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アントレプレナー視点の重要性

エディタV2

11月号『MRは「医師が時間を割くだけの等価」考えよ』から思うこと

こちらのコーナーでは、ミクス本誌の記事から人事担当者の目線で気になった記事を主にキャリア開発の視点から読み解いていきます。
製薬業界に関するニュースが日々飛び交うなかで皆さまのキャリア構築の一つの視点として読んでいただけますと幸いです。

今回は、11月号に掲載されているPwCコンサルティング合同会社主催セミナー内での医師の上記発言にフォーカスを当てたいと思います。

「求められる存在になること」の重要性 
「極論で語れば“仕事じゃないよ”っていうのはかなりのキーワードかなと思っている」。これは、聖路加国際病院の若手医師がMRと面会するモチベーションについて発されたひとことですが、製薬メーカーの社員にはかなりのインパクトをもって突き刺さるのではないでしょうか。ちなみに、同セミナーでは、このワード以外にも、「第一印象で会うMRを選んでいる」、「会いたいと思わせるキャラクターやコミュニケーション力があるMRとは前向きにお付き合いしたい」などといった医師のコメントも紹介されており、製薬メーカーの担当者はかなり緊張感をもってドクターと接する必要があることをあらためて思い知らされます。

さて、一見厳しく感じられるこれらの言葉ですが、顧客満足の追求がビジネスの原点であることを考えるとごく当然の内容だということに異論を唱える方は多くないと思います。端的に言うと、ビジネスを成立させるためには自分自身が顧客から求められる存在になる必要があるということですが、実はこの考えはキャリア開発にも当てはまります。もちろん、キャリア開発の場合は「顧客」からではなく、「会社」または「社会」から求められる必要があるわけですが、このことを意識してキャリアを考えている方は案外少ないように感じています。

キャリア開発を考えるフレームワークとしては、「Will」「Can」「Must」(*)が有名ですが、多くの方はこの順番通りにご自身のめざすゴールを設定されているのではないでしょうか。もちろん、そのこと自体が悪いわけではないのですが、WillやCanを軸に考えたキャリアビジョンが会社や社会のニーズと合致していなかった場合には適切に軌道修正する必要が生じることを理解しておく必要があります。当たり前のことのように感じられるかもしれませんが、自分の強みや興味の対象が明確になっている人ほどMustを軽視してしまい、軌道修正がうまくいかないケースが散見されます。そうなると、自身のビジョンを達成しようとしてもそれを実現するポジションがないといった状況に陥ってしまうことがあるのです。
キャリア開発に有効な起業家視点
世の中の変化のスピードが緩やかだった20-30年前までは人の成長スピードと会社の成長スピードが釣り合っていたため、個々の社員が描く自身の将来像が会社からの期待と大きく乖離することが少なく、Will/Canベースのキャリア開発が機能していました。しかし、一つのイノベーションによって一気に業界のトレンドが変わったり、ITやAIの活用によって一瞬にして業界のスタンダードが変わることが珍しくないこの時代、会社の成長スピードが人の成長スピードを凌駕するようになると、「この先、どのようなスキルや技術をもった人材が求められるようになるのか」ということや、「どんな仕事をすることが求められるのか」を先手を打って考える必要が出てきます。これが、Mustベースでキャリアを考えることが重要になる理由です。

では、Mustをどのように考えればよいのでしょうか。いろんな方法論があると思いますが、個人的には、「何がどうなれば現状がもっと良くなるだろう?」という問いの姿勢を持つことだと考えています。このとき、「解決すべき社会課題は何だろうか?」と大げさに考えてしまうと抽象度が高くなりやすいので、「~~に悩む多くの患者さんが完全に社会復帰するためにはどこでどんなサポートが必要だろう?」とか、「担当地域のすべてのドクターの労働時間を短くするためにはどのようなコミュニケーション手段/ツールが有効だろうか?」などと、視座を少し下げて具体性を持たせながらある程度の汎用性があるテーマをMustの元ネタとして置いてみるとよいと思います。

世の中のビジネスの多くは、日々遭遇する個々の問題に共通するボトルネックを抽出し、その解決策を今までにないアイデアで解決することで成立していると言えますが、この解決策こそが「社会から期待されていること」、即ちMustに他なりません。このように考えると、Mustを考えることは、「自身が担当する業務エリアの新しいニーズを具現化し、それに対応する業務を提案すること」とも言えるのではないでしょうか。変化の激しいこの時代、いま既に存在するポジションがいつまでも存在するとは限らないことを考えても、アントレプレナー(社内起業家)のようなスタンスで新たな価値創出のアイデアを考え、自身が中心になってそれを実現する仕事を立ち上げて遂行していくことがキャリア開発に求められている視点だと言えそうです。


(*)キャリア開発を考えるフレームワーク「Will」「Can」「Must」とは...
Will:自分がやりたいこと、興味のあること
Can:自分ができること、得意なこと
Must:自分がやらなければならないこと
の3つの要素が交わるエリアを自分のキャリアゴールに置くという考え方のこと。

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