自民党・田村調査会長 賃上げ・物価高騰で「予算の組み方、構造見直す時期」 国民医療を守る総決起大会
公開日時 2024/11/25 04:52
日本医師会ら医療・介護関係42団体で構成する「国民医療推進協議会」は11月22日、日本医師会館(東京都文京区本駒込)で「国民医療を守るための総決起大会」を開催した。来賓で挨拶した自民党の田村憲久社会保障制度調査会長は、「補正(予算)でずっと対応できないのが医療・介護、要するに報酬の世界」と指摘。賃金上昇や物価高騰がのしかかる一方で、税収が増加しており、「そもそもの予算の組み方、構造を見直さなければならないところに、特に社会保障は来ている」と強調した。国民医療推進協議会の松本吉郎会長(日本医師会会長)は、「医療・介護の報酬改定は毎年実施されるものではないため、医療・介護分野での賃上げと物価高騰への対応に向けて 今年度の補正予算や来年度予算をぜひともご活用いただきたい」と述べた。
政府が同日夕に閣議決定した総合経済対策には、「足元の人材確保の課題に対応する観点から、令和6年度報酬改定において講じた医療・介護・障害福祉分野の職員の処遇を改善するための措置を確実に届け、賃上げを実現する」との文言が盛り込まれている。11月28日に召集する臨時国会で、経済対策の裏付けとなる補正予算の審議が進むことになる。
総決起大会で挨拶した自民党の田村社会保障制度調査会長は、石破政権の補正予算での対応に触れながら、「これまでは物価も賃金も上がらない時代だから何とか回ってきた。これだけ上がると、そもそもの予算の組み方、構造、見直さなければならないところに、特に社会保障は来ている」と問題意識を示した。
◎田村調査会長「当初予算の税収見込みを決算に近いところまで上げないと保てない」
田村調査会長がこう指摘するのは、当初予算に用いる税収見込みと決算が大きく乖離している点だ。「財務省はある程度、補正予算で色々なものを見てくれるが、診療報酬・介護報酬は4月にスタートするので、その後、補正予算でやっても対応できない状況になる」と田村調査会長は指摘する。「今回は若干やるが、診療報酬の上積みについて財務省はそう簡単に認めてくれないというのがある」と強調。そのうえで、「当初予算での税収見込みをそれなりに決算に近いところまで上げてもらって、 そこで予算をセットしていかないと、診療報酬、介護報酬は単価が上がらないというか、保てない」と表明し、予算の組み方や構造の見直しの必要性に言及した。
◎自民党・鈴木総務会長 物価高騰「診療報酬の措置では足りないことはわかっている」
自民党の鈴木俊一総務会長は挨拶の中で、岸田政権の財務相として臨んだ24年度診療報酬改定を振り返り、「まだまだ物価高騰、これは続いているわけで、 その中で診療報酬の措置では足りないということは私もよくわかっている」と応じた。その上で、「国費にして13兆9000億円の国費で行う補正予算。また25年度の予算編成も年末に向けて行われる。その中でどういう対応ができるのか、私どもとして正面から受け止め、国民医療を守るという観点から、先生方の医療体制が壊れることのないようしっかりと対応させていただきたい」と強調した。
◎公明党・秋野参院議員「薬価改定と同様に技術料も行うべき」が公明党の立場
公明党の秋野公造参院議員は、「医療は診療報酬と補助金を組み合わせる形で成り立っている。25年度は診療報酬改定のない年ではありますが、薬価等は中間年改定も行うわけでありまして、もしも物価高や賃金の上昇などに対応することができないのであれば、薬価改定と同様に技術料も行うべきであると強く出たのが公明党の立場だ」と指摘。「もしそれができないのであれば補助金でしっかり対応すべきと、補正予算で何らかの対応を求めさせていただいた」と述べ、与党の立場から医療を守る活動に注力していきたいと決意を表明した。
◎賃上げや物価高騰に対応するための「適切な財源確保を要望」 決議文を採択
同日の総決起大会では、賃上げや物価高騰に対応するために、「適切な財源を確保するよう、本大会参加者全員の総意として、強く要望する」ことを決議した。決議文では、急激な人件費の増加、光熱費・食材費の高騰により、医療機関や薬局などの経営が厳しさを増しており、「このままでは人材確保がさらに難しくなり、国民に適切な医療・介護を提供できず、医療・介護が崩壊しかねない」と指摘。「国民の生命と健康を守るため、医療・介護分野における賃上げ・物価高騰に対する取組を進め、国民に不可欠、かつ日進月歩している医療・介護を提供しなければならない」としている。
国民医療推進協議会の松本吉郎会長(日本医師会会長)は、「10月12日に石破総理大臣と 首相公邸で面会し、今年度の補正予算や来年度予算における医療分野の賃上げ、物価高騰への対応を要望した」と強調した。続けて、「医療・介護の報酬改定は毎年実施されるものではないため、医療・介護分野での賃上げと物価高騰への対応に向けて 今年度の補正予算や来年度予算をぜひともご活用いただきたいと考えている」と述べ、出席した国会議員に理解を求めた。
日本薬剤師会の岩月進会長は、薬価改定に言及。「中間年改定が7年連続で行われており、 1薬局あたり平均で50万円の損失が出ている。コロナ禍で賃上げと言われても財源がない」と強調。「厳しい状況の中であっても、地域住民や処方医の投薬に関する最後の窓口の役割を担っている」との認識を示した上で、「いま薬がない。薬剤師にとっては手も足も出ない状況だ。とはいえ私たち(薬剤師は)そういった仕事に就いており、これを諦めるとかやめるとかっていうことはない」と述べ、支援を訴えた。
総決起大会には、国会議員(代理含む)177人を含む約1000人が参加し、気勢を上げた。