武田薬品のクリストフ・ウェバー代表取締役社長CEOは１月30日に開いた決算説明会で、CEOの交代について、「早ければ26年後半にも当社の成長が見通され、新薬上市の可能性が非常に高い時期が来る」と述べ、企業として新たなフェーズに入る前の26年６月とすることを決断したと説明した。一方で、企業全体としての方向性や戦略については「現在のところ、大きな変更はない」ことも強調。「有望な後期パイプラインの開発を進め、将来の上市に向けて準備を進める。タケダの将来についてここまで高い期待をすることはない」と表明した。

同社の取締役会はこの日、クリストフ・ウェバー代表取締役社長CEOが2026年6月に退任し、後任にU.S.ビジネスユニットプレジデントのジュリー・キム氏を指名することを決議していた。

◎「新製品が次々と上市される最中にマネジメントの変更はしたくない」

ウェバーCEOは退任の時期を26年６月としたことを「良いタイミング」と話す。注意欠陥・多動性障害治療薬ビバンセの特許切れの影響の終わりが見え、その先に複数の新製品の上市が見込まれるタイミングに当たると説明。「新製品が次々と上市される最中にマネジメントの変更はしたくない。やるであればその前にやらなければいけないということ」と話した。

◎米国事業の後継者は移行期間中に選定　「社内外両方で探していきたい」　米国事業の重要性強調

後任となるジュリー・キム氏は現在U.S.ビジネスユニットプレジデントを務める。同社にとって米国は売上収益の50％を占める重要な市場であることから、後任の米国事業責任者の選定の重要性も指摘した。CEO交代の１年以上も前の発表となったが、「移行期間が設定され、その間にジュリーの後継者を見つけることができる。ジュリーの後継者が決まってリーダーシップが安定している状態でアメリカでの投資を行うことができるということ」と説明した。

米国事業の後継者が決まるまでの間はジュリー・キム氏が担当することも強調。後継者については、「社内外両方で探していきたい」と表明した。米国事業の後任が決まって以降、「段階的に本社のリーダーになっていく」と述べた。今後の戦略や方向性について「あかるい」としたうえで、「いまもビジネスリーダーとして、我々の総売上収益の50％を占める米国事業をすでに担当し、戦略に関してもしっかりサポートしてくれている。特に方向性が大きく変わるとは思っていない」と強調した。

◎取締役会の変更のタイミングとも一致

CEOの交代を予定する26年６月は取締役会の一部のメンバーが退任するタイミングと一致することにも触れ、「（CEOに就任する）ジュリーと私、両方でこの取締役の選任プロセスに積極的にかかわることができる」、「将来の取締役会と、将来のCEOがシンクロするというのは良いことではないか」との見方も示した。

◎「能力とリーダーシップの資質に絶対の信頼」

ジュリー・キム氏については、ヘルスケア業界で30年以上の経験があり、「この役割に最適な人材」と評価。「ジュリーの能力とリーダーシップの資質に絶対の信頼を寄せている。企業価値を体現しており、意思決定は患者さん第一だ。重要なのは武田薬品に対する献身が揺るがないということ。複雑なグローバル企業にふさわしい人格であることを直接目にしてきた」と述べた。

ジュリー・キム氏の拠点について問われ、「私は東京でほとんどの時間を過ごし、米・ボストンでも多くの時間を過ごしている。ジュリーも、東京とボストンの２か所にコミットしている」と話した。