住友ファーマの木村徹代表取締役社長は10月30日の2024年度第2四半期決算説明会で、早期退職者募集により国内MR数が4割強減少することについて、「コール数が低下することはやむを得ない。下期の国内収益もある程度低下する」との認識を示した。MR数は現在の約770人が12月から約450人になる。それでも全国カバーを実現するため12月以降、疾患領域制からエリア制に変更するほか、人員減の影響を最小化するため顧客ニーズに合った情報提供活動をより推進する。木村社長は、「非常に熱心で優秀な方が残ってくれた。領域が広がるため難しい面もあるが、どの薬剤に対してもしっかり情報提供できると期待している」と述べた。
◎一般MRとCNS専任MRがエリア担当MRに レアディジーズ領域専任MRは存続
住友ファーマのMRは現在、一般MR、CNS専任MR、レアディジーズ領域専任MRで構成している。12月以降、一般MRとCNS専任MRはエリア担当のMRとなり、現在のCNS専任MRも糖尿病治療薬などを扱う一方、一般MRはCNS領域の製品を扱うようにする。木村社長は「守備範囲を固定して、その地区は1人のMRが担当する」ようなイメージになるとし、「(エリア制により)コール数が人数ほど落ちないようにしたい」と強調した。
なお、同社によると、イズカーゴなどを担当するレアディジーズ領域専任MRは12月以降も存続するが、現在の約20人体制が何人体制になるかは不明だとしている。
◎本部機能など再編 支店は12から7に、営業所は約50拠点に
継続的に利益が確保できる国内営業体制とするため、エリア制への変更のほか、本部機能や支店の再編なども行う。12月以降、19部門は10部門とし、営業拠点は現在の12支店から7支店に再編。営業所数も約50とする。営業本部の人員数は現在の約1050人が約620人にスリム化し、うちMR数は同約770人が約450人になる。
木村社長は、「営業本部は国内事業の根幹だが、リストラで組織はスリムになった」とし、「本部機能及び支店を再編し、効率的な組織により、生産性を向上させたい」と述べた。
◎早期退職応募者604人に自然減を加えると約700人削減 計画を「十分達成できた」
今回の早期退職者募集は、24年度のコア営業利益の黒字化に向けた事業構造改革の一環として実施したもので、7月31日に発表されている。対象者は24年11月30日時点で 40 歳以上かつ勤続5年以上の社員(一部の社員を除く)。募集期間は9月17日から10月11日。退職日は11月30日。最終的な応募者数は604人で、当初の募集人員約700人を100人ほど下回った。
木村社長は説明会で、当初の募集人数の約700人は定年退職などの自然減も念頭に置いた人数だったとし、早期退職の応募者604人に自然減を加えると、約700人の減員(9月末2704人→12月1日時点で約2000人)になると説明した。このため当初の人員削減計画は「十分達成できた」と強調。早期退職者の再募集は「全く考えていない」と述べた。
日本で約700人の人員削減を行う目的には、今年6月にトレリーフ、12月にエクア、25年6月にエクメットに後発品が参入するといった非常に厳しい国内事業環境でも、日本セグメントとして赤字にならず、継続的に収益確保できる体制に見直すとの側面もある。今回の人員削減により25年度に約100億円の人件費の圧縮につながる見通しで、25年度の国内事業黒字化のメドも立ったとみられる。
◎R&D本部 リサーチ、開発、技術研究を1本部に統合 「今まで以上に生産性を出したい」
なお、R&D本部は12月以降、▽リサーチディビジョン、▽開発本部、▽技術研究本部――の3本部を一つに統合し、リーンな組織により、研究から開発、上市までを一気通貫したR&D活動を行うように再編する方針だ。3本部17部門は1本部15部門になり、R&D本部の人員数は約560人が約440人になる。木村社長は、「組織はスリムになるが、一体運営により、今まで以上に生産性を出していきたい」と述べた。
◎コア営業損失 24年度上期に3800万円にまで大幅改善 前年同期は658億円
23年2月の米国での“ラツーダクリフ”により未曾有の危機にある住友ファーマは、23年度に1330億円のコア営業損失、3150億円の純損失を計上した。24年度はコア営業利益の黒字化が必達目標で、期初計画では「コア営業利益10億円」を目標に掲げた。これはコア営業利益を前年度比で1340億円伸ばすことを意味する。
住友ファーマは、北米及び日本での人員適正化・組織再編、研究開発プログラムの絞り込みといったコストマネジメントの強化、事業譲渡とともに、北米基幹3製品(オルゴビクス、マイフェンブリー、ジェムテサ)の早期最大化により収益改善・再成長させる計画を立てた。結果、24年度上期に3800万円のコア営業損失にまで収益が大幅に改善した。前年同期は658億円のコア営業損失だった。
24年度上期は、販管費は前年同期比353億円減の834億円、研究開発費は同202億円減の251億円とほぼ計画通り削減させた一方、北米基幹3製品の売上が同309億円増の1042億円と計画を上回る伸長をみせ、収益改善に大きく寄与した。特に経口前立腺がん治療薬・オルゴビクスが好調で、24年度上期売上は2億3200万ドルと期初計画の1億8400万ドルを大きく上回った。
◎24年度目標の”コア営業利益10億円”を上回る可能性も
さらに、24年度のコア営業利益の黒字化に向け、期初に200億円の事業譲渡益も見込んでいたが、上期に事業譲渡益は含まれていないという。木村社長は「交渉中の事業譲渡等の複数案件がある」と明かし、24年度のコア営業利益10億円の目標達成だけでなく、大幅に目標額を上回る可能性も出てきた。木村社長は、「何とかここまで到達した」とし、事業譲渡案件の成否・規模によっては「収益が大きく変動する可能性」があるとした。
◎国内売上9.8%減 後発品参入のトレリーフが72%減収
24年度上期の連結業績は、売上は前年同期比18.4%増の1807億4900万円、コア営業損失3800万円、営業損失81億7900万円、親会社帰属純損失322億2900万円――だった。
国内売上は9.8%減の528億円だった。非定型抗精神病薬・ラツーダ、2型糖尿病薬・ツイミーグなどが堅調に伸長する一方、6月に後発品が参入した抗パーキンソン病薬・トレリーフが72%減の24億円と大幅減となったことや、5%台半ばの薬価改定影響により減収となった。コアセグメント損益は6.5%増の63億円で、減収により売上総利益は減少したが、コスト削減を進めたことによる販管費の減少影響が大きく、増益となった。
◎24年度申請予定のパーキンソン病対象の再生・細胞医療プログラム 「申請目標を再検討中」
木村社長は説明会で、24年度中の国内申請及び条件期限付き承認の取得を目指していたパーキンソン病を対象疾患とする他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞(開発コード:DSP-1083)について、「PMDAとの協議を踏まえて申請目標を再検討中」と述べ、計画よりも開発が遅れるとの見通しを明らかにした。
京都大学による医師主導治験データをもとに申請する計画で、臨床試験データは7例だという。木村社長は、PMDAとの協議内容の詳細は明かさなかったが、「議論のポイントはいくつかある。条件期限付き承認を想定したとして、本承認を取得するためにどうしたら良いかといったことをPMDAは非常に考えている」と述べた。
【連結業績(前期比) 24年度予想】
売上高 1807億4900万円(18.4%増) 3380億円(7.5%増)
コア営業利益 ▲3800万円(-) 10億円(-)
営業利益 ▲81億7900万円(-) 0億円(-)
親会社帰属純利益 ▲322億2900万円(-) ▲160億円(-)
【国内主要製品売上高(前年同期実績) 24年度予想、億円】
エクア・エクメット 142(158) 263
ラツーダ 67(57) 130
ツイミーグ 36(26) 113
メトグルコ 38(37) 74
ロナセンテープ 23(18) 44
トレリーフ 24(85) 21
オーソライズドジェネリック品 56(46) 111