HR陽性/HER2陰性乳がんで抗TROP2 ADC・ダトロウェイなど新薬10製品承認へ 薬事審第二部会が了承
公開日時 2024/12/09 04:49
厚生労働省の薬事審議会・医薬品第二部会は12月6日、第一三共のHR陽性/HER2陰性乳がんに対するTROP2を標的とした抗体薬物複合体(ADC)・ダトロウェイ点滴静注用(Dato-DXd)など新薬10製品の承認の可否を審議し、承認を了承した。
この中には、濾胞性リンパ腫(FL)や多発性骨髄腫(MM)、小細胞肺がん(SCLC)のそれぞれに対する二重特異性抗体が含まれる。また、国内初のエムポックス(サル痘)治療薬となる日本バイオテクノファーマのテポックスカプセルもある。
報告品目は4製品で、小野薬品のオプジーボの尿路上皮がん(1次治療)の追加や、MSDのキイトルーダの子宮体がん(1次治療)の追加などの承認を了承した。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽エフルエルダ筋注(インフルエンザウイルス(A型・B型)HA画分、サノフィ):「インフルエンザの予防」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
高用量インフルエンザHAワクチン。高齢者では、健康な若年成人と比較して標準用量インフルワクチンに対する免疫応答が十分ではない。そこで、標準用量の約4倍の抗原量を含むワクチンが開発された。厚労省では「高齢者に打ったときに、通常のワクチンより免疫が付きやすく、海外の臨床試験では、多少予防効果も高くなっている」としている。
用法・用量は「60歳以上の者に1回、0.7mLを筋肉内接種する」。海外では、24年9月時点で、米国、欧州を含む30以上の国又は地域で承認されている。
▽ハイキュービア10%皮下注セット5g/50mL、同10g/100mL、同20g/200mL(pH4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注)/ボルヒアルロニダーゼアルファ(遺伝子組換え)、武田薬品):「無又は低ガンマグロブリン血症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は残余(2031年9月24日まで)。
ボルヒアルロニダーゼを皮下投与した後、約10分以内に同じ部位へ人免疫グロブリンGを皮下投与する。これにより、人免疫グロブリンGの拡散と吸収が促進され、大量投与が可能になる。大量投与により投与頻度が従来の皮下注製剤に比べて少ない3週間に1回又は4週間に1回となり、患者の負担軽減が期待される。
武田薬品が23年9月に承認を取得、24年1月に発売した無又は低ガンマグロブリン血症治療薬・キュービトル20%皮下注(pH4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注))の投与頻度は、週1回(通常)又2週間に1回となっている。
海外では、13年に欧州で、14年に米国で承認されて以降、24年5月現在、40以上の国又は地域で承認されている。
▽ヒムペブジ皮下注150mgペン(マルスタシマブ(遺伝子組換え)、ファイザー):「血液凝固第VIII因子または第IX因子に対するインヒビターを保有しない先天性血友病患者における出血傾向の抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
抗TFPI抗体。今回、インヒビター非保有の血友病AまたはBの効能・効果を取得する。用法・用量は「通常、12歳以上かつ体重35kg以上の患者には、初回に300mgを皮下投与し、以降は1週間隔で1回150mgを皮下投与する。なお、体重50kg以上で効果不十分な場合には、1週間隔で1回300mgに増量して皮下投与できる」となっている。
海外では、24年9月現在、承認されている国又は地域はない。
国内では、抗TFPI抗体として、ノボノルディスクファーマのアレモ皮下注がインヒビターの有無によらず血友病AまたはBの適応を持っている。維持用量は1日1回皮下投与となっている。
▽①ファセンラ皮下注30mgシリンジ、②同皮下注30mgペン(ベンラリズマブ(遺伝子組換え)、アストラゼネカ):「既存治療で効果不十分な好酸球性多発血管炎性肉芽腫症」を効能・効果とする①新効能・新用量医薬品、②新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。再審査期間は4年。
抗IL-5受容体α抗体。現在、気管支喘息の適応を持っており、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)が、2つ目の適応となる。用法・用量は「通常、成人には1回30mgを4週間隔で皮下に注射する」。
海外では、24年10月現在、EGPAに係る効能・効果で米国において承認されている。
国内では、抗IL-5抗体のヌーカラ皮下注などがEGPAの適応を持っている。
▽テポックスカプセル200mg(テコビリマト水和物、日本バイオテクノファーマ):「痘そう、エムポックス、牛痘、痘そうワクチン接種後のワクチニアウイルスの増殖による合併症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
ウイルス由来p37蛋白を標的としてエンベロープ形成を阻害する。痘そう、エムポックスなど感染症危機に対応するもので、備蓄について検討されているという。厚労省のホームページによると、国内のエムポックス患者数は、22年7月に1例目が報告されて以降、累計で252例の症例が確認されている(24年12月6日更新)。
用法・用量は「通常、成人及び小児には14日間、食後に経口投与する」。海外では、米国で18年7月に、痘そうに対してAnimal rule に基づき承認され、欧州で22年1月に、痘そう、エムポックス、牛痘及び痘そうワクチン接種後のワクチニアウイルスの増殖による合併症の治療に対する承認(Exceptional Circumstances Authorization)が得られている。
▽カビゲイル注射液300mg(シパビバルト(遺伝子組換え)、アストラゼネカ):「SARS-CoV-2による感染症の発症抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
COVID-19に対する長時間作用型モノクローナル抗体。投与対象について厚労省の担当者は「基本的にはコロナのワクチン接種に不適応の方、例えば免疫不全の方などが対象になると想定している」と説明している。
用法・用量は「通常、成人及び12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、300mgを大腿前外側部に筋肉内注射する。なお、筋肉内注射が困難又は適切ではない場合、静脈内注射すること」。
海外では、24年10月現在、承認されている国又は地域はない。
▽ダトロウェイ点滴静注用100mg(ダトポタマブデルクステカン(遺伝子組換え)、第一三共):「化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
抗TROP2抗体薬物複合体(ADC)。第一三共はHR陽性HER2陰性の転移性乳がんに係る2次/3次治療で承認申請していた。用法・用量は「通常、成人には1回6mg/kg(体重)を90分かけて3週間間隔で点滴静注する。初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。なお、患者の状態により適宜減量する」。
海外では、24年8月時点において、化学療法歴のあるHR陽性HER2陰性の手術不能又は再発乳がんに係る効能・効果で承認されている国又は地域はない。
なお、国内では、抗TROP2 ADCとして、ギリアド・サイエンシズのトロデルビ点滴静注用が24年9月に承認、11月に発売されている。その適応はトリプルネガティブ乳がん(HR陰性HER2陰性)となっており、ダトロウェイとは異なる。
▽ルンスミオ点滴静注1mg、同30mg(モスネツズマブ(遺伝子組換え)、中外製薬):「再発又は難治性の濾胞性リンパ腫」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
抗CD20/CD3二重特異性抗体。中外製薬は2レジメン以上の全身療法を受けたことがある再発・難治性FLで承認申請していた。FLに対する二重特異性抗体の承認は国内初となる。
海外では24年8月時点において、再発・難治性FLに係る効能・効果で50以上の国又は地域で承認されている。
▽イムデトラ点滴静注用1mg、同10mg(タルラタマブ(遺伝子組換え)、アムジェン):「がん化学療法後に増悪した小細胞肺がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
抗デルタ様リガンド3(DLL3)/CD3二重特異性抗体。約85%~96%の患者はSCLC細胞の表面にDLL3を発現しており、正常細胞での発現はごくわずかであることから、DLL3はSCLC患者にとって有望な治療標的とされているという。
海外では、24年9月時点において、SCLCに係る効能・効果で2つの国又は地域で承認されている。
▽テクベイリ皮下注153mg、同皮下注30mg(テクリスタマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):「再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
抗BCMA/CD3二重特異性抗体。国内では、抗BCMA/CD3二重特異性抗体として、ファイザーのエルレフィオ皮下注が再発・難治性MMの適応で24年3月に承認、5月に発売されており、テクベイリは2番手となる。
海外では、24年7月時点において、再発・難治性MMに係る効能・効果で54の国又は地域で承認されている。
【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽オプジーボ点滴静注20mg、同点滴静注100mg、同点滴静注120mg、同点滴静注240mg(ニボルマブ(遺伝子組換え)、小野薬品):「根治切除不能な尿路上皮がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
抗PD-1抗体。尿路上皮がんの1次治療(ゲムシタビン及び白金系抗悪性腫瘍剤と併用)の効能追加となる。現在、尿路上皮がんに係る適応として、「尿路上皮がんにおける術後補助療法」を持っている。
海外では、24年8月時点において、根治切除不能な尿路上皮がんに係る効能・効果で9つの国又は地域で承認されている。
▽ランダ注10mg/20mL、同注25mg/50mL、同注50mg/100mL(シスプラチン、日本化薬):「尿路上皮がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
オプジーボとの併用での用量に関する変更となる。
▽ウステキヌマブBS皮下注45mgシリンジ「YD」(ウステキヌマブ(遺伝子組換え)[ウステキヌマブ後続2]、陽進堂):「既存治療で効果不十分な下記疾患:尋常性乾癬、乾癬性関節炎」を効能・効果とするバイオ後続品。
ステラーラ皮下注のバイオシミラー(BS)。富士製薬のBSに続く2剤目となる。先発品のステラーラ皮下注の効能・効果は▽尋常性乾癬・乾癬性関節炎▽クローン病▽潰瘍性大腸炎―となっているが、BSの2剤はこのうち「尋常性乾癬・乾癬性関節炎」となっている。
▽キイトルーダ点滴静注100mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)、MSD):「進行・再発の子宮体がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は残余(2031年12月23日まで)。
抗PD-1抗体。子宮体がんの1次治療(化学療法と併用)の効能追加となる。国内で現在、子宮体がんに係る効能・効果として「がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の子宮体がん」が承認されている。これはレンビマと併用し、2次治療以降の選択肢となっている。
海外では、24年8月時点において、化学療法歴のない進行・再発の子宮体がんに係る効能・効果で6つの国又は地域で承認されている。