10年度国内医療用薬市場 薬価ベースで9兆円突破 前年度比1400億円増 IMS
公開日時 2011/05/25 04:02
IMSジャパンは5月24日、2010年度(10年4月~11年3月)の国内医療用医薬品売上高が薬価ベースで9兆円を超えたと発表した。10年度国内売上は9兆358億600万円で、前年度比約1400億円の増加(1.6%増)となった。10年4月の薬価制度改革では一定条件下で薬価を据え置く新薬創出・適応外薬解消等促進加算が試行導入されたものの、薬価の通常改定に市場拡大再算定、長期収載品の特例引下げ・追加引下げなどで業界平均約6.5%のマイナス改定を受けた。それでも医療用薬の売上が9兆円超となったのは、高齢化の一層の進展や、分子標的薬など革新的な高額薬剤が大きく影響したものと見られる(別表に参考資料)。
国内医療用医薬品の市場別売上高は、100床以上の病院市場が3兆5485億1500万円(前年度比=以下同、3.1%増)、99床以下の開業医市場が2兆1870億6700万円(2.0%減)、主に調剤薬局を指す「その他」が3兆3002億2400万円(2.3%増)――だった。IMSは各市場の詳細な分析まで明らかにしていないが、新薬創出加算が適用された製品の病院・開業医市場での使用割合や、後発品使用促進に向けた調剤体制加算の見直しが影響している可能性がある。
売上上位10製品を見ると、1位~4位の製品は前年度と同じ顔ぶれだった。1位はブロプレスで1375億2500万円(9.2%減)、2位はディオバンで1292億2500万円(8.9%減)、3位はアリセプトで1278億5600万円(10.6%増)、4位はリピトールで1083億4900万円(3.8%減)――。トップ4製品の中でアリセプトのみ増収となったが、これはアルツハイマー型認知症患者の増加に加え、新薬創出加算が適用されたことが主要因と見られる。なお、アリセプトは10年度の上位10製品の中で唯一の2ケタ成長製品で、07年度に上位10製品入りして以来、前年度まで3年連続で20%台の驚異的な成長を見せていた。
また、前年度に売上6位だったモーラス(ヒサミツ)は5位に、オルメテック(ダイイチサンキョウ)は7位から6位に順位をひとつ上げた。前年度に売上5位で1000億円製品だったノルバスクは、特許切れによる特例引下げなどの影響が大きく、7位に後退した。一方、上位10製品中9製品が前年度と同じ顔ぶれだが、パリエットが9位で新たに浮上した。
◎抗腫瘍薬 分子標的薬を中心に急成長
次に薬効別の売上を見てみると、レニン-アンジオテンシン(RA)系作用薬が6240億9800万円(1.3%増)とトップを維持。2位も前年度と変わらず抗腫瘍薬で6001億9000万円(8.6%増)だった。ただ、この1位と2位の差は前年度の約630億円に対して今回は約240億円まで縮まり、抗腫瘍薬の急成長ぶりが見て取れる。
抗腫瘍薬市場をけん引するのは分子標的薬で、薬効内トップに躍進したアバスチン(642億2000万円、40.2%増)がその代表格。アバスチンは新薬創出加算が適用された。ネクサバール(152億7900万円、33.9%増)、タルセバ(95億7800万円、34.5%増)も好調で、10年6月に上市されたベクティビックス(95億3100万円)も快調な立ち上がりを見せた。一方、前年度トップだったグリベックは市場拡大再算定もあって424億8900万円(7.7%減)で今回3位となった。
◎DPP-4阻害薬ジャヌビア 糖尿病治療薬内で売上4位に
一方、RA系薬剤では単剤のオルメテックとARBベースの配合剤が好調だった。CCBでは薬効内トップがノルバスク(825億2500万円、22.7%減)、2位がアムロジン(467億9400万円、22.8%減)だが、10年4月の薬価改定で後発品初参入による特例引下げに、2.2%追加引下げも加わり、そろって20%以上の減収となった。アムロジピン後発品では、Meijiの後発品が41億1800万円(45.6%増)、日本ケミファの後発品が29億8700万円(29.5%増)、エルメッド・エーザイの後発品が29億1500万円(46.7%増)――だった。
DPP-4阻害薬など新規機序の新薬が相次ぎ上市された糖尿病治療薬ではアクトス、ベイスン、アマリールの売上上位3製品は前年と同じ顔ぶれだったが、そろってマイナス成長だった。一方で、09年12月に上市したDPP-4阻害薬のジャヌビアは209億1700万円(800.7%増)で4位に、グラクティブは118億4400万円(793.2%増)で同10位にランクインした
そのほか、喘息及びCOPD治療薬では、前年度トップだったシングレアは426億1600万円(10.7%増)で今回2位。替わって吸入ステロイドのアドエアが437億8800万円(16.4%増)で今回トップとなった。
◎国内売上トップ3は武田薬品、ファイザー、第一三共
製薬企業の国内売上上位20社(販促会社ベース)を見ると、20社の売上総額は6兆363億3100万円(2.8%増)で、全体の66.8%(0.8ポイント増)を占めた。国内売上トップ3は武田薬品、ファイザー、第一三共。上位20社のうちプラス成長は内資6社(9社)、外資9社(9社)の計15社(18社)。成長率が最も高かったのはサノフィ・アベンティスで、MSDやアボットと外資が続いた。内資では協和発酵キリンが最も高かった。
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