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厚労省 新有効成分16製品を承認 HR陽性/HER2陰性乳がんで抗TROP2 ADC・ダトロウェイなど

公開日時 2024/12/27 17:01
厚生労働省は12月27日、新有効成分含有医薬品16製品を承認した。この中には第一三共のHR陽性/HER2陰性乳がんに対するTROP2を標的とした抗体薬物複合体(ADC)・ダトロウェイ点滴静注用(一般名:ダトポタマブデルクステカン)や参天製薬の近視進行抑制薬・リジュセアミニ点眼液(アトロピン硫酸塩水和物)、バイオジェン・ジャパンの希少なSOD1遺伝子変異を有する成人の筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬・クアルソディ髄注(トフェルセン)などがある。

また、国内初のエムポックス(サル痘)治療薬となる日本バイオテクノファーマのテポックスカプセル(テコビリマト水和物)も承認された。

承認された新有効成分含有医薬品は次の通り(カッコ内は一般名、製造販売元)。薬効分類及び投与経路順に記載。

ゼポジアカプセル0.92mg、同カプセルスターターパック(オザニモド塩酸塩、ブリストル・マイヤーズ スクイブ):「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。薬効分類239。

経口のスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体調節剤。S1P受容体1および5に高親和性で結合し、リンパ球遊走の上流で作用する、潰瘍性大腸炎(UC)に対する新規作用機序を有する。リンパ球を末梢リンパ組織内に保持することで、リンパ球の体内循環を制御し、病巣へのリンパ球の浸潤を阻害する。

用法・用量は、「通常、成人にはオザニモドとして1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mg、8日目以降は0.92mgを1日1回経口投与する」。

バルバーサ錠3mg、同錠4mg、同錠5mg(エルダフィチニブ、ヤンセンファーマ):「がん薬物療法後に増悪したFGFR3遺伝子変異又は融合遺伝子を有する根治切除不能な尿路上皮がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。薬効分類429。

線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)チロシンキナーゼ阻害薬。用法・用量は「通常、成人には1日1回8mgを2週間経口投与し、それ以降は1日1回9mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する」。

既承認のFGFR阻害薬には、ペマジール(ペミガチニブ)、リトゴビ(フチバチニブ)、タスフィゴ(タスルグラチニブコハク酸塩)があるが、現在、尿路上皮がんの適応は持っていない。

ブルキンザカプセル80mg(ザヌブルチニブ、BeiGene Japan):「慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)および原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞リンパ腫」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。薬効分類429。

ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬。①慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)②原発性マクログロブリン血症(WM)及びリンパ形質細胞リンパ腫(LPL)――に対して、1次治療から使用できる。用法・用量は「通常、成人には1回160mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する」。

中国BeiGene(ベイジーン)にとって、日本進出の第1号製品となる。

なお、既承認のBTK阻害薬のうち、イムブルビカ(イブルチニブ)とカルケンス(アカラブルチニブ)がCLL/SLLの適応を持つ。日本血液学会の造血器腫瘍診療ガイドライン(GL)では現在、CLL初回治療としてイムブルビカもしくはアカラブルチニブ±オビヌツズマブ療法が推奨されている。

WMは、骨髄浸潤とIgMタンパク血症を伴うLPLのサブセットとして定義され、LPLの90~95%を占める。既承認のBTK阻害薬のうち、イムブルビカとベレキシブル(チラブルチニブ塩酸塩)がWM及びLPLの適応を持つ。同GLでは現在、未治療症候性WMの初回治療として、チラブルチニブやリツキシマブ+イブルチニブなどが推奨されている。

カルケンス錠100mg(アカラブルチニブマレイン酸塩水和物、アストラゼネカ):「慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は残余期間(2029年1月21日まで)。薬効分類429。

現在承認されているカルケンスはカプセル剤であり、一般名は「アカラブルチニブ」。今回報告されたのは一般名が「アカラブルチニブマレイン酸塩水和物」と塩違いのものであり、錠剤となっている。今回、カプセル剤から効能・効果等の追加があるわけではない。

テポックスカプセル200mg(テコビリマト水和物、日本バイオテクノファーマ):「痘そう、エムポックス、牛痘、痘そうワクチン接種後のワクチニアウイルスの増殖による合併症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。薬効分類625。

ウイルス由来p37蛋白を標的としてエンベロープ形成を阻害する。国内初のエムポックス治療薬。用法・用量は「通常、成人及び小児には14日間、食後に経口投与する」。

痘そう、エムポックスなど感染症危機に対応するもの。厚労省のホームページによると、国内のエムポックス患者数は、22年7月に1例目が報告されて以降、累計で252例の症例が確認されている(24年12月6日更新)。

海外では、米国で18年7月に、痘そうに対してAnimal rule に基づき承認され、欧州で22年1月に、痘そう、エムポックス、牛痘及び痘そうワクチン接種後のワクチニアウイルスの増殖による合併症の治療に対する承認(Exceptional Circumstances Authorization)が得られている。

クアルソディ髄注100mg(トフェルセン、バイオジェン・ジャパン):「SOD1遺伝子変異を有する筋萎縮性側索硬化症における機能障害の進行抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類119。

アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)。希少なスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)タンパク質の生成を抑制するために、SOD1mRNAに結合するように設計されている。ALSの中のSOD1遺伝子変異を有するSOD1-ALSに対し、遺伝的原因を標的とする国内初の治療薬。

用法・用量は、「通常、成人には、トフェルセンとして1回100mgを1~3分かけて髄腔内投与する。初回、2週後、4週後に投与し、以降4週間隔で投与する」。

ALSは、随意筋の運動をコントロールする脳と脊髄における運動ニューロンの喪失をもたらす希少かつ進行性で死に至る神経変性疾患。厚労省は、ALS患者のうちSOD1遺伝子変異陽性は2%程度と説明している。

ダトロウェイ点滴静注用100mg(ダトポタマブデルクステカン(遺伝子組換え)、第一三共):「化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。薬効分類429。

抗TROP2抗体薬物複合体(ADC)。第一三共はHR陽性HER2陰性の転移性乳がんに係る2次/3次治療で承認申請していた。用法・用量は「通常、成人には1回6mg/kg(体重)を90分かけて3週間間隔で点滴静注する。初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。なお、患者の状態により適宜減量する」。

抗TROP2 ADCとして、ギリアド・サイエンシズのトロデルビ点滴静注用が24年9月に承認、11月に発売されている。その適応はトリプルネガティブ乳がん(HR陰性HER2陰性)となっており、ダトロウェイとは異なる。

イムデトラ点滴静注用1mg、同10mg(タルラタマブ(遺伝子組換え)、アムジェン):「がん化学療法後に増悪した小細胞肺がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類429。

抗デルタ様リガンド3(DLL3)/CD3二重特異性抗体。約85%~96%の患者はSCLC細胞の表面にDLL3を発現しており、正常細胞での発現はごくわずかであることから、DLL3はSCLC患者にとって有望な治療標的とされているという。

ルンスミオ点滴静注1mg、同30mg(モスネツズマブ(遺伝子組換え)、中外製薬):「再発又は難治性の濾胞性リンパ腫」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。薬効分類429。

抗CD20/CD3二重特異性抗体。中外製薬は2レジメン以上の全身療法を受けたことがある再発・難治性の濾胞性リンパ腫(FL)で承認申請していた。FLに対する二重特異性抗体の承認は国内初となる。

テクベイリ皮下注153mg、同皮下注30mg(テクリスタマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):「再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類429。

抗BCMA/CD3二重特異性抗体。国内では、抗BCMA/CD3二重特異性抗体として、ファイザーのエルレフィオ皮下注が再発・難治性MMの適応で24年3月に承認、5月に発売されており、テクベイリは2番手となる。

タウヴィッド静注(フロルタウシピル(18F)、PDRファーマ):「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症患者におけるドナネマブ(遺伝子組換え)の適切な投与の補助」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。薬効分類430。

放射性診断薬。PET(陽電子放出断層撮影)を用いて、アルツハイマー病(AD)に関連する脳内の異常蓄積タウタンパク質による神経原線維変化を可視化する。用法・用量は、「フロルタウシピル(18F)として370MBqを静脈内投与し、投与約80分後から撮像を開始する。撮像時間は20分間とする」。

カビゲイル注射液300mg(シパビバルト(遺伝子組換え)、アストラゼネカ):「SARS-CoV-2による感染症の発症抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。薬効分類625。

COVID-19に対する長時間作用型モノクローナル抗体。投与対象について厚労省の担当者は「基本的にはコロナのワクチン接種に不適応の方、例えば免疫不全の方などが対象になると想定している」と説明している。

用法・用量は「通常、成人及び12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、300mgを大腿前外側部に筋肉内注射する。なお、筋肉内注射が困難又は適切ではない場合、静脈内注射すること」。

エフルエルダ筋注(インフルエンザウイルス(A型・B型)HA画分、サノフィ):「インフルエンザの予防」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。薬効分類631。

高用量インフルエンザHAワクチン。高齢者では、健康な若年成人と比較して標準用量インフルワクチンに対する免疫応答が十分ではない。そこで、標準用量の約4倍の抗原量を含むワクチンが開発された。用法・用量は「60歳以上の者に1回、0.7mLを筋肉内接種する」。厚労省は、「高齢者に打ったときに、通常のワクチンより免疫が付きやすく、海外の臨床試験では、多少予防効果も高くなっている」としている。

ハイキュービア10%皮下注セット5g/50mL、同10g/100mL、同20g/200mL(pH4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注)/ボルヒアルロニダーゼアルファ(遺伝子組換え)、武田薬品):「無又は低ガンマグロブリン血症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は残余(2031年9月24日まで)。薬効分類634。

ボルヒアルロニダーゼを皮下投与した後、約10分以内に同じ部位へ人免疫グロブリンGを皮下投与する。これにより、人免疫グロブリンGの拡散と吸収が促進され、大量投与が可能になる。大量投与により投与頻度が従来の皮下注製剤に比べて少ない3週間に1回又は4週間に1回となり、患者の負担軽減が期待される。

武田薬品が23年9月に承認を取得、24年1月に発売した無又は低ガンマグロブリン血症治療薬・キュービトル20%皮下注(pH4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注))の投与頻度は、週1回(通常)又2週間に1回となっている。

ヒムペブジ皮下注150mgペン(マルスタシマブ(遺伝子組換え)、ファイザー):「血液凝固第VIII因子または第IX因子に対するインヒビターを保有しない先天性血友病患者における出血傾向の抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。薬効分類634。

抗TFPI抗体。今回、インヒビター非保有の血友病AまたはBの効能・効果を取得する。用法・用量は「通常、12歳以上かつ体重35kg以上の患者には、初回に300mgを皮下投与し、以降は1週間隔で1回150mgを皮下投与する。なお、体重50kg以上で効果不十分な場合には、1週間隔で1回300mgに増量して皮下投与できる」となっている。

抗TFPI抗体として、ノボノルディスクファーマのアレモ皮下注がインヒビターの有無によらず血友病AまたはBの適応を持っている。維持用量は1日1回皮下投与となっている。

リジュセアミニ点眼液0.025%(アトロピン硫酸塩水和物、参天製薬):「近視の進行抑制」を効能・効果とする新効能・新剤形医薬品。再審査期間は4年。薬効分類131。

低濃度のアトロピン製剤であり、非選択的ムスカリン受容体拮抗薬。承認されると国内初の近視の進行抑制を効能・効果とする治療薬となる。用法・用量は「通常、1回1滴、1日1回就寝前に点眼する」。厚労省の担当官によると、投与対象は基本的には小児となる。

近視は、眼軸長が長くなり、目の中に入った光線のピントが合う位置が網膜より前にある状態だが、本剤により、眼軸の伸長を抑制し、近視の進行抑制が期待されている。参天製薬は決算説明会などで、薬価がつかない自由診療での販売展開を予定していると説明している。

なお、同日付で承認された適応追加等の記事はこちら
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