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中医協合同部会 アルツハイマー病治療薬・ケサンラ 費用対効果評価などレケンビと同様の取り扱いに

公開日時 2024/10/10 04:50
中医協薬価専門部会・費用対効果評価専門部会合同部会は10月9日、日本イーライリリーのアルツハイマー型認知症治療薬・ケサンラ(一般名:ドナネマブ)の薬価算定方法や収載後の価格調整、費用対効果評価などについて、レケンビ(一般名:レカネマブ)と同様に取り扱うことを診療・支払各側が了承した。現行の薬価基準に基づき、薬価算定を実施。急激な市場拡大に備えて、薬価算定方法や2年度目の販売予想額にかかわらず NDBにより市場規模を把握し、四半期での速やかな再算定の適否を判断する。費用対効果評価は算定方法により「H1」または「H5」に該当。レケンビの費用対効果評価を踏まえた形で対応する。

◎薬価算定 現行の薬価基準、既存ルールでの補正加算で評価

ケサンラは、レケンビに次ぐ抗アミロイドβ抗体となる。薬価算定をめぐり、レケンビとの相違点について厚労省保険局医療課の清原宏眞薬剤管理官は、「一部レケンビと異なるところはあるものの、薬価算定方式において類似薬を選定する際の事項として挙げられている効能効果は同一、薬理作用、組成、化学構造、用法等においては一定の類似性が認められている」と説明。「レケンビと同様に現行の薬価基準に基づき算定し、補正加算は既存のルールにしたがって評価する」ことを提案した。

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「両剤の違いを踏まえた臨床上、治療上の使い分けはあるとは思うが、医薬品としては類似性がかなり高い。薬価算定方式を変えるほどの理由は見当たらない」と表明。診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「脳内アミロイドβ量を減少させる作用があるアルツハイマー病治療薬となるため、同様の作用があるレケンビと同様に現行の薬価基準に基づき算定することで良いと考える」と述べるなど、賛同する声があがった。

◎市場の急拡大対応でNDB活用 四半期再算定の適否を速やかに判断

同剤は、有病者数が多く、患者数の急激な増加により、市場規模が急拡大する懸念もある。ただ、投与対象については最適使用推進ガイドラインを策定し、患者要件等により絞り込みが行われることから、「実際の投与患者数は限定的となる見込みであるものの、レケンビ同様に、今後の使用状況によっては実際に投与される患者数は当初の見込みよりも増加する可能性もある」と清原薬剤管理官は説明。市場規模の拡大に速やかに対応するためには、NDB(ナショナルデータベース)を活用する方法があるが、薬価制度抜本改革の骨子には、高額薬剤であっても「収載時に2度目の販売予想額が100億円(原価計算)または150億円(類似薬効比較方式)以上とされたもの」などの要件を満たす必要がある。清原薬剤管理官は、「収載後の実際の販売予想額を上回る大きく上回る可能性があり、この場合はNDBでデータの把握はされないという課題がある」と説明。薬価算定方式や2年度目の販売予想額などにかかわらず、NDBにより把握し、四半期での速やかな再算定の適否を判断することを提案した。

診療側の森委員は、「対象となり得る患者数が多く、使用可能な医療機関の体制や使用実態等の変化により、当初の予想より大きく市場拡大することも考えられることから、四半期での速やかな再算定の適否を判断するために、2年度目の販売予想額などに関わらず、NDBによる使用量の把握は必要な対応」と同意。支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)も、「レケンビ同様に有病者数自体が多く、また国民の期待も高いことから、使用実態が変化し、予測以上に患者数が伸びていくことも考えられる。その際には価格の再調整も必要になるのではないか。薬価収載後も算定方法などにかかわらず、NDBにより使用量を把握していくことに賛成だ」と述べた。

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「ケサンラ、レケンビいずれも使用状況をしっかりモニタリングするということは事務局にお願いをしたい」と念を押した。

◎NDB活用の対象範囲拡大求める声に 清原薬剤管理官「次回制度改正で議論」

診療側の森委員は、NDBの活用に際し、「収載時に、2年度目の販売予想額が100億円(原価計算方式)または150億円(類似薬効比較方式)以上とされたもの」の要件が設定されることについて、「既存の医薬品の取り扱いも含めて検討していく必要がある」として、対象の拡大を提案した。清原薬剤管理官は、「次回の制度改正のときに議論をしたい。ただ、現状としては、実はNDBのデータを取ることは結構、費用と時間がかかり、闇雲になかなか対象を広げられないという現状がある。そのことも勘案しながら、今回は高額薬剤に限定をしてということでの提案となっている」と説明した。

◎費用対効果は「H1」または「H5」の見通し 支払側・松本委員「閾値の価格を指標に」

同剤は費用対効果評価の対象となるが、「類似薬効比較方式で算定され、有用性系加算がある場合」、「原価計算方式で算定された場合」は「H1区分」に該当。この場合は、ケサンラを対象品目として費用対効果分析を実施することになる。介護費用の取扱い及び価格調整範囲のあり方については、「レケンビに対する費用対効果評価について」に準じて進めることを提案した。


一方で、「類似比較方式で算定され、有用性系加算がない場合」は、「H5区分」に該当。ケサンラの費用対効果分析は実施せず、レケンビの費用対効果評価の結果を受けた価格調整に準じて薬価を調整する。

支払側の松本委員は、「特に薬価調整範囲については、費用対効果評価を積極的に活用する観点から、閾値の価格を指標とする方法を適用すべき」と提案した。

◎ケサンラのARIA-Eの発現頻度高く 安全性対策の徹底求める声あがる

同剤をめぐり、安全性を懸念する声も診療・支払各側からあがった。厚労省は同剤の国際共同第3相試験の結果から有害事象として知られるアミロイド関連画像異常(ARIA)の発現頻度を報告。ARIA-E(アミロイド関連画像異常-浮腫 等)は、プラセボ群2.1%、ケサンラ群24.0%、ARIA-H (アミロイド関連画像異常-微小出血 等)は、 プラセボ群13.6%、 ケサンラ投与群で 31.4%だった。

診療側の森委員は、「直接比較されていないので評価が難しいもののARIAの発現がレケンビに比べ多いように感じられ、特にARIA-E関連は約倍の24%となっている」と指摘。「最適使用推進ガイドライン、または添付文書の中で注意喚起等をしていただくとともに、市販後の安全対策として、全例調査等が実施されるようですが、把握した安全性情報については適切に医療現場にフィードバックしていただく必要がある」と述べた。

清原薬剤管理官は、「安全対策については、速やかに市販後安全対策を企業に徹底するようにお伝えするとともに、全例調査の結果につきまして医療関係者にお伝えする」と説明。市販直後調査の結果なども公表、医療関係者に伝達する考えを示した。

支払側の高町晃司委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、「重篤化や死亡例もあるようですし、レケンビに比べて発現の可能性も高いということなので、患者の安全を確保するために、また患者が安心して治療を受けられるためにもこれらの対策をぜひ徹底していただきたい」と念を押した。




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