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AZ DCT実現する治験アプリ「Unify」19治験で活用へ 自宅から参加できる“患者中心”の治験を

公開日時 2025/02/27 04:51
アストラゼネカ(AZ)は2月26日、DCT(分散型臨床試験)を実現する治験アプリ「Unify」(ユニファイ)を本格始動させたと発表した。Unifyは英AZの100%子会社が独自開発した治験に関する様々な行為やプロセスを包括的にサポートするアプリで、Unifyを用いた国内治験を2024年に12治験で開始した。25年は7治験で実施することが決まっており、まず19治験でUnifyを活用する計画だ。AZの亀尾祐子・臨床開発統括部長はこの日の記者説明会で、「来年以降もなるべくUnifyを使っていく方向になっている」と述べ、自宅からも参加できる“患者中心”の治験の定着に意欲をみせた。

医薬品開発において、患者中心の概念の浸透やデジタル技術などの活用により、医療機関への来院に依存しない臨床試験手法に注目が集まっている。この新しい手法はDCT(Decentralized Clinical Trials)と呼ばれ、医療機関で行われていた臨床試験に関する行為を分散化させ、患者が定期的に来院しなくても臨床試験に参加できるといったメリットがある。

Unifyは、疾患や臨床試験に関する情報提供や服薬タイミングの通知をアプリで行うところからグローバルでの開発がスタートした。24年には治験データの測定・収集・担当医師への送信や、オンライン診療、治験薬の患者宅への直接配送――なども実現。DCTの総合的なソリューションとして日本でも本格的に使い始めた。

Unifyは、医師がIDを付与して患者が利用する「治験参加用アプリ」と、「専任医師等用ポータル」(以下、医師向けポータル)で構成する。登載されている機能は多岐にわたるが、基本的にアプリに収集されたデータはリアルタイムに医師向けポータルに共有される。

この収集データからアプリが異常を検知した場合は、アプリが患者に追加質問するとともに医師に連絡することを推奨するアラートが出る工夫を施した。ユーザーフレンドリーな画面表示や操作性にこだわった。医師向けポータルにもリアルタイムに共有され、従来型の治験に比べ、有害事象等の早期検知と迅速対応が期待できる。医師向けポータルは、シングルサインオン(SSO)でUnify内の全てのツールが利用でき、利便性を高めた。Unifyは25年1月末現在、国立がん研究センター中央病院をはじめ国内26の治験実施医療機関に導入されている。

◎Unifyで治療期間50%短縮、対面来院数50%減少、治験期間15%短縮

亀尾氏は、AZでは「治験へアクセスしやすい社会の実現」に向け、▽治験をわかりやすく、▽治験情報にたどりつきやすく、▽治験に参加しやすく――に取り組んでいると説明。このうちUnifyを用いて“治験に参加しやすい”環境を整備していくとし、患者の治験参加の負担や障壁を下げることに意欲を見せた。

また、Unifyの導入により、製薬企業は新薬開発の時間とコストを削減することも期待できるとし、Unifyを用いて実施したCOPDを対象とする国際共同第2相治験(CRESCENDO)から、治療期間50%短縮、対面の来院数50%減少、治験期間15%短縮――といった効果が見込まれていることを紹介した。同試験では、自宅でスパイロメトリーを用いた肺機能検査を実施しアプリにデータ収集するなどした。Unifyでは、患者が適切に検査できたのかを医師向けポータルで確認でき、医師は患者に必要に応じてリマインドや指導ができるため、「効率的に高品質なデータが収集できる」とも述べた。

◎「ラグ/ロスをこれ以上広げないソリューションになる」 Unifyの他企業への提供も

亀尾氏は、日本で今後DCTが進まなければ日本のドラッグ・ラグ/ロス問題がさらに深刻化するとの懸念を示し、日本でDCTを推進することがラグ/ロスの改善につながるとの見解を披露した。デジタル化が進む欧米ではDCTの実施が広がっているという。一方、日本でDCTが進まなければ、「コスト高、効率性が他国に比べて悪くなり、(新薬候補を持つ)バイオベンチャーが日本で治験を行うハードルがより上がる」と指摘した。そして、「DCTを進めることがラグ/ロスをこれ以上広げないためのソリューションになる」との見方を示し、Unifyを活用したDCTが日本で定着することに期待を寄せた。

Unifyは、AZ本社100%子会社のEvinova社が手掛けている。Evinovaは独立した企業としてAZグループ以外の製薬企業やバイオテクノロジー企業、CROなどにUnifyを提供している。日本では現在、AZ日本法人以外に利用されていない。亀尾氏は、「どの治験に参加してもUnifyが使える。こういう世の中になると本当にシンプルに、様々な効率化にも貢献できると考える」と述べた。
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