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日医・松本会長 26年度診療報酬改定へ「物価・賃金上昇に対応する仕組み導入を」 期中改定要望も辞さず

公開日時 2025/01/09 05:00
日本医師会の松本吉郎会長は1月8日、定例会見に臨み、2026年度診療報酬改定に向けた議論の本格的なスタートを前に、「新たに診療報酬等について、物価・賃金の上昇に応じて、適切に対応する仕組みを導入することを求めていく」と表明した。社会・経済情勢がインフレ局面へと変化する中で、病院を中心に経営は悪化の一途をたどっている。松本会長は、「物価・賃金上昇に診療報酬改定等が追いついておらず、全国各地域で、医療・介護・福祉現場の経営が赤字に転じ、逼迫の緊急性が増してきている」と危機感を露わにした。まずは補助金での迅速な対応が重要との考えを示したうえで、「26年度診療報酬改定の前に、場合によっては期中改定も視野に入れて対応していく必要がある」と強い姿勢で議論に臨む考えを示した。

◎病院経営の厳しさに危機感 「賃上げに対応する診療報酬となっていない」

松本会長は、2025年に医療界の直面する一つの柱として、「26年度診療報酬改定に向けた議論」をあげた。これまでのデフレ基調からインフレ基調へと転換する中で、人件費に加え、食材料費、エネルギー費用などの高騰が医療機関経営に影を落としている。松本会長は、「医療界では特に病院の状況が極めて危機的な状況だ。全就業者数の13.5%を占める医療・介護従事者に対して賃上げに対応する診療報酬となってはいない」と危機感を示した。

◎予算対応も「人手不足や新たな設備投資が中断されるなど、対応はまだまだ不十分」

医療機関の窮状を踏まえ、日本医師会は昨年末に政府与党などへの要望を活発化。補正予算で、「医療・介護・障害福祉分野の生産性向上・職場環境改善等による更なる賃上げ等の支援」として1892億円を確保するなど対応がなされた。松本会長は、「一定の評価をしている」としたうえで、「人手不足や新たな設備投資が中断に追い込まれるなど、対応はまだまだ不十分」と強調。「賃上げと物価高騰、さらには日進月歩する技術革新への対応には十分な原資が必要であり、補助金や診療報酬により機動的な対応も行わなければならない」と訴えた。

◎現行の診療報酬改定は「賃金・物価動向反映するはっきりした方程式がない」

具体的には、「本年は新たに診療報酬等について物価・賃金の上昇に応じて、適切に対応する仕組みを導入することを求めてまいりたい」と表明。医療機関経営がひっ迫する中で、「まずは補助金での迅速な対応を求めることになるが、26年度診療報酬改定の前に、場合によっては期中改定も視野に入れて対応していく必要があると考えている」と述べた。

現行の診療報酬体系について松本会長は、「賃金・物価動向に対し、診療報酬がどう対応できているかというのは非常に難しい問題だ」と述べたうえで、賃金・物価動向を反映する「はっきりした方程式がない」ことを問題視した。

診療報酬改定は、医療経済実態調査による医療機関経営の状況を踏まえて行われるが、「物価・賃金上昇分をどの程度数式として入れ込むかということは、過去の改定で行われていない」として、医療経済実態調査で把握できる範囲に課題があることも指摘。「デフレ下の診療報酬改定であれば、物価・賃金上昇に対する配慮は影響が少ないと見てもいいのかもしれないが、現況ではそうなっていない。(社会保障費の伸び抑制の)目安対応にとらわれないような、物価高騰、賃金上昇に対する手当を診療報酬改定の考え方の中に入れ込むことは極めて重要だと思っている」と主張した。

◎社会保障費 税収伸びに基づく財政フレーム見直し求める 骨太方針へ「別次元の対応を働きかける」

社会保障費の考え方についても言及した。政府は、社会保障費の伸びを高齢化による伸びに相当する範囲内に抑制することを方針としてきた。松本会長は、「税収の伸びに基づく財政フレームの見直しを行い、高齢化の伸びの範囲内に抑制するとの取り扱いを廃止し、物価・賃金の上昇を踏まえた仕組みへと改める必要がある」と指摘。「医療・介護業界でも他産業並みの賃上げができるよう、骨太の方針に向けて、引き続き別次元の対応を働きかける」と強調した。松本会長は、「例えば、今後税収が減ったからといってプライマリーバランスを均衡させるために、医療を含む社会保障費で帳尻を合わせていくようなことがあってはならない。地域の医療に影響が出ないようにしていただきたい」と牽制した。

骨太方針2024では、「経済・ 物価動向等を踏まえた対応を行いつつ、歳出の目安に沿った予算編成を継続する」と明記されている。松本会長は、「それをさらに進め、物価や賃金上昇に応じた診療報酬体系にもっていくというような文言を入れていきたい」とも述べた。

◎今夏の参院選は「医療の未来を左右する重要な選挙」 医療現場の声を国政に

松本会長は、2025年の柱として、7月に予定される参院選をあげた。政局が不安定な中で、「今夏に予定される参院選は、医療の未来を左右する重要な選挙であると考えている」と表明。「医療現場の声を国政に的確に届けていくことが必要だ」と強調した。日本医師連盟の組織内候補として、釜萢敏日医副会長を擁立することが決まっている。松本会長は、釜萢氏について医師会業務に精通し、地域医療の抱える課題に取り組んでいるだけでなく、幅広い人脈を有しているとして、「余人をもって代え難い存在」と評した。



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