JEMA・松森代表 ドラッグ・リポジショニング想定で「改良医薬品」の区分新設を提言 創薬の裾野広がる
公開日時 2025/02/19 04:52
日本エスタブリッシュ医薬品研究協議会(JEMA)の松森浩士代表は2月18日、医薬品の新たな申請区分として「改良医薬品」を設置すべきとの提言を発表した。主にドラッグ・リポジショニングを想定したもの。米国では、新薬(505 (b) (1))とジェネリック薬(505 (j))の申請区分の間に、剤型変更、投与経路変更、新効能獲得などに伴う新薬申請区分「505 (b)(2)」がある。松森代表は、申請区分の新設で、企業側の申請データが簡素化され、開発コストや期間が削減できると指摘。「中小規模のメーカーやスタートアップも創意工夫により創薬のすそ野が広がり、ドラッグ・ロスの解消にもつながる」と期待感を示した。一方で、薬価制度については外資系新興企業などの参入障壁となり得ると危惧し、薬価制度の見直しが必要と強調した。
◎米国の申請区分「505 (b)(2)」 低開発コスト、簡略的な承認審査など参入障壁が低い
米国ではFDAへの薬事申請に際し、新薬(NDA)、ジェネリック薬(ANDA)のほかに、新投与経路、新効能、新剤形、剤形追加等などの改良医薬品を評価する申請区分「505 (b)(2)」が存在する。この区分は、申請に際し、先発品と重複するデータの多くが省略、簡略化されるため、企業にとっては、「低開発コスト、簡略的な承認審査」など、参入障壁が低減されるなどのメリットがある。米国では近年、「505 (b)(2)」の申請件数と承認件数がともに増加傾向にあり、特にスタートアップの利用も多いという。
一方で、日本の現状は、ドラッグ・リポジショニングに取り組んでも、「開発コスト、薬価面でビジネスが成り立たず開発を断念するケースも散見される」と指摘する。武田テバの事例として、一時供給不安に陥ったアブラキサンの日本での開発を検討したものの、ヒト生物学的同等性試験を患者で実施しなければならないなど、開発コストの問題を含む複数の理由で開発を断念した経緯がある。また薬価面でも、製造原価を上回る薬価が望めなく、不採算となることが想定されたとしている。
松森代表は、ドラッグ・ラグ/ロスが指摘される中で、欧米系のスタートアップや中小クラスの企業の参入障壁を下げることで、日本の改良医薬品の新たなビジネスモデルを創出し、さらに海外への導出を促進することで日本の製薬産業の競争力強化に貢献できるとした。
◎非臨床試験データには基本的に不要、新規効能・効果を支える有効性データは最低限揃える
提言では、既存の承認申請区分(新投与経路、新効能、新剤型、新用量等)に加えて、既存医薬品を改良する付加価値付与の「改良医薬品」という新たな申請区分の追加設置を提案。申請企業に対して、非臨床試験データには基本的に不要とし、新規効能・効果を支える有効性データについては最低限揃えるとした。また、臨床試験についてはデータ参照制度を用いることにより新たに獲得する効能・効果、投与経路、剤形等の有効性を支えるためのブリッジングデータは必須とし、データセットの見直しを行うことで対応できないかとしている。
◎薬価制度 類似薬が存在しない場合は原価計算方式、一般管理販売費係数の上限は設けず
一方で薬価上の取り扱いにも言及。希少疾病用医薬品指定を受けた低分子ドラッグ・リポジショニング新薬の場合は、DR新薬の減額算定ルールを適応せず、①効能効果に類似薬が存在する場合は、そのまま類似薬効比較方式を適応、②効能効果に類似薬が存在しない場合は原価計算方式を適応するが、一般管理販売費係数の上限を設けない―との見直し案も提案している。
このほか、米国では「505(b)(2)」の区分で承認された改良医薬品に3~7年の独占期間が設定されていることを踏まえ、「日本でも一定期間、独占権を設定してはどうか」との見解も示した。