薬食審医薬品第二部会は3月3日、新薬5成分の承認の可否について審議し、全ての承認を了承した。武田薬品が申請した多発性骨髄腫に経口投与で用いるニンラーロカプセル(一般名:イキサゾミブクエン酸塩エステル)などがある。
【審議品目】(カッコ内は一般名と申請企業名)
▽ムンデシンカプセル100mg(フォロデシン塩酸塩、ムンディファーマ):「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。
選択的にリンパ球の増殖を抑制する新規のPNP(Purine Nucleoside Phosphorylase、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ)阻害薬。低分子化合物。
「末梢性T細胞リンパ腫」と「その他および詳細不明のT細胞リンパ腫」の患者数は計2000人以下と報告されており、ムンデシンの効能・効果の「再発又は難治性―」となるとさらに患者数は限定される。類薬はなく、類似の効能・効果を持つ薬剤としてポテリジオ点滴静注やアドセトリス点滴静注がある。海外では開発されていない(16年10月現在)。
▽ニンラーロカプセル2.3mg、同3mg、同4mg(イキサゾミブクエン酸エステル、武田薬品):「再発又は難治性の多発性骨髄腫」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。
経口プロテアソーム阻害薬。免疫調節薬レナリドミド、副腎皮質ホルモン製剤デキサメタゾンの各経口薬と併用して用いる。ニンラーロが承認されれば、国内初のプロテアソーム阻害薬を含むすべて経口の3剤併用療法が可能となる。
類薬にはベルケイドやカイプロリスなどがあり、ニンラーロは再発又は難治性の多発性骨髄腫に対する治療選択肢のひとつとなる。海外では米国、EUを含む6つの国・地域で承認済(16年11月現在)。
▽ソバルディ錠400mg(ソホスブビル、ギリアド・サイエンシズ):「セログループ1(ジェノタイプ1)またはセログループ2(ジェノタイプ2)のいずれにも該当しないC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」の効能・効果を追加する新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余(2023年3月25日まで)。
これまでにジェノタイプ2に対する効能・効果が承認されており、12週投与で用いる。今回の追加効能は、ジェノタイプ3~6にも使えるようにするもので、24週投与で用いる。今回の追加効能も、リバビリン製剤のレベトールカプセル200mgもしくはコペガス錠200mgと併用する。レベトール、コペガスともこの日の部会で報告品目として扱われた。
日本のC型肝炎ウイルスジェノタイプ3の感染患者は約2800人、ジェノタイプ4~6は極めて少数とされる。ジェノタイプ3に対して日本エイズ学会、日本肝臓学会などから開発要望があり、厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」での評価を受け、開発要請された経緯がある。
海外ではジェノタイプ3に対するソバルディ、リバビリン併用レジメンは欧米を含む69の国・地域で承認済(16年12月現在)。ジェノタイプ4~6に対する同併用レジメンは、欧州でペグインターフェロンαの投与に不耐容または不適格の患者に対してのみ適用されている。
▽ゾレア皮下注用75mg、同150mg(オマリズマブ(遺伝子組換え)、ノバルティスファーマ):「特発性の慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分な患者に限る)」ほ効能・効果に追加する新効能・新用量医薬品。再審査期間4年。
慢性蕁麻疹は、発症後1カ月以上を経過したものとされ、同剤の適応と見込まれる患者数は約5万人。標準薬に位置付けられるヒスタミンH1受容体拮抗薬で効果不十分な場合の治療薬は日本では承認されていないという。
効果不十分な場合は、適応外使用としてヒスタミンH2受容体拮抗薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬が併用されるほか、重要例には副腎皮質ステロイド経口薬の短期的使用や免疫抑制剤が使用されている。しかし、いずれの薬剤についても臨床効果の科学的エビデンスが不十分であり、副腎皮質ステロイド経口薬(重症例の承認はあるが、慢性例は除外)は副作用の懸念があることから、同剤が開発された。
同剤は、血中や皮膚内の遊離IgEに結合し、肥満細胞(マスト細胞)および白血球の一種である好塩基球といった症状に関与する因子の活性化を抑え、そう痒・膨疹といった症状を抑制すると考えられている。
▽ケイセントラ静注用500、同1000(乾燥濃縮人プロトロンビン複合体、CSLベーリング):「ビタミンK拮抗薬投与中の患者における、急性重篤出血時又は重大な出血が予想される緊急を要する手術・処置の施行時の出血傾向の抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。
血栓塞栓症の治療や予防に用いるワーファリン(一般名:ワルファリンカリウム)に代表されるビタミンK拮抗薬の服用患者では、出血時や出血が予測される際の止血管理が重要となる。一般的には休薬やビタミンKの投与で対処するが、出血傾向の是正までに数時間以上かかる。このため、重篤出血時や緊急手術時など抗凝固状態を早急に是正する必要がある場合の十分な対処法がなかった。日本脳卒中学会が早期開発の要望を厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会」に提出し、開発の必要性が認められ、同省の開発要請を受けてCSLベーリングが開発した。
同剤は、▽ABO血液型に従う必要がない▽投与終了までに要する時間が短い(融解不要、投与容量が少ない)▽製造工程に病原体の不活化/除去工程を含むのが特徴。海外では米国を含む42カ国で承認済(2016年12月現在)。
オプジーボに「頭頸部がん」の適応追加
【報告品目】(カッコ内は一般名と申請企業名)
報告品目は、PMDAの審査段階で承認が了承され、部会での審議が必要ないと判断されたもの。
▽レベトールカプセル200mg(リバビリン、MSD)
▽コぺガス錠200mg(リバビリン、中外製薬)
:「セログループ1(ジェノタイプ1)またはセログループ2(ジェノタイプ2)のいずれにも該当しないC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」を効能・効果に追加する新効能医薬品。再審査期間はソバルディ錠400mgの残余(2023年3月25日まで)
同適応を追加するソバルディ錠と併用するリバビリン製剤。ソバルディと同様に迅速審査された。
▽アニュイティ100μgエリプタ14吸入用、同100μgエリプタ30吸入用、同200μgエリプタ14吸入用、同200μgエリプタ30吸入用(フルチカゾンフラカルボン酸エステル、グラクソ・スミスクライン):「気管支喘息」を効能・効果とする新用量・その他の医薬品。再審査期間はレルベア100エリプタ14吸入用の残余(2021年9月19日まで)
吸入ステロイド剤のみを含有した1日1回吸入する製剤。海外では米国で2014年8月に気管支喘息の治療薬で承認されて以降、9カ国で承認済(2017年1月現在)
▽オプジーボ点滴静注20mg、同100mg(ニボルマブ(遺伝子組換え)、小野薬品):「再発又は遠隔転移を有する頭頸部がん」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は残余(2021年10月16日まで)
優先審査された。海外では頭頸部がんについては米国のみで承認済。欧州では審査中。(2016年12月時点)
▽タミフルドライシロップ3%(オセルタミビルリン酸塩、中外製薬):「A型またはB型インフルエンザウイルス感染症及びその予防」を効能・効果とし、新生児、乳児への適用を追加する新効能・新用量医薬品。海外では、欧米、オーストラリアで1歳未満の適応が承認済。
▽ベリナートP静注用500(乾燥濃縮人C1-インアクチベーター、CSLベーリング):「侵襲を伴う処置による遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制」を効能・効果に追加する新効能・新用量医薬品。
海外では英独仏で2013年に侵襲を伴う処置による遺伝性血管性浮腫の急性発作に対する短期予防の効能・効果で承認済。
タミフルとベリナートPは、厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で、追加する適応について公知申請が妥当とされ、第二部会での事前評価が済んだ時点で保険適用となっている。
新型インフルエンザ治療薬アビガン錠 製造可能に 緊急時に備え
3日の第二部会は、2014年3月に承認された新型インフルエンザ治療薬アビガン錠(一般名:ファビピラビル、富山化学)について、厚生労働大臣からの要請がない限り製造・販売は行えないとする指導内容を、パンデミックなど緊急時に備えて製造できるように見直すとの報告を受けた。
同剤は承認時に「通常のインフルエンザウイルス感染症を対象に、有効性の検証及び安全性の確認を目的とした臨床試験を実施し、終了後速やかに試験成績及び解析結果を提出すること」などの条件が付されていた。その間、対策に同剤が必要であるなど厚生労働大臣の要請がない限り製造等はできないとする指導を厚労省はしていたが、今回、試験成績などが提出されたことから承認条件と、それに伴う指導内容を見直すことになった。販売・流通は大臣の要請がない限り認めない。
この新たな方針について厚労省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長は3日、都道府県に対し通知した。