肥満症治療薬ゼップバウンド エビデンスに基づく適正使用情報の提供に注力 不適切広告「注意喚起」も
公開日時 2025/01/21 04:52
日本イーライリリーと田辺三菱製薬は1月20日、昨年末に国内製造販売承認を取得し、近く上市予定の肥満症治療薬「ゼップバウンド」でメディアラウンドテーブルを開き、発売後はエビデンスに基づく適正使用情報の提供に注力する方針を説明した。過去には一部クリニック等で、2型糖尿病治療薬のGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬を美容・痩身・ダイエット等を目的とした適応外使用の自由診療を宣伝する医療広告が散見され、関係学会や厚労省から指摘された経緯がある。日本イーライリリー・研究開発メディカルアフェアーズ統括本部の吉野美保子・糖尿病領域エグゼクティブディレクター・メディカルは、「ゼップバウンドには最適使用推進ガイドラインがついてくる。私達の中でエビデンスを蓄積し、正しく使って頂くのが我々の責務と理解している。そういった活動をしっかり行っていきたい」と強調した。
2024年12月27日に国内製造販売承認を取得した肥満症治療薬ゼップバウンド(一般名・チルゼパチド)は、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の二つの受容体に作用する持続性GIP/GLP-1受容体作動薬。選択的に長時間作用するため週1回皮下注射での投与が可能。なお、2型糖尿病治療薬マンジャロと同じ成分だ。ゼップバウンドの効能効果は「肥満症」で、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、①BMIが27 kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する、②BMIが35 kg/m2以上-に該当する場合に限る。
◎ゼップバウンドの対象患者数「まだ検討中」
日本国内における肥満人口(BMI 25以上)は約2800万人と推計される。吉野氏は、「アカデミアが行った臨床研究結果によると、通院患者の約9割がBMI 25以上で、合併症を持っている」と指摘。ゼップバウンドの対象患者数については、「まだ検討中」と慎重姿勢を示しながらも、「私達が思っている以上に肥満症の方々が多いのでは」との印象を語った。
◎過去には日本糖尿病学会や厚労省が適応外使用や不適切広告で警鐘も
一方で、肥満症治療をめぐっては、日本糖尿病学会が2023年11月に、「一部のクリニック等において2型糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬を、適応外使用である美容・痩身・ダイエット等を目的として自由診療での処方を宣伝する医療広告が散見される」と警鐘を鳴らした。厚労省も同年11月に、「一部の医療機関において2型糖尿病患者以外(主に美容・痩身目的)の治療に使用されている実態があると承知している」と指摘し、医薬品卸に対し、「薬事承認を得た範囲での治療を目的としたものであるかどうかを確認し、薬事承認範囲外の治療目的による使用であることが明らかな場合には納入をしない」との通達を出している。
ただ、現時点でもGLP-1ダイエットのネット広告が散見され、今回のゼップバウンドと同一成分のマンジャロが「GIP/GLP-1ダイエット」として一部医療機関のホームページに費用(自費診療)込みで掲載される状況にある。
こうした状況に吉野氏は、「ゼップバウンドは先行するウゴービと同じように最適使用推進ガイドラインがついてくる。これにより不適切使用が急激に増加するというようなことは考えていない」と強調。一方で、「エビデンスのある使い方がなされなければ予想しない副次的な有害事象が生じるリスクは非常に高い。これは日本イーライリリー、田辺三菱製薬とも非常に危惧をしているところ」と述べ、「(医療関係者に対し)正しく使っていただくための情報提供というものの整理を行っていくというスタンスで取り組む」と強調した。
◎「注意喚起を行っていくというスタンスにおいては変わりない」
不適切な広告表示を行っている医療機関に対しては、「どこに対してというのではないが、私達は注意喚起を行っていくというスタンスにおいては変わりない。それを正しく伝えていくということが私達の責務であると考えている」と語り、「効能効果に示された肥満症患者がエビデンスに基づく治療を適切に受けられるよう、適正使用情報の提供に努める」とした。