財政審 26年度診療報酬改定は診療所に照準「メリハリ」を 機能強化加算の廃止、処方箋料の見直しを
公開日時 2025/04/24 07:00
財務省は4月23日の財政制度等審議会財政制度分科会に、2026年度診療報酬改定について、「病院と診療所では経営状況や費用構造等が異なることを踏まえたメリハリある改定の実施」することを提案した。かかりつけ医機能を評価する点数として代表的な機能強化加算について「廃止を含め抜本的な見直し」を求めたほか、地域包括診療料・加算や外来管理加算などの「抜本的な見直し」の必要性を指摘した。処方箋料(院外処方)についても、医薬分業が進展するなかで、「処方料(院内処方)の水準との関係で、適正な水準を検討すべき」と主張した。出席委員からは、「1%の報酬改定で、5000億円の医療費抑制となる。国民一人ひとりにどのような影響があるのか、わかりやすい形で示していくべき。次回改定では、診療所と病院のメリハリある対応を期待する」との声もあがった。
財務省は医療費の伸び(薬剤費等を除く)が高齢化等の人口要因に加え、診療報酬改定(政策的な価格変更)により概ね上昇を続けてきたと指摘。「こうした医療費の増嵩は、現役世代の社会保険料負担を含む国民負担の増加に直結するものであり、国民皆保険を堅持するためにも、病院と診療所では経営状況や費用構造等に差異があることにも配意しつつ、全体として診療報酬の適正化を図ることが必要」と指摘した。
厚労省が全国の医療法人の事業報告書等を集計したデータに基づき、23年度の医療機関の経営状況を提示。1法人当たりの本来業務に要した費用については、診療所・病院ともに微増であったものの、「無床診療所のみを経営する医療法人の利益率は8.6%であり、中小企業の全産業平均である3.6%よりも高い水準」と指摘した。
そのうえで、26年度診療報酬改定について、「24年度の医療機関の経営状況について、年末に判明する医療経済実態調査等のデータを精緻に分析した上で、国民負担の軽減と必要な医療保障のバランスを図りながら、メリハリある対応を検討する必要」があるとした。「本来は、掘り下げた議論を行うためにも、医療施設の経営状況をリアルタイムで、職種別給与などを含む完全な形で見える化することが重要」として、医療機関の経営情報のさらなる「見える化」の必要性を強調。「改正医療法の施行状況を踏まえて、医療機関の経営情報データベースにおいて、職種別の給与・人数の提出を義務化すべき」とも主張した。
◎地域包括診療料・加算、外来管理加算、機能強化加算の見直しを求める
診療報酬の点数についても、「地域での全人的なケアの実現に資する報酬体系の見直し」の必要性を指摘した。14年度の地域包括診療料・加算を皮切りに診療報酬上でのかかりつけ医機能の強化がなされてきたが、「関係する評価項目が相次いで新設され、また、算定回数の少なさを理由に算定要件の緩和が続いた」と指摘し、見直しを求めた。
特に、機能強化加算については、施設基準を満たせば「患者実態によらず、また、当該医療機関をかかりつけ医としない患者に対しても、一律に算定」できることを問題視。「初診時におけるかかりつけ医機能の発揮を的確に評価する形となっているかどうかを改めて検証した上で、その廃止を含め抜本的な見直しを図るべきではないか」と主張した。
このほか、地域包括診療料・加算/認知症地域包括診療料・加算について、的確なインセンティブ機能を発揮しているか検証し、「例えば、両者を統合した上で、個々の医療機関の担うかかりつけ医機能をよりきめ細かに評価できる報酬体系に再構築すべき」と主張した。
再診料に加算される代表的・基本的な加算である外来管理加算にも踏み込んだ。かかりつけ医機能を評価する点数が増えるなかで評価対象が極めて不明瞭だとして、抜本的な見直しの必要性を指摘。「例えば、再診料に包括化する等した上で、その果たしてきた役割・機能については、他のかかりつけ医機能を評価する管理料・加算との間で整理・統合すべきではないか」とした。
24年度診療報酬改定では、生活習慣病の適正化の観点から、月1回算定できる点数として新設された「生活習慣病管理料(Ⅱ)」についても、カナダの例などを引き合いに「例えば、血圧がコントロールされている場合の生活習慣病管理料の算定について、1か月に1回よりも長くする等の対応を検討すべき」と指摘した。
◎診療所の地域間偏在解決へ 特定過剰サービスに「診療報酬上の減算措置」検討を
医師の偏在是正のうち、特に、診療所の地域間偏在を解決するために「26年度診療報酬改定において、真に実効性のある診療報酬上の仕組みを創設することが不可欠。あらゆる方策を検討すべき」と主張した。
具体的には、特定地域の特定診療科について、アウトカム指標を設定の上、第三者等によりアウトカムを評価・公表。アウトカム指標を満たさない場合は、「特定過剰サービス」に該当すると判断され、かつ、アウトカムが良好と言えないとして、「当該医療機関における診療報酬1点単価の引下げや、診療報酬上の減算を行う」ことなどをイメージとして示した。アウトカム指標については、「かかりつけ医機能やNDBデータをアウトカム指標の設定・評価に活用することも考えられる」などとした。また、「また、特定過剰サービス」単位ごとに見た医療費について、例えば対前年度から大幅に延伸するなど、一定の「基準額」を超過した場合には、アウトカム指標を満たさない医療機関を中心に、超過額の保険償還分を精算するといった仕組みを併せて導入することも検討の余地がある」と主張した。このほか、地域別診療報酬の導入も一つの案として示した。
◎処方箋料(院外処方) 処方料(院内処方)の水準との関係で「適正な水準検討を」
処方箋料(院外処方)の見直しにも踏み込んだ。医薬分業を政策的に後押しする観点から手厚い報酬体系が敷かれてきた現行制度について、「その政策的意義を含め、再考の余地があるのではないか」と問題提起。薬価差は縮減傾向が続いており、医療機関が薬価差益を追求してしまうインセンティブ構造も改善していることなども示し、「医薬分業の進捗状況を踏まえ、処方料(院内処方)の水準との関係で、処方箋料(院外処方)の適正な水準を検討すべき」と主張した。
◎高齢化による伸びに抑える方針を堅持 コスト抑制「政策的に対応できる余地ある」
医療関係団体などが政治を巻き込み、財政フレームの見直しを求める中で、財政フレームについても、「高齢化による伸びに抑える」方針を堅持し、「この考え方に沿ったメリハリのある予算編成を実施していくことが重要」と言及した。特にコストに関する取り組みについては、費用対効果評価の適用範囲の拡大、地域フォーミュラリの普及を通じた標準的な治療の促進を列挙し、「政策的に対応できる余地がある」と指摘した。
財務省はデフレ下でも医療費は伸びを堅持してきたことを指摘。2000年を起点にした場合、雇用者報酬と名目GDP実額は横ばいである一方、医療・介護給付費は高い伸びを示しているとして、「医療・介護の保険料率の上昇傾向に歯止めをかけるには、医療・介護給付費の伸びを雇用者報酬の伸びと同水準にする必要」があるとした。
医療機関経営の観点から、人件費や委託費、水道光熱費などは増加しているとしたうえで、「コストの増分を給付に自動的に反映(スライド)させると、保険料負担など給付を支える負担も増加し、現役世代を中心とする家計や企業の活力を奪いかねない」と指摘。薬剤費などを例にコストを抑制する必要性を強調した。一時的なコスト増については補正予算で補う一方、恒常的なコスト増については公的保険のなかで手当てすることが必要との考えを示した。