【グローバル企業 2024年決算トピックス #1】ファイザー メルク ジョンソン&ジョンソン アッヴィ
公開日時 2025/03/25 04:53
外資製薬企業の2024年医療用医薬品売上高の上位20社を集計したところ、20社中18社が増収を達成したことが分かった。新型コロナ関連製品が期初予想を上回って着地するとともに、シージェン社買収が寄与したファイザーが前年比7%増の636.27億ドルとなり、首位を守った。肥満症治療薬が好調なイーライリリーは32%増収で、伸び率ではトップとなり、25%増収のノボ ノルディスクが続いた。25年には、580~610億ドルの売上を予想するリリーが、ファイザーやメルクとトップ争いを演じる見通し。また、年初にJ&Jが146億ドルでIntra-Cellular社買収を発表したのを皮切りに、再び大型買収が活発化する1年になりそうだ。
本誌は全4回にわたって上位各社の24年決算概況を紹介する。第1回目は、1位~4位のファイザー、メルク、ジョンソン&ジョンソン(J&J)、アッヴィを取り上げる。
【1位 ファイザー】
総売上高(医療用医薬品売上高)は7%増(為替の影響を除くと7%増)の636.27億ドルで、医療用医薬品売上ランキング1位となった。新型コロナ関連のコミナティとパキロビッドの合計売上は当初予想の80億ドルを上回る110.69億ドルで着地し、売上全体に占める割合は17%となった。23年12月の米シージェン社買収により獲得した4製品(パドセブ、アドセトリス、「Tukysa」、テブダック)が合計で32.88億ドルの売上寄与となった。純利益は3.79倍の80.31億ドルで7位だった。
コミナティの売上は52%減の53.53億ドル、パキロビッドは4.47倍の57.16億ドルとなった。同社売上トップ製品の直接経口抗凝固薬・エリキュースの売上(アライアンス売上含む)は9%増の73.66億ドル、2位の肺炎球菌ワクチン・プレベナーファミリーは1%減の64.11億ドルだった。
ATTR-PN及びATTR-CM治療薬・ビンダケルファミリーは64%増の54.51億ドル、22年10月の英バイオヘイブン社買収により獲得した経口片頭痛治療薬「Nurtec ODT」(リメゲパント)は36%増の12.63億ドルと大幅に伸長した。
一方、乳がん治療薬・イブランスは競合品の影響で8%減の43.67億ドルとなった。RSウイルスワクチン・アブリスボは、米CDCの予防接種諮問委員会(ACIP)による60~74歳の接種を高リスク者に制限する勧告を受けて、15%減の7.55億ドルとなった。
米シージェン社買収により獲得した尿路上皮がん治療薬・パドセブは15.88億ドル、ホジキンリンパ腫等の治療薬・アドセトリスは10.89億ドルの寄与となった。2025年の総売上高は610億ドル~640億ドルを見込んでいる。
【2位 メルク】
総売上高は7%増(為替の影響を除くと10%増)の641.68億ドルとなり、このうち医療用医薬品の売上高は7%増(同9%増)の574.00億ドルで2位だった。23年の研究開発費率が51%に達していたのに対し、24年は28%と依然として高水準だったものの、純利益は46.90倍の171.17億ドルとなり、1位だった。
最主力品のがん免疫療法薬・キイトルーダは18%増の294.82億ドルと引き続き2桁成長を果たし、同社医療用医薬品売上全体の51%を占めている。同社売上2位のHPVワクチンのガーダシル/ガーダシル9は主に中国での需要低下を要因に3%減の85.83億ドルとなった。この2製品で売上全体の66%を占めている。
2024年3月に米国で、同年8月に欧州で承認を取得した肺動脈性肺高血圧症治療薬「Winrevair」(ソタテルセプト)の売上は4.19億ドルとなった。24年6月に米国で承認を取得した21価肺炎球菌ワクチン「Capvaxive」も大型化が見込まれている。
一方、経口新型コロナ治療薬・ラゲブリオは需要減速で33%減の9.64億ドル、DPP-4阻害剤・ジャヌビアは後発品参入の影響などで39%減の13.34億ドルとなった。
2025年の総売上高は641億ドル~656億ドルを見込んでいる。中国へのガーダシル/ガーダシル9の25年2月から少なくとも年半ばまでの一時出荷停止の決定を織り込んでいる。
【3位 ジョンソン&ジョンソン】
総売上高は前年比4%増(為替の影響を除くと6%増)の888.21億ドルとなり、このうち医療用医薬品の売上高は4%増(同6%増)の569.64億ドルで3位だった。純利益は6%増の140.66億ドルで3位だった。23年8月にコンシューマーヘルス事業を分離・独立させており、総売上高、純利益の増減は継続事業(医療用医薬品及び医療機器)の比較となっている。
医療用医薬品の売上トップ製品が、クローン病・潰瘍性大腸炎治療薬・ステラーラから多発性骨髄腫(MM)治療薬・ダラザレックスに入れ替わった。24年に欧米市場で未治療・移植適応MMに適応拡大したダラザレックスの売上は、20%増の116.70億ドルとなり、医療用医薬品売上全体の20%を占めた。一方、ステラーラの売上は、欧州市場等でのバイオ後続品(BS)参入の影響で、5%減の103.61億ドルとなった。
乾癬治療薬・トレムフィアは17%増の36.70億ドル、前立腺がん治療薬・アーリーダは 26%増の29.99億ドル、日本新薬創製の肺動脈性肺高血圧症治療薬・ウプトラビは15%増の18.17億ドルといずれも2桁の伸びを示した。
治療抵抗性うつ病治療薬「Spravato」(エスケタミン)の売上は56%増の10.77億ドルと10億ドル台に乗った。MMに対するCAR-T細胞療法・カービクティは、24年に欧米市場で2次治療での使用が可能となり、93%増の9.63億ドルとなった。
2025年の総売上高は892億ドル~900億ドル(新型コロナワクチンを除く)を見込んでいる。米国で複数のBS参入が予定されているステラーラの売上は、大幅減となる見通し。25年1月に米Intra-Cellular社の146億ドルでの買収を発表しており、24年に47%増の6.81億ドルを売り上げた統合失調症・双極性障害うつ状態治療薬「Caplyta」(ルマテペロン)が業績に寄与してくる。
【4位 アッヴィ】
総売上高(医療用医薬品売上高)は4%増(為替の影響を除くと5%増)の563.34億ドルとなり、4位だった。純利益は12%減の42.78億ドルで11位だった。
同社売上トップ製品が、昨年までの関節リウマチ等の治療薬・ヒュミラから乾癬や炎症性腸疾患治療薬・スキリージに入れ替わった。スキリージの売上は51%増の117.18億ドルと大きく伸長し、同社売上全体の21%を占めている。また、JAK阻害剤・リンヴォックも50%増の59.71億ドルと大幅に伸長した。
27年のスキリージとリンヴォックの合計売上予想を前回の270億ドル以上から310億ドル以上(各200億ドル、110億ドル)に引き上げた。
米国などでバイオ後続品(BS)が参入しているヒュミラの売上は38%減の89.93億ドルだった。統合失調症・双極性障害治療薬「Vraylar」(カリプラジン)は18%増の32.67億ドル、慢性リンパ性白血病・急性骨髄性白血病治療薬・ベネクレクスタは13%増の25.83億ドルといずれも2桁増となった。片頭痛に対する経口CGRP受容体拮抗薬「Ubrelvy」 (ウブロゲパント)の売上は23%増の10.06億ドル、同「Qulipta」(アトゲパント)は61%増の6.58億ドルとなった。
2024年2月の米ImmunoGen社買収により獲得した卵巣がんに対する抗体薬物複合体(ADC)「Elahere」(ミルベツキシマブ・ソラブタンシン)は4.79億ドル寄与した。総売上高は29年にかけて1桁台後半の年平均成長率を予想している。