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肥満症治療薬・ゼップバウンド 保険財政インパクト「小さくない」 自由診療含むGL逸脱をモニタリングで

公開日時 2025/03/13 04:53
中医協総会は3月12日、医薬品の新規薬価収載をめぐる議論の中で、肥満症治療薬・ゼップバウンド皮下注の適正使用を求める意見が診療・支払各側からあがった。同剤のピーク時の市場規模予測が319億円(13万人)で、先行するウゴービ(市場規模予測328億円)とあわせると「保険財政へのインパクトは小さくない」と指摘する。加えて自由診療での使用への警戒感も各側から示され、最適使用推進ガイドライン(GL)の逸脱がないよう「しっかりモニタリングすべき」と厚労省に要請した。これに対し厚労省の清原宏眞薬剤管理官は、「GLを満たさない施設での使用を把握した場合は速やかに施設に連絡して、適正使用の徹底をお願いすると(当該企業から)伺っている」と応じ、上市後の取り組み等を注視する姿勢を強調した。

◎「最適使用推進GL」で使用できる施設、医師、対象となる患者の要件を規定

持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド」(製造販売元・日本イーライリリー、販売元・田辺三菱製薬)は、複合的な要因からなる「肥満症」を適応症として2024年12月27日に国内製造販売承認を取得した。選択的に長時間作用するため週1回皮下注射での投与が可能。なお、2型糖尿病治療薬マンジャロと同じ成分だ。この日の中医協総会では、ゼップバウンドの薬価収載にあたり、「最適使用推進ガイドライン」で、使用できる施設、医師、対象となる患者の要件も開示された。さらに、投与に際しての留意事項では、「本剤は肥満症治療薬であり、効能又は効果以外の美容・痩身・ダイエットなどの 目的では使用しないこと」との文言も明記している。

◎支払側・松本委員「少なくとも日本において300億円を超える肥満薬市場が形成される」

議論では支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)が、「ゼップバウンドのピーク時の市場規模予測が13万人で319億円となっている。(先行するウゴービと)競合することが予想され、単純な足し算にならないと思うが、少なくとも日本において300億円を超える肥満薬市場が形成されると受け止めている」と指摘。保険財政への影響に触れながら、「処方を厳格に管理することは当然だが、安全性の観点から自由診療を含めてGLを逸脱して使用することがないよう、厚労省はゼップバウンドの使用形態をしっかりモニタリングしていただきたい」と要請した。

◎診療側・長島委員「自由診療など踏まえ正しい利用法のリテラシーを上げて頂きたい」

一方、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「やはり自由診療などを踏まえて国民に対しても正しい医薬品の利用法のリテラシーを上げていただくということも極めて重要かと思う」と述べ、厚労省と当該企業に対してエビデンスに基づく適正使用への取り組みを求めた。

◎清原薬剤管理官 GLを満たさない使用を把握したら「速やかに施設に連絡」

これに対し厚労省保険局医療課の清原薬剤管理官は、「医療機関への情報提供においては最適使用推進GLの対象品目であることを周知徹底する」と指摘。「GLの要件を満たさない施設、医師に対しては、満たす医師への患者を紹介するよう依頼。あるいは満たさない施設での使用を把握した場合は速やかに施設に連絡をして、適正使用の徹底をお願いするというふうに(企業側から)伺っている」と説明。さらに、「関係学会の協力も得て、各学会における教育研修施設の具体的な名称を通知し、肥満症治療薬の適正使用の徹底を行ったところ」と述べ、「引き続き肥満症に対する適切な対応について取り組んでまいりたい」と強調した。

◎診療側・森委員 高額医薬品の販売包装単位等の問題 “減算”も含めた薬価上の評価で議論を

このほか中医協総会では、高額医薬品の包装形態について議論があった。この日の薬価収載をめぐり審議されたウプトラビ錠小児用0.05mgについて、診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)が、「既存のウプトラビ錠0.2mg錠は30錠包装で販売されているが、今回のウプトラビ錠小児用0.05mgは1瓶500錠ボトルしか販売されていない」と指摘した。森委員は、「仮に治療開始直後に副作用などのため中止となると、そもそも対象患者数が少ないことから、残りの472錠はそのまま廃棄となる恐れがある」と述べ、「小児用の薬価は1錠443.5円のため、約21万円にもなり、これが医療機関や薬局の損失になる」と強調した。

これに対して清原薬剤管理官は、「製造販売業者に聞いたところ、今後包装について検討いただけると回答を得ている」と返答したが、森委員は、「高額な薬剤が出てきた中で薬局での不動在庫が大きな問題になっている」と述べ、「高額医薬品の販売包装単位等の問題への対応については、次期診療報酬改定の議論の中で、製薬企業の対応を促す観点から“減算”も含めた薬価上の評価など考えられる必要な措置を取り上げていただくようお願いしたい」と要請した。

(訂正)下線部の商品名の表記に誤りがありました。修正します。(2025年3月13日12時50分 修正済)



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