製薬企業から医薬品の情報提供を受けた後、詳細を思い出せずに臨床現場で困った経験がある医師が８割近くに上ることがわかった。これは医師向け臨床支援アプリを手掛けるHOKUTOのパネル医師を対象とした意識調査結果。困った経験がある医師の９割は、外来など通常の診察・処方時に情報を思い出せなかったと言い、思い出せなかった情報の約半数は効能・効果や用法・用量といった基本情報だった。医師の年代別では、若手医師ほど併用注意薬や禁忌といった安全性の情報に加え、「休薬減量基準」など使用上の注意に係る情報を臨床現場で思い出せずに手間取った経験が多い傾向もみられた。

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困った経験がある医師に、あいまいな記憶をどのような情報源で確認したかをひとつ挙げてもらったところ、最多は「製薬企業以外の医療系ウェブサイトやアプリ（検索結果のサイトを含む）」（34％）で、１ポイント差で「製薬企業のウェブサイトやアプリ」（33％）――となった。診察時間が限られるなか、製薬企業には医薬品の基本情報などを検索・閲覧しやすいサイト構築や、即時性のある情報サービスが求められそうだ。

なお、「担当ＭＲ」に確認した医師はわずか２％だったが、これは外来などの臨床現場で医薬情報を思い出せなかったケースにおける情報源を質問したためと思われる。「担当ＭＲ」に聞いた情報としては、「稀な疾患の患者の薬」（医師の年代：40代）や「細かな適応や最適な薬を探す時」（50代）だった。

◎思い出せなかった情報　「効能・効果、用法・用量」が46％　「安全性」が23％

調査はHOKUTOのパネル医師を対象に実施し、108人から回答を得た。回答医師の年代は20代18人、30代26人、40代23人、50代14人、60代以上10人、年代不明17人――。調査時期は６月15日～19日。

臨床現場で医薬品情報を詳細に思い出せずに困った経験が「ある」との医師は77％となった。どの年代でも７割を超え、50代では93％にのぼった。

困った経験が「ある」医師83人に対し、詳細に思い出せずに困った情報を自由コメントで求め、ミクスが分類わけしたところ、「効能・効果、用法・用量」関係の情報が46％、「安全性（併用、副作用）」関係の情報が23％、「薬剤名」が19％、「使用上の注意」に係る情報が８％――となった。

例えば「効能・効果、用法・用量」では、「新しく販売され、新しく採用された薬剤を使用する時に用法用量を覚えていない事がある」（50代）、「小児の年齢や体重当たりの使用量」（40代）、「適切な投与量の計算」（30代）、「適応範囲、用法用量」（年代不明）――など。「安全性（併用、副作用）」では、「併用注意薬、禁忌薬」（30代）、「副作用、飲み合わせなど」（20代）、「irAEや相互作用など」（30代）――といったコメントが寄せられた。

「使用上の注意」に係る情報に関しては、「重症感染時のドーズや、溶解方法に注意が必要な薬剤など」（30代）、「休薬減量基準」（20代）、「透析患者のドーズ」（20代）、「腎機能障害時の減量の必要性」（50代）――などの情報を詳細に思い出せなかったとし、製薬企業のウェブサイトやアプリで調べたとの医師が多かった。

詳細に思い出せずに困った情報を年代別に見てみると、「効能・効果、用法・用量」といった基本情報はどの年代でも最多となり、20代では62％にのぼった。「安全性（併用、副作用）」に関しては50代までの各年代で基本情報に次いで多かった。「薬剤名」は年代を重ねるごとに思い出せないとの回答割合が高まり、60代以降では基本情報と同率の38％を占めた。

「使用上の注意」に係る情報を詳細に思い出せなかったとの割合は、20代が15％、30代が10％、40代が11％、50代が８％、60代以降が０％――。若手医師ほど患者背景を踏まえた処方に時間を要するケースが多いといえそうだ。