・原田社長時代の路線を継承すると述べながらも、あえて「成果を出すことに徹底的にこだわる強いファイザーを作ってまいりたい」とも強調し、同社長の掲げる「業界トップ水準の組織能力を開発」の目標達成に決意を込めた。
一方で、急速に社会浸透しているAIやDXなどテクノロジーのビジネス活用については、「生成AIは様々な角度から使ってみて、ベストケースを収集して展開する態勢をグローバルでも日本でも取っている」と説明。「それぞれの立場(部門等)で当然のようにテクノロジーを活用し、それを競合優位性にしていくことがポイントになる」との見解を示した。
◎経営方針の3本柱 ①成長加速、②組織能力の開発、③開発パイプライン加速
五十嵐社長は“強いファイザー”に向けた経営方針として、①成長を徹底的に加速する、②業界トップ水準の組織能力を開発する、③開発パイプラインを加速する―との3本柱を掲げた。
グローバルにおけるファイザーの24年度業績予想は610~640億米ドル。医薬品やワクチンを通じた貢献は全世界で6億1800万人(23年)に上り、目標として27年までに年間10億人への貢献を掲げる。実現に向けて毎年平均2ケタ成長の継続が求められる中で、五十嵐社長は、「ファイザーにおける最重要国の一つとして、日本がグローバルの成長を徹底的にリードしていく」と意気込んだ。
◎プライオリティ製品へ経営資源集中 エルレフィオやコミナティ、ビンダケルなど
成長加速に向けた戦略では、優先順位が高いプライオリティ製品への経営資源の集中で「患者貢献の最大化を目指す」と説明。プライオリティ製品の例として再発・難治の多発性骨髄腫治療薬・エルレフィオ、▽新型コロナウイルスワクチン・コミナティ、▽同治療薬・パキロビット、▽沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン・プレベナー20、▽トランスサイレチン型心アミロイドーシス治療薬・ビンダケル―を挙げた。
さらに米国本社との関係では、外資系企業ながら、「日本市場を熟知した日本人社長が日本国民のためにグローバルと連携するのがファイザーの強み」と紹介。米国本社からの投資を得る上でも「日本法人が成果を出すことでグローバルから投資を得て、さらに日本に貢献するというプラスのサイクルを回していきたい」と語った。
◎開発戦略 「グローバルでも日本が不可欠な存在に」 ラグ/ロス回避へ「密に連携」
開発パイプラインの加速では、「グローバル規模の医薬品開発において、日本が必要不可欠な存在となることを目指す」と強調。さらに日本の患者を意識した試験設計や剤形追加、臨床データの提案などにも積極的に取り組むとした。
ドラッグ・ラグ/ロスへの対応においても「ラグが生じた場合も国内外で得られたデータを最大限に活用し、差を縮めるよう関係各所と連携に努めている。規制要件の国際調和にも取り組んでおり、開発早期からグローバルで密に連携し、世界同時開発・申請・承認を実現していきたい」と述べた。
五十嵐社長は東京大学卒業後、ボストン コンサルティング グループで経営コンサルタントとして勤務。バイエル薬品やバイエル米国、投資ファンドのKKRキャップストーンジャパンなどを経て、MSDでは副社長執行役員オンコロジー部門統括に就いた。ファイザーには24 年 8 月に入社し、取締役執行役員COO兼オンコロジー部門長を務めた。