【World Topics】女性用バイアグラ販売不調
公開日時 2016/05/13 03:50
1998年に販売を開始したバイアグラは市場に出た最初の1ヶ月でおよそ50万人が購入。世界中で1800億円超を売り上げている。
http://www.drugs.com/stats/viagra
一方、 いわゆる「女性用バイアグラ」ことアディー(フリバンセリン)は、昨秋の発売後の最初の数週間の売り総数がわずか227にとどまったと報道され、 話題となっている。
http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-11-17/valeant-s-newest-problem-the-female-libido-pill-isn-t-selling
アディーが大きな話題を集めたのは昨年8月。開発元のSprout Pharmaceuticalsが、FDAの承認を得たのが8月18日の直後に、製薬大手のValeant Pharmaceuticals International(以下Valeant)に1ビリオンドルで買収されたからだ。
製造・販売体制は万全とみられていたのに、発売後の売れ行き不調はどうしたことか?というのが最近の話題だ。世評はさまざまだが、経営判断のミスが重なったというのがもっぱらの観察だ。
Valeant はSprout買収直後にメールオーダーの通販会社と提携することを前提に販売価格を2倍に引き上げた。だが、この提携は実現しなかった。販売の低迷でValeant経営陣と投資家の間に軋轢が生じつつある。
治験段階では「素晴らしい効果!」という治験参加者の声しか聞こえてこなかった感のあるアディーだが、実は消費者の期待水準を満たしていないのではないかという意見が強い。必ずしも効果が問題なのではない。むしろ使い勝手と副作用が問題だ。
http://www.fda.gov/downloads/Drugs/DrugSafety/UCM459254.pdf
というのは、必要な都度、直前に服用すれば良いバイアグラと違い、アディーは毎日定期的に服用しないと効果が得られず、しかも服用開始から効果を得るまでに数ヶ月を要するのである。しかも低血圧などの副作用のため、アディー服用中はアルコールの摂取ができない。飲酒は命に関わる可能性があるからだ。これだけでも消費者の意欲を削ぐに 十分ではないか、というのが世論である。(医療ジャーナリスト 西村由美子)