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24年5月号『製薬企業よ 恐れずにファーストペンギンになれ!』から思うこと

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こちらのコーナーでは、ミクス本誌の記事から人事担当者の目線で気になった記事を主にキャリア開発の視点から読み解いていきます。
製薬業界に関するニュースが日々飛び交うなかで皆さまのキャリア構築の一つの視点として読んでいただけますと幸いです。

今回は、5月号に掲載されている厚生労働省 医薬局の課長へのインタビュー記事、『製薬企業よ 恐れずにファーストペンギンになれ!』にフォーカスを当てたいと思います。

リスクは成功のために乗り越えるべき壁 
今回のインタビュー記事のリード文にある「ファーストペンギン」というワードに目を引かれた方は多いのではないでしょうか。ファーストペンギンとは、集団で行動するペンギンの群れの中で、餌となる魚を求めて最初に海に飛びこむ1羽目のペンギンのことをさし、危険が潜む海に最初に飛び込むリスクテイキングやチャレンジ精神の象徴として表現されます。これらの資質はビジネスの世界で厳しい競争に勝ち抜いていくための必須要件とされていますが、特に地球規模で情報伝達のスピードが早くなっている昨今はファーストランナーが世界の市場を席捲することも多いため、「勇気をもって先駆者になる」ことの重要性はひときわ高くなっています。

そのことを示す事例の一つにポストイットがあります。これは、スリーエム社の研究者が航空機の製造に使用できるほどの強力な接着剤を開発していた際に失敗作として生まれてきたものがその原型ですが、接着剤として致命的な粘着力の弱さに敢えてフォーカスするというリスクを世界で初めて取ったことが成功につながったと言われています。また、ある発展途上地域で初めてチョコレートを口にした人たちはそのメーカーのチョコレートこそがチョコの味だと感じるようになり、その後参入するメーカーは苦戦を強いられるという事例もありますが、このケースも、現地で受け入れられないかもしれないというリスクを恐れずに真っ先に市場を開拓した成果だと言えそうです。
Low-RiskはLow-ReturnではなくNo-Returnとなる時代
旧来、ビジネスの現場では、「Low-Risk, Low-Return」「Hi-Risk, Hi-Return」という暗黙の了解がありました。その考えに基づくと、よほど追い込まれた状況に陥らない限り不必要なリスクは取らなくてもよいという発想になり、「ひとまず様子を見よう」という判断をしがちになります。もちろん、この慎重さが程よい結果をもたらすこともありますが、機を逃すことによって先行企業にどうすることもできないほどの差をつけられるケースもあります。たとえば、OSのWindowsや検索エンジンのGoogle、フードデリバリービジネスのUber*などが後発企業を大きく引き離していることはその典型例ですが、これらの製品やサービスを見ていると後発企業群が利益を充分な確保することが難しくなってきているとさえ感じます。

実はこの「先行者有利」の原理はキャリア開発にも当てはまります。たとえば、医薬品業界でオンコロジー領域の薬剤が出始めた頃にその新しいビジネスにチャレンジされた方は右も左も分からない中で日々の苦労が相当大きかったと思いますが、その後のキャリア開発においては社内外問わず引く手あまたで、今はきっと理想のポジションに就かれているのはないでしょうか。逆に、オンコロジー経験者が増えてきてからのチャレンジは、参考となるお手本やマニュアルは充分に整備されている一方で、ライバルも多いのでポジションを得るための競争は激化してしまいます。もし、こうしたレッドオーシャンの状態で転職を検討すると給与条件が希望と合わないことも多くなるので、まだ先駆者が少ない業界への転身など、視野を広げた活動を並行して行うことが賢明と言えます。
*MMD研究所の調査「直近1年間で利用したフード注文・配達プラットフォームのアプリ」では、日本国内ではUber Eatsと出前館が約70%、3位:menuは25%、4位:Wolt:10%、5位以下の5社は各1.5%以下
ファーストペンギンになるために必要なマインドセット
キャリア形成においても先手必勝だと分かっても、最初に海に飛び込む決心をすることは簡単でないかもしれません。その理由は概ね、
① 決断するだけの材料が揃っていない
② 自分の決断に確証がもてない(失敗することが怖くて決めきれない)
のいずれかだと思いますが、それぞれに有効な解決策があるのでご紹介したいと思います。

まず、①に関しては、「BestではなくBetterを考える」ことで解決します。自分に対してBest Choiceを義務付けると決断のハードルが高くなるため、敢えてBetter Choiceを許容して、その中でのBest Wayをめざすという考え方に変えてみてください。Better Choiceであれば判断材料が少なくても決断しやすいと思います。

次に、②については、「決断後、その決断が正しかったと思えるまで努力する」ことが有効な解決手段となります。上記①と似ていますが、状況が刻々と変化する中で100%正しい決断を下すこと自体そもそも不可能なので、決断そのものよりもその後の行動を重視するという考え方に変えるということです。これはよく知られたことですが、世の中の成功者のほとんどが、決断そのものではなく、その決断にもとづいて成果が出るまで努力し続けることにパワーを使っています。

今回は2つのマインドをご紹介しましたが、実はこの2点には共通点があります。それは、「決断」よりも「実行」に重点を置いているということです。もちろん、リスクを甘く見積もるべきではありませんが、リスクを回避するという発想だと決断が遅れがちになるので、リスクの存在は許容したうえで自身の行動でそれらを確実に潰し込むという考え方にシフトすることが重要だと感じます。これこそがファーストペンギンへの道ではないでしょうか。

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