ミクス編集部では、現役MRを対象にキャリア観や将来像について尋ねるアンケート調査を実施した。その結果、自身の将来について不安を感じているMRの割合は94.7%―。職種や製薬業界の将来に不安を感じている人が多い現状が明らかになった。一方、不安を感じながらもMRの仕事が好きで、できれば続けたいと願う人や、これまで培った知識や経験を生かして製薬・医療界に貢献したいと考えている人も多い。MRとして生き残る、あるいは自身の将来の幅を広げるために、スキルアップや自己研鑽のあり方を模索している人も相次いだ。
自律的なキャリアの必要性が叫ばれて久しいなか、MRは自身のキャリアに対して、どのような考えを持ち、将来に向かって進んでいるのだろうか――。アンケート調査は“いまどきMR”の実態を探ろうと実施した。調査期間は6月6日から20日まで。ミクスオンラインで回答を募り、76人から回答を得た。
調査では、「仕事やキャリアに関して、自身の将来について不安を感じますか?」との問いに、「感じる」「感じない」の2択で回答してもらった。その結果、「感じる」と回答したのは94.7%、「感じない」は5.3%だった。
不安要因は職種などの環境面
不安の要因として最多となったのは「職種の将来性」で全体の69.7%を占めた。次いで「会社の将来性」(53.9%)、「製薬業界の将来性」(48.7%)と続いた。MR数削減やMR不要論、早期退職制度の相次ぐ導入などが背景にある。なかには、「入社時よりも売上が半減し、空気が悪く退職者が多い」(内資系・30代)などの声もあった。
一方で転職先の希望を尋ねたところ、最多となったのは同業他社のMRだった。回答者の半数が選択した。次いで「転職は考えていない」(26.3%)、「MR以外の職種で同業他社」(22.4%)と続いた。職種や業界に対する不安感が強い人が多いものの、転職となった場合には、MRや同業他社を希望に挙げる人が目立つという矛盾した結果となった
年齢などを理由に、不安感を感じながらもMRや製薬業界を離れるのが怖いという本音のほか、本当はMRという職種が好きでやりがいを感じる人が多く、自分たちは医療現場にとって必要な職種であると信じるMRが多く存在していることが見えてきた。
キーワードは“やりたいこと” “やると有利なこと”
では、こうしたなかで私たちはどのように自身のキャリアについて考えていけばいいのか。MRとしての経験があり、現在は経営戦略の専門家である専修大学の髙橋義仁教授は、「“やりたいこと”と“やると有利なこと”のどちらを優先するか、考え方は様々だ」と語る。
ただ“やりたいこと”と言っても、自分のなかで答えを出すのは結構難しいというのが本音ではないだろうか。もちろん最終的には自分で考えるしかない訳だが、それを手助けしようと動き出した企業もある。ツムラは、「セルフ・キャリアドック」と呼ばれる制度を導入した。キャリア相談窓口を設置し、社員が抱えるキャリアに対する悩みに対応することで、キャリアの具体像を描けずにいる社員の背中を後押ししようとしている。
一方“やると有利なこと”の1つは、やはりDXやAIなどデジタル領域のスキルの獲得ではないか。製薬各社もこぞってデジタルリスキリングプログラムを導入していることがその答えだ。
スキルアップに励むMR
こうしたなかで将来を見据え、自律的にスキルアップに向けた行動を開始したMRも多くいる。アンケートで、自身のキャリアのために取り組んでいることについて、自由回答で尋ねたところ、ITパスポートや医療経営士などの「資格取得」(18%)、「語学の習得」(17%)に取り組む人が目立った。マネジメントスキルなどの「自己研鑽」に取り組む人も17%に上ったほか、「デジタル領域」の勉強に取り組んでいるMR(12%)や、MBAの取得などを目指し、ビジネスの勉強に励む人(11%)も相次いだ。
このほか読書などの「情報収集」(12%)、「副業として薬剤師の職務経験を積む」(40代、MR)、「将来プラスになるための人間関係作り」(50代以上、MR)に取り組んでいるという人もいた。いずれも編集部が寄せられた回答をキーワード別に分類した。
一方、「特になし」と回答した人も2割に上った。回答者の属性を見ると、50代以上が6割を占めたが、30代・40代も含まれていた。このなかには、何かをしたいという焦りはあるものの、何をしたらいいのかわからないという人も含まれているのかもしれない。
ただ、業界をめぐる外部変化が厳しく、業界にいるほぼ全員が不安を抱えるなか、「それでも」と立ち上がり、キャリアの模索を続けるかどうかが、今後のキャリアの明暗を分けるのではないだろうか。
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