塩野義製薬・手代木社長 「3期連続で過去最高売上高、営業利益を更新」 不眠症治療薬・上市に期待
公開日時 2024/10/29 04:51
塩野義製薬の手代木功代表取締役会長兼社長CEOは10月28日の2024年度第2四半期決算説明会で、24年度業績について「3期連続で過去最高の売上高、営業利益を更新する」との見通しを示した。24年度通期業績は、売上高(4550億円→4600億円)、営業利益(1600億円→1650億円)と通期予想を上方修正した。HIV事業と海外事業が堅調なほか、上市を控える不眠症治療薬・クービビック(一般名:ダリドレキサント)に「下期でかなりの売上を立て始めることができる」と期待感を表明した。
◎不眠症治療薬・クービビック「中枢神経系の柱に」 デジタル含めた質・量で攻勢
手代木社長が業績牽引に期待を寄せるのが新規デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)のクービビックだ。同剤は、日本における製造販売承認を取得したネクセラファーマジャパンとの販売提携契約締結により、塩野義製薬が独占的販売権を得ている。手代木社長は「プライオリティをかなり高め、中枢神経系の柱として育てたい」と力を込めた。クービビックのほか、うつ病や肥満症、睡眠時無呼吸症候群などの治療薬を念頭に「流行の影響を受けにくいQOL疾患を次の柱にしたい」と強調した。
不眠症治療薬市場については、「優秀な会社がそれなりのコール数をかけているマーケットであり、そこに資源を張り付けて、質・量を確保できるか。フェイストゥフェイスの営業活動のみならず、e-ディテーリングなど総合的に資源をどう確保するのかが腕の見せ所だ」と述べた。ピーク時の売上も競合品の売上が「第1のゴールになる」と表現。「3、4年かけてなんとかそこまで持っていけないかと計画している」とした。
一方、国内の営業体制では23年度に実施した特別早期退職プログラムによりMR数が減少している。手代木社長はクービビックなどの上市を見据え、「新しい領域で、パワーゲームが相当要るところ。人を増やすのか、アドバタイズメントを含めた販管費を増やすのか、CSOを使うのか、ITを十分に駆使していくのかを含めて検討している。投資として国内事業をどう強化をしていくのかが非常に重要なテーマになる」と付け加えた。
◎24年度上期 売上高・営業利益ともに「期首予想値は全て達成でそれなりの良い結果」
24年度上期の売上高は前年同期比7.2%減の2140億円、営業利益は22.7%減の759億円だった。いずれも前年同期比では減収減益だったが、23年度に計上した一時金とCOVID-19の流行による影響と説明。「期初の予想値は全て達成し、それなりの良い結果だった」と述べた。堅調な上期業績を受けて、通期予想を上方修正。売上高は50億円増の4600億円、営業利益も50億円増の1650億円とし、期首の過去最高予想からさらに上乗せした。その通期予想に向けた3本柱として、国内での感染症事業と海外事業、HIVのロイヤリティー収入を上げた。
◎国内売上高 前年同期比50.5%減も流行強調 「営業活動としてやるべき点は十分やった」
国内医療用医薬品売上高は前年同期比50.5%減の477億円だった。23年度に計上した一時金に加え、経口新型コロナ治療薬ゾコーバなど感染症治療薬の売上が減少したことが影響した。ただ、感染症治療薬の打ち上げについては、新型コロナ感染者数が前年に比べて減少したと説明。ゾコーバのマーケットシェア自体は7割に拡大させたとして、「営業活動としてやるべき点は十分できた」(手代木社長)と語った。
ゾコーバの薬価をめぐっては、中医協で費用対効果評価による薬価引下げが議論されている状況にある。手代木社長は、「全容が見えているわけではない」とした上で「まずやるべきことは処方率を上げて、経口剤におけるシェアを上げること。数を上げていくことの方がやるべきことなので、(薬価引き下げは)ほとんど影響はない」との見解を示した。
◎堅調な海外売上とロイヤリティー収入 HIVフランチャイズは「30年まで増え続ける」
海外子会社/輸出の売上高は23.5%増の283億円だった。中心となる多剤耐性グラム陰性菌感染症治療薬セフィデロコルは米国で38.2%、欧州で32.6%と伸長。中国でも承認申請が受理されたことも踏まえ「しばらく堅調なマーケットが続くだろう」と予測した。
HIVフランチャイズのロイヤリティー収入は27.1%増の1215億円。経口2剤レジメン及び長時間作用型(LA)製剤を中心に安定的な成長を継続したことが寄与した。また、今後の見通しとして2030年まで「クリフのない、むしろ増え続ける絵が描けそうだ」との展望を示した。
【連結業績 (前期比)24年度予想(前期比)】
売上高 2139億7000万円(7.2%減)4600億円(5.7%増)←修正前4550億円
営業利益 758億6900万円(22.7%減)1650億円(7.6%増)←修正前1600億円
税引前利益 938億3300万円(18.8%減)2060億円(3.9%増)←修正前2000億円
親会社所有者帰属純利益 831億3300万円(8.2%減)1710億円(5.5%増)←修正前1630億円
【国内主要製品売上高(前年同期実績)24年度予想、億円】
国内医療用医薬品 477(964)1247←修正前1349
感染症薬 292(490)834←修正前912
COVID-19関連製品+インフルエンザファミリー 249(444)723←修正前801
スインプロイク 24(21)59←修正前65
オキシコンチン類 21(22)50
アシテア 4(3)13←修正前14
サインバルタ 15(21)33
その他 122(406)258 ←修正前275
海外子会社/輸出 283(229)576←修正前537
Shionogi Inc.(米国)112(81)226←修正前206
Shionogi B.V.(欧州)83(61)167←修正前144
平安塩野義/C&O 42(52)91←修正前112
ロイヤリティー収入 1215(956)2428←修正前2325
HIVフランチャイズ 1196(945)2349←修正前2246
注1)感染症薬の構成製品:ゾコーバ、COVID-19ワクチン、ゾフルーザ、ラピアクタ、ブライトポックFlu・Neo、フィニバックス、フルマリン、フロモックス、シオマリン、バクタ、フラジール、イソジン、フェトロージャ。
注2)2023年度国内医療用医薬品の「その他」には、ADHD治療薬のライセンス移管に伴う一時金を含む。