サノフィ・岩屋社長 全社でAI推進 MR活動に独自開発のAIエンジン導入 顧客エンゲージメント向上
公開日時 2025/04/25 04:52

サノフィの岩屋孝彦代表取締役社長は4月24日の「2025年事業戦略説明会」で、バリューチェーン全体でAI活用を大規模に推進する方針を示した。「創薬だけでなく、開発、生産、販売までの一連のプロセス全体でend-to-endでAI活用を推進する」と岩屋社長は強調する。MR活動には、「Turing(チューリング)」と呼ばれる独自開発したAI活用のオムニチャネルエンジンを導入し、「顧客の求める情報をタイムリーかつ顧客が望む手段で提供する」体制を構築したと明かした。同社執行役員でジェネラルメディスンビジネスユニットのサビーナ・スタインケルナー・ジェネラルマネージャーは、「AIエンジンは当初からMRとコラボして開発した。顧客とのエンゲージメントは、非常にポジティブなインパクトを見せている」と評価した。
岩屋社長はこの日の事業戦略説明会で、全社的なAI活用に注力していることをアピールした。同社は、「AIを大規模に活用する初のバイオ医薬品企業に」をスローガンに、すべてのバリューチェーンと全従業員を対象にAI活用を推進している。AI活用の戦略目標としては、①創薬から上市までの期間を半分に短縮、②AIファーストのバイオ医薬品企業に、③リソースの50%をイノベーションに配分しサノフィの成長に貢献-の3点を掲げる。さらに目標達成に向けて、「エキスパートAI」、「スナッカブルAI」、「生成AI」の3つのAIをサプライチェーンの特性に応じて組み合わせながら利活用するユースケースを想定している。
◎MRとのコラボでAI開発「彼らの理解とフィードバックをもらい、パートナーとして開発した」

代表的AIとして、MRを含むコマーシャルチームが使用する「Turing(チューリング)」と呼ばれるAI活用のオムニチャネルエンジンが紹介された。医療者が求める情報を、MRがAIのレコメンドを通じ、タイムリーかつ最適な手段で顧客に提供できるというもの。AI開発の経緯を説明した同社執行役員のサビーナ・スタインケルナー・ジェネラルマネージャーは、「当初からMRとコラボして、彼らの理解とフィードバックをもらい、パートナーとしてこのツールを開発した」と説明。実装に際しては、70人のデジタルアンバサダーがMRと社内チームをサポートし、その結果、社内外ともにエンゲージメントの向上に寄与できたとの認識を披露した。
◎岩屋社長 MR活動は“勘”から“ファクトベース”に 次の一手の角度は間違いなく向上
岩屋社長も、「これまでのMR活動は、ある程度の“勘(カン)”でやっていた部分もあったと思う。そこにAIを活用することで、データベース、ファクトベースのレコメンドがMRに示される。その結果、データに基づく次の一手の角度が間違いなく向上している。結果として顧客とのよりよいコミュニケーションがとれている」と述べ、AI導入の成果を語った。
◎24年業績 前年比11.8%増の2300億円を確保 デュピクセントが6つの適応取得で業績伸長
事業戦略説明会で岩屋社長は、2024年売上高について前年比11.8%増の2300億円を確保したと報告した。特に、デュピクセントが国内で6つの適応症を取得して業績伸長に大きく貢献したほか、23年末に上市したオルツビーオ(血友病A治療)、24年に上市したベイフォータス(RSウイルス感染症下気道疾患の発症抑制・予防)が順調に成長したことで2桁成長を確保した。
その上で25年のトピックスについて岩屋社長は、CD38モノクローナル抗体サークリサとデュピクセントについては、それぞれ適応追加の承認を取得したと説明。一方、腸チフスワクチン・タイフィムブイアイは6月に発売予定、高用量インフルエンザHAワクチン・エフルエルダも3価ワクチンとして年内に発売予定になっていると述べ、これら製品の成長を通じ、「2030年までに日本国内売上Top3を目指したい」と意気込んだ。
◎デュピクセント リジェネロン社とのコ・プロ「製品価値をより多くの顧客や患者に頂けられる」
質疑の中で岩屋社長は、デュピクセントのコ・プロモーションを行っているリジェネロン社が自社販売体制を強化していることについて、「やはりリジェネロン社が日本に本格的に参入してきたということで、我々は完全に50:50という形でのプロモーションをしている」と指摘。「製品価値をより多くの顧客(医療者)や患者に知って頂けることになっていると思う」と受け止めながら、「コラボレーションが上手くいっていると認識している」と強調した。