エーザイの内藤景介代表執行役専務COO兼チーフグロースオフィサーは2月7日、早期アルツハイマー病治療薬・レケンビ（レカネマブ）の24年度売上高について、「425億円達成に向けてオールリージョンで着実に成長している」と強調した。同日開催の25年3月期第3四半期決算説明会で報告した。国別の通期売上見通しは、米国265億円、日本120億円、中国40億円。一方、欧州の承認審査状況について内藤COOは、「２月のEMA・CHMP（医薬品委員会）ミーティングで検討予定」と明かし、「我々としては、欧州委員会から要請された検討事項は、既存の情報で十分かつ明確に対処できるものであり、CHMPにおいて適切に評価されるものと考えている」と強調した。

◎米国　AβPET検査数が前四半期比145%　 BBMプレスクリーニング使用増でAβ検査の陽性率向上

米国におけるレケンビ投与患者数は１万3500人、処方医師数は3000人超（前四半期比120%）、発注医療機関数は約1200機関（前四半期比112%）。内藤COOは、「第3四半期の卸から医療機関に販売されたバイアル数が16万を達成した。これは過去最高のパフォーマンスになる」と強調した。また。米国市場における成長の背景について、AβPET検査数が前四半期比に145%し、レケンビ投与候補者数の受け入れ能力が拡大したと説明。さらに、「BBM（血液バイオマーカー）のプレスクリーニング使用が増加し、Aβ検査の陽性率が向上し、パスウエイの効率性が向上した」と説明した。内藤COOは、「１月から院内PET測定における保険償還の上限額が撤廃となり、今後のPETの測定回数の更なる増加につながる」と述べ、期待感を表明した。

◎日本　投与患者数は6800人、処方医師数1200人超（前四半期比125%）

日本市場は、レケンビ上市以降、投与患者数は6800人に達し、処方医師数1200人超（前四半期比125%）と、「順調に浸透している」とした。また、初期導入する投与施設数（初期導入施設）は660施設（前四半期比120%）と報告した。

内藤COOは、「レカネマブ最適使用推進ガイドラインでは、レケンビの投与開始から6か月投与後に初期投与施設からフォローアップ施設への移行が記述されている。初期施設からフォロー施設への診療連携体制が日本ではキーになる」と述べ、すでに1400施設超がフォローアップ施設として投与開始から6か月以上経過した当事者の受け入れに同意していると明かした。また、MCIの認知度向上を企図してDTC（ダイレクトコンシューマー）を11月に実施し、早期受診行動のさらなる活性化をめざして25年も実施すべく企画中とした。

◎中国　デジタルプラットフォームの利用者約71万人、登録医師は約6300人に拡大

中国市場について内藤COOは、「24年6月末の上市以来、中国のSelf-payマーケットにおいて着実に成長している」と説明。累計実績28億円（第3四半期）を売上げた。内藤COOはまた、「中国の特徴であるBBM（血液バイオマーカー）による確定診断、このエビデンスとなる“ＤESIREモデル”をアカデミアおよび医師主導コホート研究により拡充を進めている」と述べ、「こういった活動を含めて、BBMの社会実装に向けて着実に進捗したい」と強調した。

また、中国ではデジタルプラットフォーム「Yin Fa Tong」（インファートン）をレケンビのパスウェイに活用していることに触れ、「利用者は約71万人、登録医師は約6300人に拡大した」と説明した。インファートンは、京東集団（JD Group）のJD Health（京東健康）と合弁会社「京颐衛享（上海）健康産業発展有限公司」によるオンラインビジネス。内藤COOは、「今年度は中国を含め、その他地域の売上見通し40億円達成に向けて進捗したい」と意欲を示した。

◎欧州　「承認取得に向け、引き続き当局と連携したい」内藤COO

欧州については、24年11月にCHMPから承認勧告を受領したとしながらも、ＥＣ（欧州委員会）の意思決定プロセスの一環として、CHMP（医薬品委員会）に対し、①承認勧告後に入手可能となったレカネマブの安全性に関する情報に基づき承認勧告のアップデートが必要かどうか、②承認勧告のリスク最小化策に関する記載が明確かどうか―で確認が求められていると指摘。２月開催予定のCHMPで検討されると見通し、「承認取得に向け、引き続き当局と連携したい」と述べた。