米FDA 吸入炭疽病治療薬Anthrasilを承認
公開日時 2015/04/01 03:50
米食品医薬品局(FDA)は3月24日、吸入炭疽病治療薬Anthrasil(一般名:炭疽病免疫グロブリン静脈注射)を承認した。適正な抗菌剤との併用で使用する。
同剤の有効性は、ヒトでの臨床試験は倫理的に困難なため、動物試験(ウサギおよびサル)においてプラセボ対照比較試験が実施された。Anthrasil投与群でプラセボ群との比較、Anthrasilおよび抗生物質との併用群と抗生物質単剤投与群との比較で、Anthrasil投与群ではいずれも生存率を延長させたことが示された。この動物試験の結果により、同剤は、吸入炭疽病患者にもベネフィットがあると考えるのは合理的とされた。
安全性は、74例の健常人で検証された。主な副作用は、頭痛、背痛、悪心、注射部位疼痛および腫脹など。
吸入炭疽病は、炭疽菌に感染した動物あるいは汚染した動物製品に暴露、もしくは意図的な炭疽菌胞子の放出による暴露によって発症する稀な疾患。炭疽菌を吸入すると、炭疽菌は体内で複製を作り、大規模かつ不可逆的な身体組織の障害や死をもたらす毒素を産生する。同剤は、炭疽菌の毒素を標的とするポリクローナル抗体。
同剤は、バイオテロに備え、米国保健省(DHHS)事前準備対応室(Office of Assistant Secretary for Preparedness and Response)内のバイオメディカル先進的研究・開発局(BARDA)の支援を得て開発され、BARDAは、FDA承認前の2011年に米国戦略的国家備蓄対象の治験薬として購入していた。
Anthrasilは、炭疽菌に対する予防接種(BioThrax炭疽病ワクチン)を受けた人の血漿から作製される。その血漿には、炭疽菌によって産生された毒素を中和する抗体を含有している。同剤は希少疾病薬の指定を受けた。
FDAのKaren Midthun生物製剤評価研究センター(CBER)長は、「本日の承認は、生命を脅かす疾患である吸入炭疽病に対する既承認薬に加わる重要な薬剤である。この製品は、炭疽病の緊急事態が発生した際に活用できるように米国戦略的国家備蓄として備蓄される予定だ」と話した。
同剤は米Emergent Biosolutions(本社:メリーランド州ロックビル)が製造・販売する。同剤はもともとEmergent Biosolutionsが2015年3月25日に買収を完了した米ベンチャーの、Cangene Corporaion(本社:カナダ・ウィニ グ市)が開発した。
Emergent BiosolutionsのAdam Havey上級副社長兼バイオディフェンス部長は、AnthrasilはFDA承認を取得した唯一の炭疽病に対するポリクローナル抗体であると説明。「同剤は米国の戦略的国家備蓄における不可欠な製品で、今後も我々は、BARDAおよびCDCと協力して、この計画を推進していく」と意欲を示した。