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時代の変化に負けないキャリア開発のコツ

エディタV2

24年6月号『働き方改革への対応 Pull型重視の活動にシフト』から思うこと


こちらのコーナーでは、ミクス本誌の記事から人事担当者の目線で気になった記事を主にキャリア開発の視点から読み解いていきます。
製薬業界に関するニュースが日々飛び交うなかで皆さまのキャリア構築の一つの視点として読んでいただけますと幸いです。

今回は、6月号に掲載されているMR数調査に関する記事、『働き方改革への対応 Pull型重視の活動にシフト』にフォーカスを当てたいと思います。
「部長になりたい」というキャリア観にはリスクがある 

キャリアの相談を受けていると、「45歳くらいで部長になりたい」という方や、「30代のプロマネをめざしています」といった方とよくお会いします。社内で行われる上司とのキャリア面談は、“具体的な目標ポジション”と“到達期限”を設けて、その実現に必要なスキルや求められる経験を積むための方策を考えるというスキームに基づいて行われることが一般的ですが、実はここにはある盲点が潜んでいます。

それは、そのポジションに求められる役割が変わる可能性があるということです。多くの会社ではビジネスの成果をより効率的に挙げるために常に組織変更を行いますが、それに伴って自分がめざしているポジションの位置づけやそのミッションが変更されることも少なくありません。最悪の場合、他のポジションと統廃合されてなくなってしまケースもあるでしょう。こうしたミッションの変化はそのポジションに求められるスキルや経験値が変わることを意味するのですが、その変化を把握していないとスキルアップの方向性がズレてしまい、めざすポジションに到達しにくくなります。そのような事態に陥ることを防ぐためには、自分がめざすポジションに課されるタスクの変化を常にウォッチしながら磨くべきスキルを正確にアジャストしていく必要があります。ビジネス環境の変化が激しくなるこれからの時代はそうした動きが従来以上にダイナミックで大胆になっていくことが予想されるので、アジャストの頻度や範囲も今まで以上のレベルで求められるようになっていきます。

キャリア開発の原点は「どんな人にどんな価値を届けたいか」

一方で、めざすキャリアを明確に描けないという方もおられます。特に若手や中堅の方の場合、社内の各部門でどのような仕事をしているのかを詳細に把握できていなかったり、その仕事の先のキャリアパスのイメージがわかないという方は少なくありません。このような方にはいつも、「どのような人々にどのような価値を届けることに意義を感じるかを考えてください」ということをお伝えしています。言い換えると、キャリアを考えるときに“ポジション”ではなく“生み出す価値”に焦点を当てるということですが、ここでは、価値からキャリアを考える際のポイントをお伝えしたいと思います。

1) 行きつく先を一つに限定しない
どのような価値を届けたいかを考えたら、次は「その価値を生むためにはどんな仕事をすればよいか」を考える必要があります。たとえば、「より多くの患者さんが薬剤に確実にアクセスできるようにする」という価値を実現するために考えられるタスクは、
・製品を全国津々浦々に浸透させるスキームを構築すること
・効果的な営業のコミュニケーション法を考え、全国の営業所に水平展開すること
・患者会との効果的なコミュニケーション機会を創出すること
などいくつも考えられますが、この思考の幅を狭めないことが大切です。キャリアを考えるときには自身のバックグラウンドを意識することが多いと思いますが、そこを強く意識しすぎるとキャリアパスの幅が狭まりやすくなります。逆に、価値の創出につながるアプローチをできるだけフレキシブルに考えることで、自身が進んでいく範囲を広げやすくなります。

2) ポジションがなければ作ればいい
自分が創出したい価値を生み出すタスクを担えそうな部門やポジションが社内にないこともあります。このとき、諦めてしまう方が多いと思いますが、ポジションをつくるというチャレンジをお薦めします。もちろん、決して簡単なことではありませんが、“そのタスクに近い仕事(または親和性のある仕事)を行っている部門のマネージャーに掛け合ってみることで道が拓けることもあります。どのマネージャーも自部門の成果を高めて存在価値を高めたいという思いはあるので、自身のアイデアをそのマネージャーにとってメリットのある形に変換できれば勝算はゼロではありません。もっとも、人員を増やすことは難易度が極めて高いので、自身の提案を患者さんや医療従事者、また 会社にとって本当に価値の高いものにまで研ぎ澄ませることが大前提となります。

3) 社外に活路を見出すことも一考
自分の思いを社内で実現することが難しい場合は社外の機会を探るという手もあります。会社はそれぞれに経営理念やビジネスの状況が異なるため、もし今の会社で望むポジションが見つけられなかったり、創出できなかったとしても、他の会社ではそのチャンスを得られる可能性があります。特に、自分が創出したい価値に通じるビジネスを既に展開している会社であればその可能性は高まります。ただ、どこの会社であれば親和性が高いのかを見極めることは容易ではないので、知り合いやエージェントをうまく活用して的確な情報を得ながら探していくことをお薦めします。このとき、短期的な視点ではなく中期的に可能性を探っていくことで自身が思う価値をより創出しやすい環境を見つけやすくなるので、結論を急がない姿勢が重要になります。

価値の検討は未来予測から
さて最後に、「そもそも自分が生み出したい価値が思いつかない」という方のために着想のヒントをお伝えすると、それは、「医療における未来の世界を予測すること」になります。未来像を予測することで、そこにどのようなニーズや困りごとがあるのかを想像することができるようになりますが、それらを解決する方策が“価値”となります。

このとき、“予測”と大上段に構えてしまうと、膨大な情報を集めて論理的に深く考えることが必要になってハードルが上がるので、「どんな世界だったら良いと思うか(希望)」を自由に考えてみるくらいでよいと思います。たとえば、自分や家族がこんな病気を患ったとしたらどのような治療を選択したいかや、どのような行動を取りたいかということは想像しやすいと思います。そのうえで、それらを可能にするために製薬メーカーはどのようなサービスを提供すべきかを考えていけば、患者さんやその家族にとっての価値が見つけやすくなると思います。他にも、医療従事者視点や行政の担当者視点で考える価値なども製薬メーカーの土俵になる可能性が高いので、価値の提供対象をあまり限定せずに幅広く考えてみてもらえればと思います。ちなみに、ニーズや困りごとは時代の変化とともに変わるもので、社会情勢にも影響を受けます。コロナ禍や医師のはたらき方改革などはその一例ですが、そうした状況下で求められるサービスを考えてみることも新たな価値の早々に繋がります。


さて今回は、「時代の変化に負けないキャリア開発のコツ」ということをテーマにお伝えしてきましたが、なにか一つでも皆さまのキャリア開発のヒントになれば幸いです。

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