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ポスティングへのチャレンジ率 2030年「2人に1人の社員が手挙げ」 中外製薬の新たなる挑戦

エディタV2

中外製薬が9月30日に公表した人的資本レポート「People & Culture Report」2024によると、同社の経営目標である「TOP I 2030」達成に向けて、人財マネジメント方針で定める3つの「個」(描く・磨く・輝く)を強化する数値目標(KPI)を外部に開示した。同社は2025年1月から新人事制度を導入する方針をすでに明らかにしているが、これにより社員の自主的なポスティングへのチャレンジ率を2023年実績の33%(任用割合)から、2030年に「手挙げ率で50%」まで引き上げる計画だ。製薬各社が人員削減を打ち出す昨今、社員のやる気やモチベーションを向上させ、自律的なキャリア形成とチャレンジを促す風土を一層後押しする会社方針を打ち出したことは、まさに注目に値するものだ。

「一般社員であっても社内の高度専門人財のポジションに“手上げ”で応募できるほか、健康で働きたい意思と成果を出せる人財であれば、会社とのマッチングで65歳を超えても働くチャンスを得ることができる」-。7月29日の社長懇談会で奥田修社長CEOは、こう強調した。続けて、「社員一人ひとりが自分で考え、キャリアを自らデザインでき、主体的に実行できる人財」を求める考えも表明している。この日の取材を通じ、奥田社長CEOの決意を垣間見た気がした。

「TOP I 2030」の実現に向け、人財の「個」の力をより一層高める
同社が公表した人的資本レポートでは、経営目標である「TOP I 2030」の実現に向けて、価値創造の源泉である人財の「個」の力をより一層高め、「志を持って挑戦し続ける人財の増加」、「人財を支える仕組みの整備」、「挑戦・成長を促す文化の醸成」を通じて、連続的なイノベーションを増やすことが必要だと強調した。その上で、「個を描く」、「個を磨く」、「個が輝く」という“3つの個”の枠組みに基づき、「TOP I 2030」のゴールに掲げる「R&Dアウトプット倍増」、「自社グローバル品 毎年上市」の達成につながる各種施策と目標値を定めた。
17項目の重点指標(KPI)を定義 高度専門人財の充足度 2030年に90%達成へ
具体的には、17項目の重点指標(KPI)を定義。「個を描く」では、「多様性のある高度専門人財」、「価値観を体現する人財」、「主体性のある人財」の3テーマに沿って、6つのKPI をトラッキングする。このうち、サイエンス専門人財、デジタル専門人財、メディカルドクター人財など高度専門人財の充足度については、22年実績の42%、23年実績の66%を30年に90%まで引き上げる。レポートでは、「デジタル人財充足度は目標値にかなり近づいている一方で、メディカルドクター人財の充足度は38%にとどまっており、今後対策を講じていきたい」と強調した。また、Core Values への共感度については、22年実績の81%を30年は100%達成を目指す目標とした。
ロシュ人財交流プログラム派遣者数 2030年目標は「社員の1割程度」
「個を磨く」では、「成長実感を促す人財育成」、「社外ネットワーク機会の創出」、「次世代経営人財の計画的な育成」の 3つのテーマに沿って、5つのKPIをトラッキングしている。このうち、社員一人あたりの育成投資額については、人財育成に関するプログラムを着実に拡充させたとし、その結果、21年実績19.5万円、22年実績21.6万円、23年実績25.6万円と増加。30年は「投資額30万円」を目標に据えた。また、ロシュ人財交流プログラム派遣者数も累計261人を派遣してきたが、30年にはさらに拡大させ、「社員の1割程度」を派遣するとした。
上司と部下の1 on 1「Check in実施率」の目標100% 自立支援型マネジャー育成
「個が輝く」では、「挑戦を促す風土」、「自律支援型マネジャー」、「多様性を活かすD&I
の推進」をテーマに「その他-健康経営」を加えた6つのKPIをトラッキングしている。このうち、ポスティングへのチャレンジ率については、21年実績12%、22年実績29%、23年実績33%(それぞれ任用割合)と着実に伸ばしてきたが、25年1月に導入する新人事制度により、社員の自律的なキャリア形成を一層後押しし、30年には「手挙げ率で50%」を達成する目標を掲げた。さらに、社員の挑戦、成長の支援を目的とする上司と部下の1 on 1である「Check in実施率」も22年実績78%を30年には100%まで引き上げる目標を据えた。上司と部下の質の高いコミュニケーション実施の場を提供することで、「自律支援型マネジャー」の育成にも努める方針だ。
取材目線で感じる「現実論」
先行き不透明な時代だからこそ、社員に自律的成長を求めたいと願う企業経営者は多い。デジタルやAIの時代になり、会社も旧来型人事やサイロ化した“縦型組織”の見直し・解体論が巻き起こりつつある。どこの産業も同様だが、顧客ニーズの多様化やAIの深透に伴う新たなイノベーションの発掘など、これまで経験しなかったような社会が目の前に迫っている。こうした時代になると、過去の栄光や実績がなかなか活かされず、逆に過去の栄光を伝承することの虚しさを感じることさえある。

私自信もオールドタイプの一角を占める立場にいるが、社会構造や社会環境の変化は、これまで感じてきた以上にスピード感を増していると感じる場面が明らかに増えた。考える暇すら与えられず、“次の打ち手”をどう判断すべきか迫りくる圧を感じることさえある。社会は着実に2極化の方向に進んでいる。だからこそ、まず目の前の課題に対峙する際は、他人事でなく、自分事化する能力が求められる。加えて、目の前の事象を正確に判断する“目利き力”も求められる時代となった。いまさらではあるが、自身のキャリアを自分事化して考えるということ、それは現代人にとっての“いまを生きる”ことを意味しているのではないかと痛感している。
 

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