自民・厚労部会 薬機法改正案を了承 「革新的医薬品等実用化支援基金」創設 官民連携で創薬基盤強化
公開日時 2025/01/28 04:52
自民党の厚生労働部会(長坂康正部会長)は1月27日、薬機法等改正案の法案審査を行い、今通常国会に提出することを部会長一任で了承した。「革新的医薬品等実用化支援基金」の創設を盛り込んだ。国費と民間からの出えん金(寄付金)で基金を造成。創薬クラスターで革新的新薬創出に取り組むスタートアップを支援するインキュベーション事業者や製薬企業の支援を通じ、創薬基盤を強化したい考え。多様なプレーヤーの参画を促し、創薬エコシステムを構築し、革新的新薬創出につなげたい考え。基金を創設し、法律上の位置づけを明確にすることで、安定的・継続的に支援する。
革新的新薬の創薬モダリティの担い手がスタートアップやベンチャーへとシフトするなかで、日本では創薬スタートアップエコシステムの構築が遅れていることが指摘されている。日本各地に創薬クラスターはあるものの、スタートアップ等が使用する施設などが不足していることも指摘されている。基金では、インキュベーションラボや動物実験施設、治験薬製造施設の整備や、SU(スタートアップ)支援事業などに取り組むインキュベーション事業者や製薬企業など、創薬クラスターキャンパス整備事業者の取組みなどを認定し、支援(補助)を行う。
基金は10年の時限措置で、国庫と民間からの出えん金で造成する。米国研究製薬工業協会(PhRMA)と欧州製薬団体連合会(EFPIA)は昨年12月に共同声明を発表し、「強制的な拠出義務」に反対する姿勢を表明しており、最終的に製薬企業からは寄付で落ち着いた。
24年度補正予算では、各地の創薬クラスターで不足しているスタートアップ等が使用する施設等への補助を行う「創薬クラスターキャンパス整備事業」、アカデミアシーズ等の実用化に向けた橋渡しの支援を行う「創薬エコシステム発展支援事業」を進めている。こうした事業の実施状況や関係者の意見を踏まえ、26年度以降に支援メニューの追加の可否を決定。政令で追加する方針。
◎「後発医薬品製造基盤整備基金」設置 企業間の連携・協力・再編を後押し
後発品を中心とした供給不安をめぐり、少量多品目生産という産業構造による生産効率の低下が課題として指摘される中で、「後発医薬品製造基盤整備基金」を設置し、企業間の連携・協力・再編を後押しすることも盛り込んだ。期間は、集中改革期間に該当する5年の時限措置。
具体的には、後発医薬品企業の品目統合・事業再編等の計画を認定し、生産性向上に向けた設備投資や事業再編等の経費を支援する。支援メニューは、▽品目統合に伴う生産性向上のための設備整備の経費補助、品目統合や事業再編に向けた企業間での調整にかかる経費補助等-。
いずれの基金も独立行政法人医薬基盤・健康・栄養研究所に設置することから、医薬基盤・健康・栄養研究所法を改正する。なお、基金の在り方については、施行後3年を目途として検討を加え、必要な措置を講ずるとしている。
◎責任役員の変更命令、供給体制管理責任者の設置、条件付き承認見直しなど
今回の薬機法改正では2019年の薬機法改正以降、ジェネリックメーカーを中心とした不正が相次いだことや、創薬環境の変化があったことに対応。品質の確保された医薬品を迅速にかつ適正に提供するために必要な措置を講じる考え。法改正は、①医薬品等の品質および安全性の確保、②医療用医薬品等の安定供給体制の強化、③より活発な創薬が行われる環境整備等、④国民への医薬品の適正な提供のための薬局機能の強化等-が柱。
具体的には、製造販売業者・製造業者に対する責任役員の変更命令を盛り込んだほか、医薬品の製造販売業者の品質保証責任者、安全管理責任者の設置義務を法定化し、製造販売業者における品質保証や安全管理に関するガバナンスを強化する。
医薬品の安定供給をめぐっては、総責を中心とした三役とは別に「供給体制管理責任者」の設置を義務付けるほか、出荷停止時の届出の義務付け、供給不足時の増産等の必要な協力要請を法定化する。
創薬環境が変化する中で、「条件付き承認制度」を見直す。希少で患者数が少ない疾患や重篤かつ代替の治療法がない疾患を対象に、探索的臨床試験等で一定程度の有効性・安全性が確認され、臨床的有用性が合理的に予測可能な場合に、承認後に検証的臨床試験等を行うことを条件に承認する。これにより、条件付き承認制度を適用する医薬品の拡大を図る。あわせて、小児用医薬品の開発計画の策定を努力義務とする。
薬剤師等の遠隔管理下での一般用医薬品販売や薬局の調剤業務の一部外部委託を可能とすることも盛り込んだ。濫用のおそれのある医薬品の販売については、販売方法を見直し、若年者に対しては適正量に限って販売することを義務付ける。