乾癬薬市場 企業は参入したくてウズウズ
公開日時 2012/08/02 04:00
乾癬治療薬市場は、抗TNFα阻害剤の参入により、競争激化の様相を呈している。アムジェンのEnbrel(エタネルセプト)、アボット・ラボラトリーズのHumira(アダリムマブ)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のRemicade(インフリキシマブ)の商業的成功は、乾癬による痛みと炎症を持つ皮膚病変を治癒できる全身療法の市場参入の機会を示すことになった。
これら3剤は感染症や悪性腫瘍などの重篤な副作用のリスクがあるが、皮膚科専門医らは、過去10年間で、その安全性プロファイルには満足するようになってきた。
このことは、同市場に今後参入する薬剤については、TNF-αよりも優れた効果と明確な安全性プロファイルを持っていることが求められる。しかし、生物製剤は高薬価だけに、適正な価格が新規薬剤参入の機会の1つともなっている。
米市場調査会社デシジョン・リソース社によると、乾癬治療薬市場の規模は、2010年は41億ドルだが、2020年には2倍の82億ドルに成長すると見込まれる。その成長に大きく寄与するのは、HumiraとJ&J子会社ヤンセンバイオテクのインターロイキン12/23阻害剤Stelara(ウステキヌマブ)の使用拡大と今後参入が見込まれる新規作用機序を持った薬剤の登場だという。
Humiraの乾癬に対する適応は2008年に承認されたが、関節リウマチでの有効性・安全性はより長期にわたって示されてきた。Stelaraは2009年に承認された。
米国では、約700万人が乾癬に罹患し、患者は一般的に関節リウマチやクローン病のような他の自己免疫疾患よりも若く健康なのが特徴だ。さらに乾癬は治療を生涯必要とする疾患である。患者の80%程度は軽症で、レオファーマのDavonex(calcipotriane)およびTaclonex (calcipotriane/betamethasone)やガルデルマ・ラボラトリーズのClobex(clobetasol)による治療が行われている。
中等症から重症の患者では全身投与薬の治療を必要とする。全身投与薬には、メトトレキサート、EnbrelあるいはHumiraが第1選択で、次いで、StelaraおよびRemicadeの処方となっている。Remicadeは、EnbrelやHumiraと異なって静注であり、重症患者の適応となっている。
Stelaraは、他の生物製剤が関節リウマチを標的として開発されていたのとは違い、乾癬を標的に開発された。同剤は、皮膚細胞の過剰産生や炎症に寄与するIL-12 およびIL-23 を阻害し、臨床試験では、Enbrelに対して有効性では優位性を示し、副作用では他の抗TNFα阻害剤と同等だった。同剤は投与面での長所を持っている。Humiraは隔週1回投与、Enbrelは週2回投与だが、Stelaraは、12週ごとの投与で済む。
IL-12/23阻害剤のほかにIL-17 阻害剤にも注目が集まっている。いくつかはすでに後期開発段階に入っている。ノバルティスのsecukinumab、イーライリリーのixekizumab、アムジェン/アストラゼネカのbrodalumabの開発レースが激化している。secukinumab とixekizumabはIL-17リガンドのIL-17 Aを特異的に標的としており、brodalumabはIL-17受容体全体を標的とし一度で数個のIL-17リガンドを阻害するよう設計されている。どちらのアプローチが良いか現段階では不明だ。3社ともフェーズIIデータを報告、フェーズIIIに入っている。3社ともEnbrelとの直接比較試験を行っている。
一方、ファイザーは、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤tofacitinibdeをフェーズIII開発中だが、これにより経口乾癬薬市場への参入を狙っている。関節リウマチではすでに申請済みだ。FDAの諮問委員会は同剤のRAでの適応を患者を絞る条件で承認勧告した。
今後の乾癬治療薬の開発の進展に目が離せないが、全身投与薬の後期パイプラインは以下の通り。製薬企業、薬剤、作用機序、開発段階の順。
*アムジェン/アストラゼネカ brodalumab IL-17阻害剤 フェーズIII
*セルジーン・コープ apremilast フォスフォジエステラーゼ4阻害剤 フェーズIII
*イーライリリー ixekizumab IL-17阻害剤 フェーズIII
*イーライリリー、インサイトコープ提携 baricitinib JAK1/JAK2阻害剤 フェーズII
*ジョンソン・エンド・ジョンソン CNTO1959 IL-23阻害剤 フェーズII
*メルク MK-3222 IL-23阻害剤 フェーズII
*ノバルティス secukinumab IL-17阻害剤 フェーズIII
*ファイザー tofacitinib JAK3阻害剤 フェーズIII
The Pink Sheet 7月23日号