AZ・堀井社長 治験アプリ「Unify」活用したDCTに挑戦 12治験で現在準備中 「患者中心」実現へ
公開日時 2025/01/14 04:52
アストラゼネカは、独自開発した治験アプリ「Unify」(ユニファイ)を活用したDCT(分散型治験)に取り組んでいる。2020年にグローバルで開発されたもので、日本でも2021年に一部の治験に試験的に取り入れた。包括的な機能導入は2024年から。現在準備中も含め12の治験でUnifyの活用が決まっている。堀井貴史代表取締役社長は本誌インタビューに対し、「あらゆる機会でDCTにチャレンジしたい」と強調。「難しい病気で苦しんでいる患者さんのニーズや喜んでいただけることを我々はもっと考えなくてはならない。企業側のメリットより、患者中心の仕事のやり方をどうやって実現していくかが重要となる」と述べた。
堀井社長へのインタビューの一問一答はMonthlyミクス1月号に掲載しています。(記事はこちらから)
治験アプリ「Unify」(ユニファイ)は、疾患や臨床試験に関する情報提供や服薬タイミングでの通知をアプリで行うところからグローバルでの開発がスタートした。2024年からは、治験の検査データを遠隔で収集したり、配送システムを使って治験薬を被験者の手元に届けるなどの機能を追加拡大している。その意味では、治験にかかる様々なプロセスやステージを包括的にサポートするソリューションとして使い始めたところだ。
◎国際共同治験 日本のみならず米国、ブラジル、中国でも同じアプリを使えることが大事
日本では、現在準備中も含め12の治験で、Unifyを活用することが決まっている。堀井社長は活用事例について、「COPDを対象とした治験で、治験期間が15%程度短縮できた。欠損データが約5%減少した。DCTによって品質の高いデータがしっかり担保され、収集できるようになると見込んでいる」と語り、DCTへの期待感を表明した。また、「我々は国際共同治験を進めているので、日本のみならず米国、ブラジル、中国でも同じアプリを使えることが大事だ。そういった意味でマルチ言語対応したアプリであることが必要で、DCTを活用した同意書の取得機能などは、こうした取り組みを推進する上で重要になるだろう」と見通した。
◎「患者さんがいち早く治験に入ることで、治験に要する時間を短縮することもできる」
堀井社長は、「AZは“ヘルスエクイティ”という表現を用いながら、どこに患者さんがいても治験に参加できる機会をつくり、企業から支援する取り組みを行っている。これにより患者さんにとって治験に参加しやすくなるメリットがあるし、製薬会社にとっては、患者さんがいち早く治験に入ることで、治験に要する時間を短縮することもできる」と指摘した。
また、「我々は常に、“人”と“社会”と“地球”の三つの健康の実現にむけて頑張る会社だといつも言っている。この中でDCTというのは、デジタルを使って結果的に患者さんが、治験のために通院する期間や時間、交通手段など、あらゆるプロセスを簡素化することを支援している。このプロセスを通じて、最終的には脱炭素化やサステナビリティにも貢献できると考えている」と意欲を示した。
◎101の国内開発パイプライン 6割が後期開発品・承認申請済み
同社は、開発パイプラインの数で圧倒的な強さを誇っている。堀井社長は、「2024年9月30日時点で101の開発パイプラインがある」と明かしてくれた。内訳は、がん領域が63製品、がん領域以外のバイオファーマ(循環器・腎・代謝疾患、呼吸器・免疫疾患)は38製品ある。開発パイプライン101のうち、6割の製品が第3相臨床試験もしくは既に承認申請済み。堀井社長は、「今後3~5年の間に沢山の新薬を日本の患者さんにお届けする機会があると期待している」と述べた。
◎「がんに関しては日本市場で売上ナンバー1になった」
一方で注目の開発品について堀井社長は、「一番はがんだと思っている。がんに関しては日本市場で売上ナンバー1になった。ここは引き続き注力領域として開発していきたい」と強調した。