後発品の情報提供 適時的確では「全くない」との回答が増加 6割が流通状況悪化を指摘 NPhA調査
公開日時 2023/09/11 04:50
後発品の自主回収や限定出荷をめぐり、製薬企業や医薬品卸の情報開示・提供が的確に「全く行われていない」と考える薬局が増加傾向にある―。日本保険薬局協会(NPhA)は9月7日の会見で、4513薬局の管理薬剤師が回答したアンケート結果を報告した。自由回答では、「メーカーの出している状況と卸との間で格差がありすぎる」などの声も寄せられ、情報にタイムラグがあることが一つの課題であることが浮き彫りとなった。
調査では、後発品の自主回収や出荷調整の影響を聞いた。後発品の流通状況について、調査時点(23年7月)で、前回調査時(23年1月時点)に比べ、「悪化している」が41.6%、「やや悪化している」が20.1%で、約6割に上った。「改善した」は10.7%にとどまり、供給不安がむしろ悪化傾向だった。
◎供給不足の解消時期や店舗への納品予定など製薬企業・医薬品卸双方の情報が不十分
製薬企業からの情報が適時的確に開示・提供されているか尋ねたところ、「供給不足の解消時期」、「供給可能な量(過去3か月実績に基づいてなど)」、「代替薬・代替治療の情報」など、すべての項目で「全く思わない」との回答率が増加していた。医薬品卸からの情報提供も同様の傾向をみせ、「店舗への納品予定量」、「店舗への納品予定日」なども、適時的確とは「全く思わない」が増加していた。
自由回答では、「メーカーの出している流通状況と卸との間で格差がありすぎる。メーカー は出荷量通常と告知しているものの卸には全く入ってこないものが多い」、「製薬会社によって情報開示の内容に差がある。ホームページ上で限定出荷になっていなくても卸に問い合わせると限定出荷と回答されることが多々ある」などの回答も寄せられた。
医薬品流通・OTC検討委員会の畔上和也氏は、「実際にメーカーのHPなどでいつ入荷するか明記されているが、センターに入って現場に行くまでのタイムラグがあったり、これまで発注が来なかったものの発注が増加して十分にいきわたらないケースがあったり、色々な要因が複合的に重なって情報が届いていない部分もあるのではないか」と述べた。
製薬企業の情報提供をめぐっては、自由回答で「流通に関する情報は薬局に対してのみならず、担当 MRがしっかり応需先病院にも丁寧に情報提供すべき。すべて薬局への問い合わせとなり、時間的にも身体的にも負荷が大きい状態が数年単位で継続している」との指摘もあった。「Drと薬剤師の認識にギャップがある。メーカーから Drへの 説明が不足しているように思う」との声もあった。
◎不信感持つ患者に「謝罪と説明」に追われる薬局が8割 医療機関と患者の板挟みに
一方で、情報不足に悩む中で、医師と患者の双方に対し、謝罪と説明に追われる薬局の姿も調査から浮き彫りになった。自主回収や限定出荷が相次ぐなかで、患者から指摘があったことを尋ねたところ、「在庫欠品」(87.4%)、「後発品に対する不信感」(72.9%)、「メーカーの信頼感の低下」(40.3%)に加え、「薬局の信頼感の低下」との回答も45.4%あった。薬局での「説明時間の増加」(55.1%)、「待ち時間の増加」(54.3%)、「医薬品変更に伴う患者負担の増加」(52.0%) など、患者から薬局が直接指摘を受けていることがわかった。
これに対する対応として、「患者への謝罪と説明」が79.6%にのぼり、医療機関と患者の間の板挟みとなり、謝罪と説明に追われる薬局の姿も浮き彫りになった。
自由回答でも、「在庫の確保にかなりの時間と手間をかけているが、メーカーからは欠品になるとの連絡・卸からは納期未定との返事のみの薬も多い。先発もジェネリックも納期未定で同効薬も同じ状況だと他剤への変更提案も難しい。在庫確保が追いつかない。患者様からも医師からも怒られる状況で薬局は謝罪するしかできず板挟み状態」、「患者が流通の状況、出荷調整について知らないことが多く、説明のための時間を要する。多くの人に周知してもらいたい」、「末端の薬局がすべて悪いという風潮が患者の中である。メーカーの都合で欠品するのであれば患者向けの欠品案内なども出すべきだ」などの声が寄せられた。
調査は、NPhA会員薬局の管理薬剤師を対象に、1薬局1回答としてWebで実施。回答期間は7月24日から8月28日までで、4513薬局(24.2%)から回答を得た。