製薬協・田中常務 MR活動の軸は「安全性」 提供から伝達、入手から収集へ
公開日時 2018/10/17 03:52
日本製薬工業協会の田中徳雄常務理事は10月16日、東京都内で開催された「2018年度教育研修管理者認定講習会」(公益財団法人MR認定センター主催)で講演し、「製薬業界が過去に社会を揺るがす大事件を起こし、そこで我々は何を学んだのかを真剣に考えて欲しい」と訴えた。過去の薬害や景品類提供違反、臨床研究支援をめぐる不適切な関与、さらに広告活動監視モニターなどの事象を捉えて警鐘を鳴らしたもの。その上で、「間違いなく今後の軸足は安全性にある」と述べ、「そろそろ頭を切り替えなければならない。特に教育研修担当者にお願いしたい」と強調した。
この日の講演は、厚労省が9月25日に公表した「販売情報提供活動に関するガイドライン」を視野に、今後のMR活動のあり方をテーマに行われた。田中常務は講演冒頭で、過去の薬害や添付行為、カルテル疑惑など、製薬産業が発端となった大事件を例示し、その内容を振り返った。その一例として、数千例単位の副作用報告義務違反があったことに触れ、「これはヒトによる薬害ではないのか」と断じた。さらに、厚労省の広告活動監視モニターからの報告に触れながら、「会社で作った資材に不適切なものがある。また、正しい資材であっても(MRの)伝え方が言葉足らずで、間違ったことを伝えた。これが原因で、本当は使ってはいけない患者に健康被害が起こったら(企業は)どうするのか」と厳しく批判し、企業側に是正を促した。
◎安全性重視の仕事をしないMRはいらなくなる
田中常務は、MR活動に求められる最大要件は「安全性」だと述べ、「自ら情報を取りに行く活動を重視しなければならない。安全性重視の仕事をしないMRはいらなくなる」と訴えた。希少疾患や難治がんなど、専門性の高い疾患領域に革新性の高い新薬が数多く上市される時代が目前に迫っていることが、その背景にある。田中常務は、MRの定期訪問の意義・意味として、「(企業の)副作用報告に向けた取り組みは、副作用が発現してからではなく、発現する前から活動している」と強調。「投与前からPMS活動が始まっている」ことに理解を求めた。特に、抗がん剤などは、投与前から対象患者の情報を得て、事前対応、副作用発現時対応・対策をMRは伝達する必要があるとした。さらに、副作用の頻度、程度が可能な限り少なくなるような活動をMRに求めた。
MRによる副作用情報の収集の仕方にも触れ、単に「副作用はありませんか?」の活動では不十分と指摘。疾患と直接因果関係が分からなそうな副作用や、比較的軽度の副作用を収集するための手法として、①「次に来院された時は、〇〇とお聞きいただけませんか?」、②「〇〇に特に注意して診ていただけませんでしょうか?」などの話法を披露した。
◎リーダーは「変える勇気」を持って欲しい
MRの人材育成にも触れ、過去は、医療機関の滞在時間、医療者との会話時間、説明会の回数、処方医との面談時間に比例して「MRは育つ!」との見解を示した。ただ、昨今の病院の訪問規制に伴い、こうした過去の指標が使えなくなっていると指摘。これからの人材育成については、①リーダーとの会話時間(内容)、②リーダーとの同行件数(時間)―のウエイトが高まると見通した。その上で、リーダーには「変える勇気を持って欲しい」と訴えた。