武田薬品ジャパンファーマビジネスユニット（JPBU）の宮柱明日香プレジデントは４月22日、メディアとのグループ取材に応じ、４月の新組織体制のスタートに際し、「ＭＲの役割を再定義した」と明かした。具体的には、「ＭＲの専門性の維持向上はもちろん、顧客体験の向上を目指すため、“顧客”と“製品”という２つの切り口の顧客対応業務のスペシャリストを配置した」と説明。カスタマースペシャリスト（CS）については、「タケダの顔として訪問施設に対し顧客ニーズに基づいた価値を提供する」と役割を説明した。また、同社が導入した「ＭＲ向けダッシュボード」（MIKATA）について、ＭＲの面談前準備が38％軽減したと述べ、「これによりＭＲが本来やるべき業務に集中する環境を整えることができた」と成果を分析した。

同社は4月から新組織体制に移行した。具体的には、地域密着活動を通じて、ワクチンや既存製品の適正使用を推進する「第1事業部」と、新製品および希少性の高い製品（消化器・炎症性、精神神経、希少疾患、血漿分画製剤）の適正使用を推進する「第2事業部」に再編するというもの。各事業部には、訪問先の主担当者の位置づけの「カスタマースペシャリスト」（CS）を配置。一方で、遺伝性疾患や血液疾患の製品を担当する「プロダクトスペシャリスト」（PS）を第2事業部に置いた。

◎「顧客に向かうＭＲの役割が何であるか深くディスカッションさせていただいた」

宮柱プレジデントは、「今回の組織再編において我々は自身の役割を再定義した。特に大事にしているカスタマーエクスペリエンス（顧客体験）の観点でいうと、顧客に向かうＭＲの役割が何であるかっていうところを非常に深くディスカッションさせていただいた」と振り返った。その上で新組織については、「専門性の維持向上はもちろん、顧客体験の向上を目指すため、“顧客”そして“製品”のスペシャリストといった切り口でのカスタマーフェイシングロール（顧客対応業務）を設置した」と明かした。さらに、製品や疾患の専門性の観点からは、「カスタマースペシャリストが顧客に向き合いながら収集した情報のさらに上で専門的な情報が必要な場合にはプロダクトスペシャリストが入ってくるという建付け」と説明した。

◎ＡＩ・デジタルの顧客体験、従業員体験　医療者向けサイトの評価「ジャンプアップ」

一方で、ＡＩやデジタルの顧客体験や従業員体験を向上させる取り組みにも言及。同社の医療関係者向け情報サイトについては、「一つのアカウントで（医師がサイトに）アクセスできるほか、ニーズに応じて個別化された情報を医師が収集できるようにした」と述べ、外部調査会社（MCI・マルチメディア白書24年秋）が行ったオウンドサイト「お役立ち度ランキング」で6位を獲得するなど、宮柱プレジデントも、「以前に比べて非常にジャンプアップした。医師からの評価も徐々に高まっている」と評価した。

◎ＡＩが最適な活動をレコメンド「Next Best Action」もMRの8割が「役立った」

また、MRが自身の活動に必要な情報を収集する「MR向けダッシュボード」（MIKATA）についても、「MRにアンケートをとると、面談前準備などに要する時間が4割ほど効率化できたとの声もあがっている」と説明。さらに、ＡＩが最適な活動をレコメンドとして推奨する「Next Best Action」についても、MRのアンケート結果から「とても役に立っている」、「どちらかというと役に立っている」とポジティブ回答が全体の79％を占めたと報告した。

宮柱プレジデントは、「まずはレコメンドに対しやってみるっていうのが重要になる」と述べ、「それに対して良かったか悪かったかをしっかりとフィードバックして、コミュニケーションを取りながら我々としての機能強化をしていく必要がある」との認識を示し、ＡＩやデジタルのさらなる活用について実践的に社員同士で取り組むことが求められると述べた。

◎ポートフォリオ拡充　希少疾患薬４製品、承認・上市予定2品目と既存製品で最大化

このほかポートフォリオの拡充について宮柱プレジデントは、24年度は希少疾患領域で、アジンマ、セプーロチン、オビザー、リブテンシティの4製品を上市したと報告。25年度は、消化器・炎症疾患のリブマーリ、血漿分画製剤のハイキュービアなどへの承認・上市を予定していると指摘。「25年度は希少疾患薬4製品と、25年度の上期に承認・上市予定の2品目、さらには既存製品の最大化を図り、成長回帰を見込める状況にしたい」と期待感を込めた。