旭化成・堀江代表取締役 後発品参入のテリボン6.4%減収に「相当防衛できた」 日頃のMR活動評価
公開日時 2023/11/08 04:50
旭化成の堀江俊保代表取締役兼常務執行役員は11月7日の2023年度第2四半期決算説明会に臨み、後発品が参入している骨粗鬆症治療薬・テリボンの上期売上が6.4%の減収にとどまったことについて、「相当防衛できた」との認識を示した。テリボンの皮下注製剤の後発品は沢井製薬の製品のみ22年9月に参入。旭化成ファーマは沢井製薬に対し特許侵害訴訟を提起し、今年9月に製造販売差し止めの仮処分命令が出ていた。旭化成ファーマのMRの整形外科領域での高いプレゼンスと特許侵害訴訟の動向もあいまって、1ケタ台の減収にとどまったとみられる。
「医師との強いつながりが弊社有利に働いた。日頃の営業活動の成果だと思っている」――。堀江代表取締役は、テリボンの後発品影響が23年度上期は限定的だったことの要因のひとつに、日頃のMR活動を挙げた。
テリボンの23年度上期売上は194億円で、前年同期比13億円の減収となった。テリボンは皮下注製剤とオートインジェクター製剤があり、「オートインジェクター製剤が金額ベースで半数以上のシェアを占める」(同社広報部)との状況にある。沢井製薬の後発品が参入した皮下注製剤をめぐっては、旭化成ファーマが22年4月に沢井製薬に対し特許侵害訴訟を提起。同年9月に製造販売差し止めを求める仮処分命令の申し立てを行い、今年9月に製造販売差し止めの仮処分命令が出た。
テリボン以外の主要な医療用医薬品の23年度上期売上は、抗リウマチ薬・ケブザラは19.8%増の54億円、汎発性血管内血液凝固症(DIC)治療薬・リコモジュリンは1.8%減の41億円、免疫調整剤・プラケニル7.9%増の29億円――だった。米国子会社ベロキシスが米国で販売している腎移植に用いる免疫抑制剤・Envarsus XRの売上は21.1%増の1億700万ドルだった。
◎23年度上期 医薬・医療事業は増収減益
旭化成の医薬・医療事業の23年度上期業績は、売上は2.0%増の1009億円、営業利益は48.3%減の75億円だった。2ケタの営業減益は、22年7月から連結対象となった抗体医薬品GMP製造受託サービスを提供するBionova社の固定費が23年度上期はフルに計上したことが主因となる。
米国を中心に蘇生関連技術をもとに開発された製品(AED・除細動器など)を展開しているクリティカルケア事業は、売上は13.0%増の1657億円、営業利益は9.1%増の123億円と好調だった。特に着用型自動除細動器「LifeVest」の保険償還状況の改善や除細動器の販売価格上昇、部材調達難の改善に伴うAEDの販売量の増加により増収増益となった。
◎23年度通期予想 医薬・医療事業は下方修正 クリティカルケア事業は上方修正
23年度通期予想は、医薬・医療事業は期初計画から下方修正、クリティカルケア事業は上方修正した。
修正後の医薬・医療事業は、売上は期初計画から50億円減の2130億円、営業利益は36億円減の175億円と予想した。Bionovaの顧客側でのプロジェクト遅延の影響などが下方修正の理由となる。クリティカルケア事業は、部材調達難の改善が想定以上に進むことなどから、売上は330億円増の3470億円、営業利益は30億円増の289億円と予想した。
なお、医薬・医療事業とクリティカルケア事業を合わせた「ヘルスケアセグメント」の売上は280億円増の5600億円、営業利益は6億円減の464億円と予想した。
【旭化成ファーマの23年度上期の主要製品売上(前年同期実績)、億円】
テリボン 194(207)
リコモジュリン 41(42)
ケブザラ 54(45)
リクラスト 6(7)
プラケニル 29(27)