薬食審 9月6日に第二部会 新薬8製品を審議 アステラス製薬の尿路上皮がん治療薬など
公開日時 2021/08/23 20:45
厚生労働省の薬食審医薬品第二部会が9月6日に開催される。審議品目は、アステラス製薬が承認申請した尿路上皮がんに用いる抗体薬物複合体のパドセブ点滴静注用(一般名:エンホルツマブ ベドチン)や、大原薬品が申請したメトトレキサート排泄遅延時の解毒に用いるメグルダーゼ静注用(グルカルピダーゼ)など8品目。部会で承認が了承された場合、9月中に正式承認されるとみられる。
【審議予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽サイバインコ錠50mg、同錠100mg、同錠200mg(アブロシチニブ、ファイザー):「アトピー性皮膚炎」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
ヤヌスキナーゼ(JAK)1を阻害する低分子化合物。JAK1が阻害されることにより、病態生理学的にアトピー性皮膚炎に関与するとされるインターロイキン(IL)-4、IL-13、IL-31、IL-22、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)を含む複数のサイトカイン・シグナルが抑制されると考えられている。同剤が承認されれば、経口JAK阻害薬としてオルミエント、リンヴォックに続く3剤目となる。
▽サフネロー点滴静注300mg(アニフロルマブ(遺伝子組み換え)、アストラゼネカ):「全身性エリテマトーデス」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
Ⅰ型インターフェロン受容体のサブユニット1に結合する完全ヒト型モノクローナル抗体(抗Ⅰ型インターフェロン受容体抗体)で、Ⅰ型インターフェロンの活動を阻害する。全身性エリテマトーデス(SLE)は、免疫系が自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまう自己免疫疾患。
▽リツキサン点滴静注100mg、同点滴静注500mg(リツキシマブ(遺伝子組み換え)、全薬工業):「全身性強皮症」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。
全身性強皮症は皮膚や内臓が固くなる変化(線維化)を特徴とする自己免疫疾患。同剤は20年3月に、全身性強皮症を予定される効能・効果として希少疾病用医薬品に指定されている。
▽タブネオスカプセル10mg(アバコパン、キッセイ薬品):「多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
補体C5a受容体阻害薬。多発血管炎や多発血管炎性肉芽腫症は、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎に分類される。同剤は、ANCA関連血管炎に対し、補体 C5a受容体を阻害して抗炎症作用を発揮する。
▽ライアットMIBG-I131静注(3-ヨードベンジルグアニジン、富士フイルム富山化学):「褐色細胞腫・パラガングリオーマ」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
副腎髄質ホルモンのノルアドレナリンの類似物質であるメタヨードベンジルグアニジンに放射性ヨウ素(131I)を結合させた治療法放射性医薬品。ノルアドレナリンと同様のメカニズムで褐色細胞腫・パラガングリオーマに取り込まれ、放出されるβ線によって腫瘍細胞を傷害し、治療効果を発揮する。
▽オプジーボ点滴静注20mg、同100mg、同120mg、同240mg(ニボルマブ(遺伝子組み換え)、小野薬品):「古典的ホジキンリンパ腫」を対象疾患とする新用量医薬品。希少疾病用医薬品。
今回、古典的ホジキンリンパ腫の小児適応の追加を審議する。成人に対しては16年12月に承認されている。
▽パドセブ点滴静注30mg(エンホルツマブ ベドチン(遺伝子組み換え)、アステラス製薬):「尿路上皮がん」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。優先審査品目。
尿路上皮がんで高発現しているタンパクであるネクチン-4を標的とする抗体薬物複合体(ADC)。治療歴のある尿路上皮がんを対象とした第3相EV-301試験、第2相EV-201試験の結果に基づき21年3月に承認申請され、厚労省から優先審査に指定された。
▽メグルダーゼ静注用1000(グルカルピダーゼ(遺伝子組み換え)、大原薬品):「メトトレキサート排泄遅延時の解毒」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
Variovorax paradoxus(Pseudomonas sp. RS16)株由来のグルタミン酸カルボキシペプチダーゼで、390個のアミノ酸残基からなるサブユニット2個から構成される分子量約 83kDaのタンパク質。葉酸アナログであるメトトレキサート(MTX)のカルボキシ末端のグルタミン酸残基を加水分解し、DAMPA (4-deoxy-4-amino-N10-methylpteroic acid)及びグルタミン酸を生成する。
急性リンパ性白血病や悪性リンパ腫などに対するMTXの大量療法は重要な化学療法のひとつだが、副作用としてMTXの結晶が尿細管に沈着することで腎機能障害を起こし、MTXの排泄遅延によるMTX中毒が生じることがある。MTX中毒の結果、様々な臓器が高濃度のMTXに長期間暴露され、組織障害が生じる可能性がある。
MTX中毒の予防法として、体内中のMTXを排出することを目的とした支持療法(大量補液、尿アルカリ化及び利尿剤の投与)及び毒性軽減を目的としたロイコボリン救援療法が行われる。しかし、これらの予防的処置を行なっても稀に致命的な転帰をたどる場合がある。
【報告予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽ノクサフィル錠100mg、同点滴静注300mg(ポサコナゾール、MSD):「侵襲性アスペルギルス症」を対象疾患とする新効能医薬品。深在性真菌症治療薬。