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GE薬協 安定供給責任者会議設置で限定出荷解消の一助に 「何もしてこなかった」業界姿勢に批判集中

公開日時 2024/10/22 07:12
日本ジェネリック製薬協会は10月21日、厚労省の「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」に「安定供給責任者会議」の設置を報告した。供給不安の恐れの段階から情報を共有することで、過剰な限定出荷を防ぐほか、限定出荷の早期解除につながることが期待される。あわせて、現在起きている供給不安への対応として、厚労省が限定出荷解除の検討を定期的に促す取組みを進めていることも報告された。厚労省は、新たに業界団体の取組みを加えることで、厚労省は製薬企業や業界団体に主体的に供給不安にかかわってもらうことで自覚を促し、早期の供給不安解消を目指す考え。ただ、構成員からは、「日本ジェネリック製薬協会はこれまで何もやってこなかったということ」と指摘する声があがるなど、業界の姿勢に対する厳しい声が相次いだ。

◎供給不安の懸念発生時点で安定供給責任者会議に報告 未然に供給不安食い止める

安定供給責任者会議は、日本ジェネリック製薬協会に加盟する企業に供給不安の懸念が発生した時点で対応を行うのが特徴。企業は厚労省とともに安定供給責任者会議に連絡。年間販売数量、供給停止時期、供給停止期間を示し、代替生産対応を要請する。これを受けた安定供給責任者会議は、当該医薬品と同成分を製造販売している加盟企業に情報提供し、増産可否を当該企業へ連絡することを求める。増産に向けたやり取りは、供給不安の恐れのある企業が増産対応可能企業と直接行う仕組みだ。

これまでは供給不安を起こすまで調整は行われてこなかったが、早いタイミングでの行動が可能になり、過剰な限定出荷を防いだり、限定出荷の早期解除につながったりすることに期待が寄せられている。一方で、安定供給責任者会議が直接、増産対応可能企業と数量調整を行うことは独占禁止法上に問題があることから、供給不安の恐れのある企業が直接増産対応可能企業と行い、増産対応可能企業間での情報共有はしないこととされている。

◎宮川構成員「これだけ速度遅く、グレーのあるスキームには納得できない」

日本ジェネリック製薬協会の川俣知己会長が、安定供給責任差会議が間に入り増産対応可能企業との数量調整を行うことについて“グレー”と表現したことから、宮川政昭構成員(日本医師会常任理事)は、「グレーが白にならなかったら意味がない。意味のないことをここに持ってこられても困る」とバッサリ。川俣会長は、「公正取引委員会の方からOKというお話をいただいてないのでグレーと申し上げた」と説明。一方で、供給不安の恐れのある企業と増産対応企業との直接のやり取りについては、「情報のやり取りはしてもいい。“ホワイト”というふうに言っていただいたので、この取り組みになっている。ただより実効性を高めるためにはこのグレーをホワイトにする取り組みというのも、今後やっていきたい」と述べた。

個々の企業の取組みに帰結することから、宮川構成員は、「これまでJGAは何の手も打ってこなかったということになってしまう」と指摘した。川俣会長は、JGA加盟企業すべてがスキームに同意したと明言し、「今回新たに取り組み、一つの形にしたものであって、これで全て解決しますと申し上げていないし、一助になればと思っている。今までよりも一歩一歩改善に向けて取り組んでいるということをご理解いただきたい」と述べた。

宮川構成員は、「JGAがこれだけ速度遅く、このスキームを出してまだグレーがあるとかそれからそれだけで十分ではないとして、このスキームを出されたのでは、私達はなかなか納得できない」と強調した。

厚労省医政局医薬産業振興・医療情報企画課医薬品産業・ベンチャー等支援政策室の藤井大資室長は、「大変恐縮だが、我々もこの取組みだけで限定出荷の問題が完全に解決するとは思っていない。引き続き業界にも連携いただき、さらなる取組みを進めていく必要がある」と述べた。

◎坂巻構成員「最低限、JGA加盟企業からの合意が必要」

坂巻弘之構成員(医薬政策企画P-Cubed 代表理事)は、「最低限、JGA加盟企業からこのスキームでやるということについての合意がなされる必要がある。合意を取った上で次に公取が問題ないかという確認をするというプロセスが必要だ」と指摘した。増産をしても注文が増加し限定出荷を行っている企業もあるとして、「供給量とあまり関係なく、注文に応じられないということが起きてしまう。供給量のところばかりに目を向けてスキームを作っても実効性は本当にあるのか、というのが結構疑問に思っている」と述べた。

一條武構成員(日本医薬品卸売業連合会副会長)は、「これまでJGAは何もやってこなかったということ。これからもしっかりやっていただきたい」と述べた。

◎日薬連調査に「今後の出荷量の増減の見込み」、「当該見込み達成時期」の項目を追加

一方、厚労省は足下での供給不安解消に向けて対応を進める。「他社品の影響」又は「その他」を理由に限定出荷を行う品目について厚労省が呼びかけを行ったところ、限定出荷解除
となった品目が多くあった。厚労省はこのため、医療用医薬品全体を対象として、限定出荷解除の検討を定期的に促す取組みをさらに推し進める。

具体的には、日薬連が実施する医薬品の供給状況調査に、新たに「今後の出荷量の増減の見込み」、「見込み達成時期」の項目を追加。他社の出荷量状況や今後の見込みを事前に製造販売業者が把握することで、限定出荷の解除を事前に検討できるような体制を目指す。また出荷状況や出荷に変化があった品目だけわかるようなリストを作成することで、特定の製造販売業者に対して解除に向けた検討を促す。さらに定期的に説明会を開催する考え。また、「同成分規格内の他社と同時であれば限定出荷解除が可能な品目」については、厚労省から、製造販売業者に対し、解除時期を指定した上で限定出荷の一斉解除の検討を要請する。

◎限定出荷の解除が必要な品目 日薬連と厚労省がヒアリングも 國廣参考人「数量や取引の話に及ぶ」懸念示す

さらに、医療上の必要性が高いにもかかわらず、長期間にわたり限定出荷が続いているなど、限定出荷の解除が必要な品目については、さらなる対応を行う。具体的には、日薬連と厚生労働省が連携し、個社のヒアリングを行い、対応を個別で検討する。限定出荷を解除できない理由が自社の供給のみでは市場の需要を賄えないことであった場合は、日薬連と厚生労働省が連携し、同成分規格の他社に対し、市場の需要を賄うために必要な供給量を確保できないか照会し、供給可能企業が存在する場合には追加供給を依頼。日薬連と厚生労働省が連携し、追加供給見込み量とその達成時期を限定出荷を継続する企業に伝え、限定出荷の解除を要請する。

これらの取組みについて厚労省は、「競争政策上、問題ないことは確認済み」としている。厚労省医政局医薬産業振興・医療情報企画課医薬品産業・ベンチャー等支援政策室の藤井大資室長は、「例えば出荷量を制限するような形では独禁法上問題になるが、出荷量を上昇させる観点については認められると聞いている。企業にはよく説明したうえで、対応を求めていきたい」と話した。

実際、限定出荷の品目数は23年10月から24年2月までは上昇トレンドだったが、4月以降、下降トレンドとなっている。沢井製薬や東和薬品など、限定出荷の解除に踏み切る企業が出始めたことも影響しているとしている。

國廣吉臣参考人(日本製薬団体連合会 安定確保委員会供給不安解消タスクフォースリーダー)は限定出荷の解除が必要な品目について日薬連と厚生労働省が連携し、個社のヒアリングを行うとされたことに問題意識を表明。「個別のヒアリングを日薬連も行うことについては単なる増量ということにとどまればいいが、数量や取引の話に及ぶ可能性はゼロではない。日薬連の委員も、個別の企業に属している。連携はするが、ヒアリングはここで“その通りです”となかなか申し上げにくい」と述べた。厚労省の藤井室長は、「現実的にどうやっていくかは厚労省と日薬連でよく考えたうえで実施する」と応じた。
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