ヤマトホールディングス（ＨＤ）とアルフレッサは２月６日、自動車運送事業者の従業員の健康管理と重症化予防に向けて、オンライン医療を中心としたサービスを提供する新会社「MY MEDICA（マイメディカ）」を設立したと発表した。新会社はヤマトＨＤの連結子会社で、出資比率は非開示。新会社は自動車運送事業者にターゲットを絞ったアプリ「MY MEDICA」の提供を７日から開始。機能のひとつのオンライン診療及び服薬指導は、最短10分かつアプリ内でシームレスに完結できる工夫を施した。新会社の伊藤匡代表取締役社長は、「MY MEDICAをブラッシュアップし、（ドライバーの）健康起因による死亡事故ゼロの実現に貢献する」と所信を述べた。

自動車運送事業者は他業種と比べて労働時間が長く、年齢層も50歳以上が約半数を占めるなど健康リスクが高い傾向にある。一方で、生活習慣病を指摘されたドライバーは、自覚症状がないうえ多忙なため未治療者も少なくない。ドライバーの健康起因の死亡事故リスクを軽減するためにも早期治療や治療継続のための工夫が必要になっている。

ヤマトＨＤとアルフレッサは2019年に医薬品流通研究会を立ち上げ、様々な社会課題の解決に挑戦してきた。そのような中で、生活者がライフスタイルにあわせて医療を受けやすい環境を構築することが未治療者や治療中断者の早期治療や重症化予防の打ち手になり得ると考え、オンライン医療サービスの開発に至った。

そして、自動車運送事業者にとことんフォーカスしたオンライン医療のほか、社員教育コンテンツや受診勧奨機能などを盛り込んだアプリを開発。ヤマトグループで約１年間トライアルしたところ、健康診断の再検査受診率98％、同アプリで治療を開始した人の治療継続率80％、累計受診数１万件以上、月間利用者数約1000人といった高い効果が確認できた。ヤマトグループに限らず自動車運送事業者が抱える大きな課題のひとつの”ドライバーの健康起因事故リスクの軽減”に向け、同アプリを広く自動車運送事業者に提供することが社会にとって有益と判断し、新会社を設立した。

◎オンライン診療と服薬指導をシームレスにアプリ上で提供　処方薬は指定場所にヤマトが配送

アプリ「MY MEDICA」は、▽社員教育コンテンツ、▽受診勧奨、▽医療機関検索、▽再検査受診（オンライン医療）、▽就業判定サポート、▽結果集計（再検査結果の報告ツール）、▽受診状況の見える化、▽治療継続支援――といった機能を持つ。

このうち最も特徴的な機能のオンライン医療では、従業員はアプリから診察予約し、予約時間にアプリを介して提携医療機関の医師による診察が受けられる。健康診断結果などを当該医師と共有することもできる。診察後はアプリ上でシームレスにヤマトグループのオンライン薬局「ターミナルファーマシー」につながる工夫を施し、最短10分で診察と服薬指導が受けられるようにした。ドライバーの勤務時間なども考慮し、オンライン医療は朝７時から夜21時まで土日も運営する。処方薬は患者の指定の場所に受診日の翌日以降、ヤマトが配送する。

このオンライン医療に係る費用は電子決済し、後日、アプリから知らせが届く。ヤマトグループの従業員の場合は、通常の保険診療の自己負担分のみ支払い、薬の配送料（550円）やサービス利用料（440円）といった手数料は福利厚生の一環として会社負担で運用している。

◎伊藤社長　25年度までに約200社への提供目指す

伊藤社長（写真）はアプリのトライアルを通じて、ヤマトグループ社員の受診や再検査の意識が高まったと強調した。そして、軽度な生活習慣病患者は初診からオンライン診療で治療を開始し、重度の患者はオンライン診療などを通じて近隣の医療機関で再検査を促すといった運用になっていると説明した。既に西濃東京エキスプレスや日本交通など複数企業でアプリの導入が決まっていると言い、「25年度までに約200社への提供を目指す」と述べた。

また、アプリに睡眠時無呼吸症候群対策メニューを追加したり、自動車運送事業者の運行管理系システムと連携するなど、アプリをブラッシュアップしていくことにも意欲をみせた。