ダイト・松森次期社長 新中計DTP2027発表 経営環境捉えた事業開発に意欲 テバ撤退は「日本の恥」
公開日時 2024/07/18 04:51
ダイトの松森浩士代表取締役副社⾧は7月17日の記者会見で、新中期経営計画「DTP2027」を発表した。松森副社長は8月29日付で代表取締役社長への昇格が決まっており、新中計の舵取り役を担う。このため新中計の事業戦略では、「原薬から製剤の一気通貫生産」の強みを活かしながら、既存ビジネスの効率化や中国ビジネスの強化に加えて、オーファンドラッグCDMOビジネスへの参入など、業界経験豊富な松森次期社長のカラーを全面に打ち出す事業開発の方向性を盛り込んだ。この結果、新中計最終年となる27年5月期の重要目標達成指標(KGI)は、売上高570億円(24年5月期469億円)、収益性指標のEBITDAは110億円(同76億円)、原薬から製剤の一気通貫比率は60%(同44.7%)などの目標を掲げた。
◎社長直轄で「ポートフォリオマネジメント部」新設 利益構造の見える化を実施
新中期経営計画「DTP2027」の事業戦略には、①既存ビジネスの効率化、②中国ビジネスの強化、③新規ビジネスへの参入、④PBR1倍割れ対策と資本配分の高度化、⑤人的資本への投資-の5本柱を据えた。このうち既存ビジネスについては、社長直轄で「ポートフォリオマネジメント部」を新設し、製品/成分軸や顧客軸、ビジネスモデル軸での利益構造の見える化を実施する。また、ブランド力の高い既存の大型品を中心にOTCビジネスを推進するとした。
中国ビジネスについては、千輝薬業および鼎旺医薬との資本業務提携を強化。ダイトの「原薬~製剤の一気通貫比率の上昇」の全社戦略にも合わせる形で、日本と中国の両市場での上市を見据え、よりWin-Winな共同開発スキームの構築を目指す計画を盛り込んだ。新規ビジネスへの参入については、今年6月にノーベルファーマと「パートナー関係構築に向けた協定」を締結。補完関係にある両社の強みを持ち寄り、オーファンドラッグビジネスを推進する方針だ。
◎ダイトを取り巻く環境認識 長期収載品の選定療養「かなり大きなインパクトがある」
「中期経営計画(DTP)の名称には“我々は変わらなければならない”という思いを込めてトランスフォーメーション(変革)という言葉に注目した」-と松森副社長は力を込める。その上でダイトを取り巻く環境認識にも触れ、毎年薬価改定や長期収載品の選定療養、安定供給体制に対する評価と少量多品種生産の是正のための方策検討、ニトロソアミン類対応を始めとする品質基準の更なる高まりなどに注視する姿勢を示した。なかでも長期収載品の選定療養は、「かなり大きなインパクトがあるだろう」と強調。ニトロソアミン類対応についても、測定機器の調達や外注費用の増加を含めてコストインパクトが大きいと見通した。
◎テバ社の日本撤退「相当真剣に考えないといけない」
松森副社長はまた、「私が知る限りテバ社が一つの国からジェネリックビジネスを撤退するのは初めてだと思う。これは日本としては恥だ」と強調。「様々なグローバルスタンダードを有するテバ社が、日本のビジネスに魅力がないと言って日本から逃げていくということを相当真剣に考えないといけない」と警鐘を鳴らした。その上で、ダイトの立ち位置に触れ、「(中堅としての)サイズ感のあったところでのシナジーがあるようなところでインオーガニックなアライアンスや合併、買収ということは、今後の政府の支援策なども含めると大いにあり得る」との見方を披露。そのための事業開発を進める必要性に言及。「少なくともジェネリックをボリューム的に支える企業として生き延びる企業に入っていきたい」と意欲を示した。
◎コンソーシアム構想「まだ腹に落ちるイメージは湧いていない。可能性を検討してみたい」
一方で、コンソーシアム構想について松森副社長は、「現時点で明確な立場は示せないが、まだ腹に落ちるイメージは湧いていない。ただ、否定している訳でない。可能性について検討してみたい」と述べた。ただ一方で、可能性を探るならば、「抗菌剤のように特定分野においては、コンソーシアムのような形でやる意味もあるかもしれない」との認識も示した。